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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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#循環

強心薬、DOBとMILどっちにしたら良い?

強心薬の使い方は難しいですよね。強心薬が必要な場面を判断し、「ちゃんと効いているか」を判断するのは経験を要すると思います。過去に記事を書いていますので、ぜひ参照していただければと思います。 では、強心薬が必要な場面が判断できたとします。 次に、強心薬のうち、β刺激薬(ドブタミン)を優先すべきか、PDE-3阻害薬(ミルリノンやオルプリノン)を優先すべきか、悩みますよね。 今日は、その話をします。 結論からいえば、まずドブタミン(DOB)を使い慣れろ いろいろ考える

急性期のvolume control

 急性期の輸液戦略の「難しさ」について、「ざっくり」話します。 急性期の輸液戦略は難しい 多くの場合、急性期患者さんは、相対的に血管内volumeが不足することによる循環不全を呈します。そのため輸液戦略が重要になりますが、これが難しい、「迷子」になりかねないんです。 循環管理が大事な理由は、「酸素」が絶えず必要だから 「循環管理」とは、組織の必要とする栄養や酸素を不足無く供給できるように、医療的に介入することです。栄養はともかくとして、特に酸素の供給が追いついていないと、

急にCreが上昇! 全例で腎疾患の精査?

本記事のまとめ(本記事は下書き中ですが、公開しておきます) Cre上昇(いわゆるAKI)を認めた場合は、まずは可逆的なCre上昇の原因をすべて「指差し確認」し、「是正」してから考えましょう。  ・全身循環が悪いなら、全身循環を改善すること  ・糸球体内圧を低下させるような薬剤を一度中断すること (ついでに、薬全般を見直しましょう)  この2点に尽きると思います。  これらを「まず指差し確認」する癖をつけましょう。 まとめ画像を貼り付けます(最後まで読んでから、また確認し

ICUでの輸液反応性 〜SVV〜

では、ICUシチュエーションならどのように輸液しますか? 実は、「輸液管理(stressed volumeの管理)が大事な患者がICUに入る」といっても過言ではありません。時々刻々と変わる患者の病態に合わせて、そのつど補液が適切かどうかを考えながら管理するには、ずっと看護師さんがついていてくれるような環境でないと厳しいからです。 ICUでは、「SVV」が利用出来ることが多い しかしICUという環境はそれだけに輸液管理に特化した装置を沢山使用できます。資源が相対的に潤沢

「しぶい」効き方をする「強心薬」

 ここまで、ほぼ触れてこなかった、心収縮能と、「強心薬の立ち位置」について話します。ぶっちゃけていえば、「強心薬は渋い効き方をする」のです。特に研修医の先生が「思っていたほど派手じゃない」と感じるタイプのお薬です。 強心薬は、「心拍出量」を増やして「循環」を改善させる ポイントは、血圧を上げるとか、そういう「見た目にすぐ分かる」ハデな効き方をしない、ということです。「循環が良くなる」とはどういうことか?「循環が悪い」とはどういうことか?が分かっていないと、効き目が理解できな

フランク・スターリングの曲線【基本編】

 ここまで、ある程度みなさんよく知っている前提で話してしまっていた「フランク・スターリングの曲線」について立ち返って説明したいと思います。 本日のポイント・心臓は、静脈から多くの体液が帰ってくる(静脈灌流が多くなる)と、それだけ次の収縮で押し出す体液(一回拍出量)の量を増やす。 ・最初は、その影響は大きいが、徐々に心拍出量の増加は「頭打ち」になる。 まずはこの図から  上図をみてください。下の曲線がみなさんの見覚えのある曲線です。右軸は[stressed volume

これだけ!非専門医のための不整脈薬物療法

不整脈初期対応は、誰もが避けられない! 「先生、●●さんのアラームが鳴ってます!タキってます!」 どんなドクターでも、  ① 不整脈で困っている患者に出会うこと、  ② 自分の患者のモニターで不整脈が出てしまうこと、 はあるでしょう。 病院勤務の若手医師が、そんな場面に直面したとき、 「とりあえず専門医に相談する時間がない、とりあえずなんとかしたい。」 という場面で役立つ内容をお届けしたいと思います。 「抗不整脈薬なんて勉強してないよ!」 抗生剤ならよく使うか

その場が「しのげる」循環作動薬の知識

臨床で必要な知識は、その場をしのげる知識 研修医がなかなか調整を任されたり、自分の判断で開始したりすることがめったにないのが循環作動薬ではないでしょうか。これらの薬剤が必要な患者さんというのは、(補液のときも述べましたが)重症なことが多いからです。  だからこそ、いつか自分が使わなければならないときのために学びたい。そう思って熱心に勉強している人もいると思います。しかし、教科書に出てくるのはカテコラミンの分類、α刺激、β刺激、、、などなど。β1, 2まであって、「β1刺

虜になる循環の生理学⑥循環作動薬

 最後の章になります。輸液や輸血以外の、いわゆる点滴薬を使った循環管理手法になります(本書でも、本項でも、内服薬については扱いません。とくにICUでは点滴薬が基本だからです)。  抗不整脈薬はすでに述べた記事が割り切りが良いのでそちらを参照ください!まず、本項で登場する薬剤グループを紹介しました。  循環管理において、心拍出量の調整が大切なことは繰り返し述べてきました。そしてその心拍出量(CO)は、 CO = HR(心拍数)× SV(一回拍出量) でした。  まず、

虜になる循環の生理学⑤前負荷

復習 前回、静脈系の圧についてはさらっと触れるだけにしました。前負荷は増やせば増やすほど心拍出量を増やしますが、(輸液によって)静脈系の圧が上がりすぎると有害事象が出るので、過剰じゃない程度にしましょう、と。  そして、前負荷のコントロール法として、輸液は何にすれば良いか?紹介しました。基本的にはラクテック(乳酸リンゲル)のような晶質液(クリスタロイド)で良いでしょう。Hbが7g/dL未満であれば輸血も検討ですが、粘稠度が上昇するため、輸血のインパクトは思ったほどではない、

虜になる循環の生理学④輸液と輸血

さて、循環の生理学の全体像が見えてきました。  ここで、 前負荷を維持するのにどのように輸液を選択すれば良いのか? という議論があります。細かく述べませんが、改訂スターリングの法則(何それ?という人は無視してもらってもOKです)を踏まえると、晶質液(いわゆる乳酸リンゲル液など)で良いだろう、というのが結論です。  膠質液(アルブミンやHESなど)を好む医師もいるのですが、急性期、特に炎症や侵襲期には、血管内に体液を維持する役目は期待できないと言われ実際にそれを示唆する

虜になる循環の生理学③「心拍出量」というキーファクター

復習 前回は、循環を語るのに ① 酸素運搬 ② 組織灌流 の2つを意識できていれば良いことが述べられていると紹介しました。  そして、②=血圧(ざっくり)でした。  ①については、集中治療室に入ればモニタリング(SvO2)できる。一般病棟では患者さんの慎重な観察(特に意識レベル、皮膚の冷感や網状皮斑の有無、尿量の3点)によっておおまかに循環がうまくいっているかをみる必要がありました。  それでは、今回述べる内容のまとめです。 今回の内容のまとめ・循環の①、②のいずれに

虜になる循環の生理学②「循環」のみかた

 では、本書の共感した部分を抜粋して紹介しようと思います。もちろん、この記事を機に興味を持った方は、実際に読破してみてください! 共感ポイント① 循環 = 「A.酸素運搬」と「B.組織灌流」 循環がうまくいっているかどうかを判断するのは難しい(裏返すと、「ショック(=循環不全)の認識も難しい)ので、 「A.酸素運搬」と「B.組織灌流」の2点がうまくいっているか考えよう  ということです。そして、過去の記事を読んでくださっている方は強烈に納得していただけると思いますが、「

虜になる循環の生理学①本の紹介

 呼吸循環に関する基本の部分(細かい知識はすべて後回しにしてきたつもりです)をいくつかの記事で述べてきました。  ここで、実は先月くらいに読んで感動した本があったので、紹介しておきます。一種の書評です。もちろん、本書が気になった方は買って読んでいただいても良いのですが、僕がいつも現場で後輩に伝えていることと一致することが沢山あったので、一部抜粋し紹介しておきます。 書名はタイトル通り「虜になる循環の生理学」です。 多くの生理学書は実践的立場から書かれていない 僕は常々、