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”ブドウの持ち味を最大限活かす”ワイナリー 〜ココファームワイナリー〜


栃木県足利市・ココファームワイナリー

栃木県・足利市にある「ココファームワイナリー」

ここでは「こころみ学園」の学生たちがブドウ栽培から醸造まで一緒に行なっており、ブドウ栽培は昭和33年から、現在開墾から64年目(2022年10月現在)。

元々は、特殊学級の中学生たちとその担任教師(川田昇 氏)によって葡萄畑が開墾され、現在でも知的障害を持った人たちをはじめ、みんなが活き活きとワイン作りを行なっています。

そこで造られるワインは、野生酵母の力で発酵を行い、
「その土地、そのブドウの良さを最大限活かす」
ワインが造られています。

そんなココファームワイナリーさんの体験を書いていきます!


ココファームワイナリーのワイン造り

この日は、販促担当の新井さんよりお話を伺わせていただきました。

ココファームワイナリーでは、「この畑でしか造ることができないワインを造る」ことに注目し、栽培・醸造を行われています。

その中の特徴の一つとして、
”全ての銘柄を野生酵母によって醸造していること”
が挙げられます。

現代のワイン作りでは「培養酵母」と言う、自然界にある酵母を人の手によって培養させたものを使うことが一般的になっており、
培養酵母では発酵するまでの期間も短く、安定したワイン造りが可能になります。

「野生酵母」というのは、ブドウの周りに付着している、自然な酵母のことを指し、
野生酵母では、発酵するまでのタイミングにムラがあったり、運が悪ければ発酵過程で悪い香りを持つこともあります。

安定した酒造りを行う上では、培養酵母の方がメリットは大きいのですが、そうすることでワインの多様性が失われてしまいます。

「テロワールを表現する」と言う考えにおいて、その土地の立地条件や、多様な生態系などによってワインの個性が映し出されると考えられています。
野生酵母は数多くの種類があり、ブドウからワインになっていく過程でこの酵母たちが関わることになり、ワインになった時に香りの複雑さが生まれます。

こうした香りによって生み出される感動があるために、ココファームではこうしたワイン造りを行われているそうです。


斜度38度の急傾斜で栽培されるブドウ

ワイナリーの目の前には、平均斜度38度の急斜面が広がっています。

この葡萄畑は南西向きの斜面になっていて水はけがよく、日当たりも良い、ワイン用ブドウの栽培に適した土地になっていました。

土壌条件としても、この土地はジュラ紀からの土壌が現在でも残っており、水捌けのいい土壌。
岩がむき出しになっている山を見ると、岩はミルフィーユ状に層になっていて、とても脆い土壌になっていました。

ただ、ここでのブドウ栽培は条件がよくとも、この畑に機械が入ることはできないため、多くの手間がかかっているという。

雑草を取り除く除草剤を撒かないので、虫たちも沢山寄ってくる。
こころみ学園の園生の方達が虫をひとつひとつつまんで取り除いたり、病気になってしまった葉っぱや粒を一枚一枚丁寧に拭いたり取り除いたり、また、葡萄の一房一房に笠をかけたり、多くの作業を全て手作業で行っているそうです。

見学に伺った日も、畑で作業されている方たちもいて、
畑の頂上からは、金属の缶を叩いてカラスよけの仕事をしている人たちがいました。

重い車両や機械はその重みで土を固く踏み固めてしまい、水や空気の通り道をつぶしてしまうこともあるので、こうした作業を機械を使わず、様々な作業を手作業で行っていることが美味しいワイン造りに役立っているのだと思います。


手作業だからこそ伝わる、ワイン造り

醸造場や、ワインカーブも順番に見せていただきました。

まず見せていただいたのは、醸造所のスパークリングワイン製造を行っているエリア。

シャンパーニュ製法のワイン造りの工程を説明していただき、ワインの瓶を逆さに立てるピュピトルという板、スパークリングワインのコルク栓打ちの体験など。
ピュピトルとは、瓶を逆さに刺して立てておくための木の板で、シャンパーニュ地方では昔からこの板が使われています。
スパークリングワインを造る過程で、ワインは澱と共に瓶内熟成が行われます。
この澱を、逆さにして瓶を回しながら傾けることで、瓶口に澱を集めて取り出す動作を行う。
そんなフローを実際に目の当たりにしながら体験することができました。

知的障害を持っている園生たちは、この作業も全て手作業で行っているとのこと。
こだわりが強い特性を持っている園生たちは、この作業もとても丁寧に行うのだと言う。

この後には発酵庫の見学。
ちょうどこの時期は収穫後のタイミングで、発酵庫は酵母の香りが充満していました。
ぶどうを潰し、ポリタンクやステンレスタンクなどに入れられ発酵が始まる。
発酵中のタンクからは、排気弁からガスが抜けつつ、「ポコ…ポコ…」と癒しの音が鳴っていました。
この発酵場には茨城県の名産の陶器・益子焼で、発行・熟成されているワインもありました。

ちなみに、ここで造られているワインが「甲州F.O.S.」
非常に美味しいワインですのでオススメです。

この後に向かったのは、山のカーヴ(貯蔵庫)
ここのカーヴは、山の斜面を掘ったトンネルに、天然のワイン貯蔵庫として管理されている。
扉を開けて中に入ると、ひんやりとした空気を感じ、ワイン特有のアルコールの香りとカビの匂いが鼻をつきました。
木の熟成樽からは常にワインが染み出ていて、熟成中にはアルコールが揮発するためにこの香りが感じられます。
カビの香りも、天然の貯蔵庫ならでは。この湿度と、一定の温度がワインの貯蔵に最適な環境を生み出しているのだそう。
余談ですが、実はここのカーヴにはエピソードがあるらしく、
元々はこの貯蔵庫、こころみ学園の園長・川田昇さんが「ここ掘ろう」といい、ご自分で掘ろうとしたとのこと(笑)
人間の歴史で、「先人が山を掘って貯蔵庫にしたと言う記録があるのなら、自分でもやれるだろう」と掘り出した結果、少し掘った所で地盤の硬さにやられ、結局叶わなかったそう。
このエピソードは「ブルース、日本でワインを作る」と言う本に書かれているのですが、ココファームでのワイン作りの経緯や、働いている方々の人柄が見えてきたり、ココファームの人たちを包み込むような優しさを感じられる、とても素敵な本です。ぜひ読んでみてください。


こころみ学園の人たち

前述したように、ココファームワイナリーで働いているのは、「こころみ学園」の園生で、知的障害を持った人たち。

社会の中で、知的障害を持った方々は、「障害を持ってかわいそう」と過保護にされ、何もやらせてもらえない生活を送ってきていたと言う。

都会で夜中にあばれて、家のガラス戸を全部割ってしまったという少年や、知恵が遅れているから何もできないと思われ、何もやらせてもらえなくて赤ん坊のような少年。

そんな方たちが、役割を与えられ、自分に適した仕事で、
急斜面を登って降りて、お腹がすいてちゃんと食べて、ぐっすり眠って、、
知的な障害のせいで自分自身をコントロールできないでいた子どもたちが、そんな生活を送ることができ、心身を安定させていくと言う日常が生まれたのだそうです。

140名もの園生たちが、このこころみ学園で生活をしていて、伺った時にもその人たちに出会うこともできました。
逞しい体で、真っ黒に日焼けした健康的な様子が見て取れます。

現在でも、普通に生活している人々の中には、社会に出て仕事をしていて、適性がなければ仕事が与えられなかったり、特殊な行動をとったことによって腫れ物扱いをされてしまうことは多くあると思います。

そんな世の中で、人々に役割があり、人が感動することができるワインを生み出している場所があると言うことが、なにより尊いことなのではないかと感じさせられます。


葡萄の声に耳を澄ませる

ココファームワイナリーを語る上で、「こころみ学園」の方々の存在は大きなものですが、あくまでもワイン造りで大事にしているのは、
“こんなワインになりたいという葡萄の声に耳を澄ませ、その持ち味を生かすこと”
この土地に向いている品種選び、
全てが手作業のブドウ栽培、
育ったブドウに向いているワイン醸造、
全ての行為が自然に耳を傾けられ、ワインづくりに携わる方々は、自然に敬意を持ちワイン作りを行っている。
飲み手の方にもストーリー性だけではなく、ココファームワイナリーのテロワールを感じてもらいながらワインを飲んで欲しいと言うのが、ワイナリーとしての願いだと話していただきました。
情熱こもったワイン作りを行っているココファームさんのワイン、ぜひ味わってみてください。
ワイナリーにも都内から2時間もかからず向かえるので、ぜひ足を運んでみてください!
絶景の畑が眺めながらのランチ、ワイナリー見学ツアー、ワイン造りを知った上でのテイスティング
最高の体験が味わえます。
ココファームワイナリー
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