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急にCreが上昇! 全例で腎疾患の精査?

本記事のまとめ(本記事は下書き中ですが、公開しておきます)

 Cre上昇(いわゆるAKI)を認めた場合は、まずは可逆的なCre上昇の原因をすべて「指差し確認」し、「是正」してから考えましょう。

 ・全身循環が悪いなら、全身循環を改善すること
 ・糸球体内圧を低下させるような薬剤を一度中断すること
(ついでに、薬全般を見直しましょう)

 この2点に尽きると思います。
 これらを「まず指差し確認」する癖をつけましょう。

まとめ画像を貼り付けます(最後まで読んでから、また確認してみてください!わかりやすいと感じてもらえるはずです!)

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大前提 「Creの上昇 ≠ 腎障害」

 集合関係が違うわけです。

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 もちろん、現場で経験するCre上昇では「GFRの低下」が一番多い原因でしょう。しかし、GFRの低下の原因自体も

 「① 可逆的な原因(一過性)」と、
 「② 腎疾患そのものによる腎機能低下」

 の2通りあります。
 そして②を精査開始する前に、① を補正できないかをまず考えるのが「現実的」だと思います。
 例えば、「どう考えても脱水で入院になった患者さん」でCreやBUNが高くても、「多分補正したら下がるだろうな」と思って、わざわざANCAなどの検査を出さないと思います。極端な例ですが、やはり腎疾患の精査を開始するにも一定の「ハードル」があると思います。

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GFR低下とCreの上昇とには「時間的ギャップ」がある

 もう一つ注意しておかないといけないことは、Creの上昇は「ちょっと遅く現れる」ということです。GFRの低下があってもCreが上昇するのは約1日遅れる印象です。逆に、GFRが改善してもCreが減少するのは約1日程度ギャップがある印象です。
 リアルタイムに腎血流量を評価できるのは「単位時間あたりの尿量」だと思いますので尿量変化に敏感になりましょう。

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GFR低下の「① 可逆的な原因」の評価・補正

 GFRとは糸球体濾過量です。これが低下するのは、要するに

 「A. 糸球体を通過するそもそもの血流量が低下している」か、
 「B. 糸球体内圧が低くなる」

 ことによります。A. はそもそも全身状態が悪いなどの理由で「中心血圧(つまりMAPで代用)」が低い場合、当然腎血流は制限されます。腎臓には「一定の自動調節能」があり、多少の血圧変動で腎血流は変化しないように調整されていますが、それを逸脱した血圧変動には耐えられません。
 (※この自動調節の効く血圧の範囲も、個人差があります。例えばMAP 140mmHgくらいを放置していたような人で、MAP 90mmHgまで下げただけでも腎血流は低下(→GFRも低下)してしまします。大動脈解離の急性期患者で降圧を図ると往々にしてこれを経験します。)

 血圧が保たれていても、腎灌流が保たれていない可能性もあります。つまり、「腎血流を絞ることでなんとか全身の循環を維持している」ような状態です。そのような状態に早く気づくことが大事です(血圧が低くなる前に気づく「センス」が大事です)。必ず先行して尿量低下があり、それに続いてCre上昇がみられているはずです。また、他にも「全身の循環不全」を示唆する所見が出ている可能性があります。

 そのため、まず循環動態を改善させましょう。これについては、「循環生理」について過去にいろいろ記事を書いているのでそちらを参照してください。「全身の灌流を上げること&中心血圧を上げること」が大事です。

 次に、腎「局所」の血流が急に悪くなっている可能性もありますが、これについては「急に腎動脈が閉塞する」ような事態はそう多くないと思いますので、あまり最初から疑ってかかりません。
 (※いつも、局所を考える前に「全身」の循環動態を常に意識しましょう。これはどの臓器においても同じです。ASTやALTが著明に高値のショック患者で、「まず肝臓を精査」することは(普通)ないでしょう。)

 B. 糸球体内圧の低下する誘引としてやはり考えるべきは、「薬剤性」です。血圧を下げる薬剤全般は、A. 腎血流を低下させるので、当然「休薬」が考慮されるべきですが、その中でも注意すべき薬剤があるのです。それは、「糸球体内圧をとくに下げる薬(長期投与が腎保護につながるとされている薬剤)」です。つまり「輸入細動脈を収縮させ、輸出細動脈を拡張させる」作用がある薬ですね。
 ACE阻害薬やARBなんかは有名だと思います。
 カルシウム拮抗薬(CCB)でも通常の「純粋なL型カルシウム拮抗薬」は糸球体内圧への影響は弱いのですが、それ以外の腎保護作用が示唆されている「N型カルシウム拮抗薬」や「T型カルシウム拮抗薬」も同様に注意すべきだと思います。これらはタンパク尿が主体の慢性腎障害(CKD)患者で投与されていることが多いですよね。
 腎臓に無理をさせないための薬という点では、心臓にとってのβ遮断薬に近いでしょうか?心不全増悪時にβ遮断薬を増量してはいけない(中止まではあまりしませんが)のに似ているかもしれません。
 その他にも腎毒性や腎血流低下が証明されている薬(超代表がNSAIDsですね)も一式休薬します。

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休薬といえば、腎排泄の薬全般、一通り確認を!

 一時的とはいえ、GFRが低下していれば、体内に常用薬が蓄積する可能性があります。特に腎排泄の薬剤は一時的に投与量を減らすか、休薬も検討しましょう。これはオマケ的知識ですが、、、


AKIの分類に、Transient AKI v.s. Persistent AKIがある

 2,3日で改善するAKIをTransient AKIと呼ぶことがあります。これは、要するに上記のような「可逆性因子を改善」させたら回復するAKIが多いためでしょう。逆に、「Persistent AKIなら腎精査をしましょう」というメッセージでもあるのでしょう。
 ※ただし、可逆因子を補正しきれていない場合は、そちらをまず補正しましょう。

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可逆因子がほとんどの「腎前性」で注意すべきこと

 腎局所の血流低下の原因として「腎うっ血」を見逃してはいけません。多くの場合、「腎血流低下」は全身の循環不全が原因であり、「心拍出量COを増やすために全負荷を増やそう」と考えがちです。が、うっ血性心不全の病態など、「腎うっ血」のために腎血流が低下していることがあります(硬い被膜に包まれた腎臓はうっ血により腎内圧が上昇し、結果的に腎血流が低下してしまいます)。この病態に補液をするのは懸命ではありません。
 腎うっ血がくるような病態は、全身のうっ血が明らかですので、「やはり全身をみる」癖が大事ですね。「明らかに心不全」な患者でCreが上昇していても、「(利尿薬で)引いたら改善するだろう」とまず考えましょう。


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