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    ワインの短編集をまとめています

最近の記事

Vol.3 裏切りの後に

〈プロフィール〉 名前:琴子(26) 経歴:日系客室乗務員 住所:港区高輪 「よかったじゃん、琴子!そんな素敵な人に出会えたなんて。私もその食事会、参加したかったなぁ」 日曜日の昼下がり。 CA同期の沙羅と琴子は、けやき坂通りの『Bricolage bread & co.』でランチを楽しんでいる。 琴子は、食事会で出会った男性と最近付き合い始めた、という報告を済ませたばかり。彼は2歳年上の28歳。大手証券会社に勤めていて、斎藤工似のイケメンだ。 「あ

    • Vol.4 雨のち、晴れ

      〈プロフィール〉 名前:麗香(29) 職業:大手テレビ局勤務 文化事業部 展覧会担当 住所:白金台(一人暮らし) ― 愛してる……か。 ついさっき、別れ際に修二に言われた言葉を思い出し、麗香はタクシーの中でため息をついた。 まだ火曜日なのに『会いたい』という修二からのメッセージを見て、麗香は、仕事を早めに切り上げ、彼の待つ六本木のバーに駆けつけたのだ。 数時間一緒に過ごし、別々の家に帰る。 ― 彼が独身だったら…なんて、もう何百回思ったことだろう。

      • Vol.5 快楽主義

        〈プロフィール〉 名前:夏帆(28) 経歴:人材紹介会社 システムエンジニア 住所:駒沢公園付近(一人暮らし) 「夏帆は学歴もないし、大した仕事もしてないんだから、せめて彼氏に嫌われないように愛想良くしてなさいね」 私の言葉を待たずに、一方的に電話が切れた。 長野に住む母は、私が仕事で疲れている日にかぎって電話してくる。 今日は、営業部のミスが発覚し残業に付き合わされ22時まで会社にいた。家について、ゆっくり休もう…と一息ついた矢先に電話がかかってきた。

        • Vol.6 セッション

          〈プロフィール〉 名前:静香(28) 経歴:東京藝術大学 音楽学部 器楽科・ピアノ専攻卒    大手イベント制作会社 広報部 副部長 「さっきのナンパ、完全に静香のことしか見てなかったよね」 ランチ休憩で入った『虎ノ門ARBOL』で、同期の美和が言った。 30分前、虎ノ門ヒルズの前で若いスーツ姿の男2人に声をかけられたのだ。 「そんなことないよ。仕事中に連絡先教えて、なんて言われても迷惑よね」 「もー、静香は嫉妬しちゃうくらい才色兼備だからな〜」

        Vol.3 裏切りの後に

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          12本

        記事

          Vol.7 1本のフィルム

          〈プロフィール〉 名前:愛(31) 職業:ファッション雑誌 編集者(育休中) 家族:息子の礼央(0歳10ヶ月)と、夫の悟(34)と3人暮らし 住所:港区南青山 礼央のMARLMARLのナイトウエアを「#marlmarl #新米ママ #港区ママ」のハッシュタグを付けて、Instagramにアップした。 すると、すぐに“いいね”が付き『かわいい!』というコメントが入る。 わずかな外の世界との接触だ。 私の投稿は、この10ヶ月ですっかり子ども一色になった。

          Vol.7 1本のフィルム

          Vol.8 女の分岐点

          〈プロフィール〉 名前: 美希(30) 職業:結婚相談所カウンセラー 住所:池尻大橋(母親と2人暮らし) 「ヤマダ様の魅力をわかってくれる男性は必ずいます。不安になるお気持ちはわかりますが、もっと自分に自信を持ってください」 私は、涙でつけまつ毛が取れかかっている35歳の女性を力強く慰めた。 彼女は何件か破談を経験し、仮交際中の彼との関係も不安になって泣き出してしまったのだ。 ここは、私の母が20年前に起業した、恵比寿にある結婚相談所だ。 従業員30

          Vol.8 女の分岐点

          Vol.9 もう手に入らないもの

          〈プロフィール〉 名前:龍(30) 職業:事業資金融資専門会社 代表取締役 ― ハチ公前で待ち合わせなんて、いつ振りだろう…。 金曜の17時すぎ。 七恵との待ち合わせの10分前に到着した僕は、若者で賑わう渋谷の街を眺めていた。 僕と彼女の出会いは、大学時代。 七恵は福岡、僕は東京という離れた大学ではあったが、青年国際交流事業のメンバーに選ばれ、大学2年生の夏、1ヶ月間カンボジアで生活を共にした仲間だ。 ずいぶん綺麗でプライドが高そうな子がいる、とい

          Vol.9 もう手に入らないもの

          Vol.10 憂いを帯びた瞳

          〈プロフィール〉 名前:学(33) 職業:ワインショップ経営 「学さん、こんにちは!今日も暑いわね」 白いポメラニアンのココを連れて、店の外から声をかけてきたのは、常連客のレイラさんだ。 「前回のシャンパーニュ、とっても美味しかったわ。今日はどうしようかな…」 僕は、麻布十番にある小さなワインショップを経営している。 大学在学中に、麻布十番にあるフレンチレストランでアルバイトをしていたとき、深い歴史と伝統を持つワインの魅力に取り憑かれてしまったのだ。

          Vol.10 憂いを帯びた瞳

          Vol.11 甘い言い訳

          〈プロフィール〉 名前:睦美(26) 経歴:都内女子校出身、ICU卒業 職業:外資系戦略コンサルティングファーム 住まい:品川(彼氏の家で半同棲中) 「ねぇ、私と同じクラスだったミキって子、覚えてる?子ども生まれたんだって!これ見て」 日曜日の夜、彼氏の春樹くんの家でくつろぎながら、私はInstagramの投稿を彼に見せた。 「お~かわいいなぁ。幸せそうだね!」 ― 春樹くんも、そろそろ結婚して子ども欲しいとか思わないのかな…。 実は、春樹くんは私

          Vol.11 甘い言い訳

          Vol.12 大切だったもの

          〈プロフィール〉 名前:恭司(35) 職業:投資家、フリーランスコンサルタント、ワインバー経営 「恭司さん、今日も最高のワインをありがとうございました!」 西麻布交差点近くのマンションの一室にある看板のないワインバー。 僕は、本業であるコンサルタント業務の傍ら、このバーを経営している。 元々ワインを管理するために所有していたマンションを改装し、3年前にワインバーを始めた。 今では『ここに行けば良い状態の最高のワインが飲める』という口コミが広がり、芸能人のお忍びや

          Vol.12 大切だったもの

          Vol.2 恋と友情の狭間で

          〈プロフィール〉 名前:華(28歳) 経歴:青山学院大学経済学部出身、広告代理店勤務 住所:恵比寿(一人暮らし) 「はぁ……」 5月下旬の金曜19時。 青山学院大学時代のダンスサークルの女子5人で表参道の『リナストアズ』に久しぶりに集まった。 楽しい女子会だというのに、華は、ため息をついてしまった。 「ちょっと、華。元気なくない?何かあった?」 そう聞いてきたのは、美佳だ。美人でサバサバとしていて、サークル内でも男女共に好かれていた皆のお姉さん的存在。 今

          Vol.2 恋と友情の狭間で

          Vol.1 孤独な男女に贈るシャンパーニュ

          〈プロフィール〉 名前:山下悟(36歳) 職業:上場企業の役員&不動産投資家(IT関連で起業し、5年前にバイアウト) 住所:赤坂 「悟さん、さすがですね。予約が取りにくい人気店や、会員制のワインバーに連れてきてくれるなんて」 金曜22時。西麻布の交差点近くのワインバー。 マドカはうっとりとした目つきで悟を見つめながら、丈の短いワンピースからのぞく脚を何度も組み替え、長い髪をかきあげながら言う。 ― この女も“予約の取れない”や“会員制”という言葉に弱いん

          Vol.1 孤独な男女に贈るシャンパーニュ