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ソムリエが繋ぐ物語-2022年1月SAKEラインナップのセレクト編-

お酒のメニューリストにはソムリエの意図がふんだんに込められています。それを今回5つほど御紹介いたします。

北仙台『和酒バル 二喬/NIKYO』のSAKEラインナップ(1グラスにてサーヴ)の大前提として

①宮城県の新澤醸造店さんと長野県の小布施ワイナリーさんのアイテムを必ずオンリストする

②ワイングラスを用いるのを基本とする

③Barスタイルのお酒がメインの飲食店である

これらを挙げておきます。



1.原料が米だけで造るシュワシュワな赤いお酒


1月は言わずもがな新年初めです。気分をおめでたく演出したいのがサービスパーソン足る者です。そして、SAKEをサーヴする上で「原料が米だけで造るシュワシュワな赤いお酒」が存在する事を先ず知っているのが重要かと。知る、つまり勉強は生きてる限りずっと続けていくべき事ですね♪
さて、そのようなSAKEは実は絶対数が多い訳ではないのですけどもポツポツとあります。その中からどれを選ぶのか、という訳でして個人的には広島県「微紅Biko」を好みますし、時節としても最も適していると考えます。

「雨後の月」でも著名な蔵元さんのアイテムで、ファーストリリースから十数年経っていますのでご存じの御仁も多いかもしれません。好む理由はいくつかありまして、一つに最も色合いが美しいと感じています。澄んでいるからというのもあります。赤いSAKEは澄んでいるアイテムは極少数でして高い技術を要するのです。そしてもう一つ、時節にも適するという最大の理由として今時期に流通している赤いSAKEが少ないのです。これは先述の理由にもリンクしていまして、赤いSAKEは澄んでいない、つまり所謂にごり酒の状態である事が多くて、これはSAKEの中に生み出されている赤色に見せている成分が、にごりが有る事で状態が安定しやすくSAKEの中で赤く発色してくれます。なので、にごり酒が多く流通するのが1月中旬以降であるのが感覚的には多くて1月月初の営業日に御用意するという事はその前月には準備していなければいけませんので「微紅Biko」を愛用する事が多いのです。あと敢えてあげるなら限定流通であるというのも良いですね。味わいにつきましては、酸味が強いのでお好みが分かれるところもあるかもしれませんけどもワインもサーヴしている『二喬/NIKYO』としては寧ろアイデンティティに寄り添ってくれていると考えています。


2.改めて生酛とはどういうものなのかを問いたいです


二十年近く酒類業界にいる者として、現在これほど生酛山廃系アイテムが身近になるとは隔世の感があります。皆様は生酛山廃系アイテムにどのようなイメージをお持ちでしょうか?他のものからすると、力強い味わい、というのは少なからずありませんか?一部の蔵元さん達のアイテムを除いて十数年前までの生酛山廃系アイテムは、力強いというよりも重いという表現が適格なものが多かったと記憶しています。比較すると酸味が多くなる醸造法なのでそれに連動して旨味が多くなりがちで(醸造法としても旨味が生成されやすく且つ酒質設計上で味のバランスを取る為にもそのように醸造家が誘導)、SAKEの旨味の主成分であるアミノ酸が多くなるとアルコール度数とも相まって粘着性を演出してマッタリする印象となり結果重いと感じやすくなります。それによって、生酛山廃系アイテムはどちらかというとマイナーなものになって、また燗酒にする事で軽快さが出ますのでそのひと手間感を愛するディープな左党さん達や居酒屋さん達には偏愛されるという住み分けになりました。ただ燗酒になった時の味わいというのは格別のものがやっぱりありますので広く左党には愛されているとは思います。
そもそも生酛山廃、他には速譲という醸造法がありまして、それは酒母、つまりSAKEのアルコール発酵に必要な酵母菌の増殖をどのように促すか、というお話です。よって本来は酒造りの一工程である酒母造りだけをもってこういう味になるなんて決めれないのです。近年のように、生酛山廃で軽快なものもありますし速譲で重いものもあります。結局は醸造家がどのような酒質設計をするかです。醸造酒、クラフトですから。そういう点で、あの山口県「獺祭」が生酛を採用したというのは皆様とても御興味が湧きませんか?極少量生産で2020年から取り組んでいるようです。既にテイスティング済でしてなかなかユニークでしたよ♪


3.なんとその名も山和星


2019年正月松の内、宮城県の老舗百貨店であります藤崎百貨店さんの開業200周年記念として、同じ宮城県「山和」「伯楽星」とのコラボレーションアイテムの「山和星」が限定リリースされました。その2つの酒蔵さんとも、当時は女性の杜氏(製造責任者)だったので、そのお二人での共作であり、かつそれを酒造りのベテランである両酒蔵の蔵主さん達が見守る、という体制が敷かれた超話題作でして、当時の当店ブログを見返しますと販売初日には所謂仙台初売りと相まって百数十人の行列が出来て飛ぶように売れていきました。その後「山和星」はあまりの人気につき引き続き今年もリリースされています。
それが、2021年のリリースから劇的に内容が変わってしまいました。

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