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“この土地でしか造れない”福井唯一のワイナリー 〜白山ワイナリー〜

福井県大野市・白山ワイナリー

福井に行って、園部個人が一番楽しみにしていたのはここ。

福井県大野市にある「白山ワイナリー」

山梨、北海道、長野と日本のワイナリーの中心地をあちこち巡ってきていいたが、実際の所それ以外の土地はブドウ栽培に対してどのような条件をもたらすのか、とても興味があった。

今ではほぼ全国にワイナリーがあるが、福井県にはこの白山ワイナリー一件しか存在しない。

この白山ワイナリーで造られるワインがどのような味わいなのか、どんな条件でワイン造りが行われているのか、伺ってきた。


白山ワイナリーの販売所

白山の気候条件

そもそも、白山はどのエリアにあるのか?

白山は、石川県から、福井、岐阜にかけて連なる山嶺で、3つの峰から構成されています。
標高2,702mの活火山で、白山ワイナリーが位置するのは経ヶ岳の麓。

活火山の麓ということもあり、土壌条件としては、火山灰が積もった黒ボク土が多くの土壌を占めています。
この、黒ボク土には、火山灰や玄武岩、凝灰岩などから成されており栄養素が多く含まれており、肥沃な土壌だと言えます。
肥沃なので果樹栽培には適しているといわれていますが、痩せた土地が良いとされるワイン用ブドウにとっては、根が深くまで伸びにくいという特性も持っています。

この大きな理由としては、火山灰性の土壌が持つ”リン酸”に由来します。
このリン酸の有無による検証というのは、信州大学農学部の元研究されており、リン酸のない土壌では生育が著しく不良で、リン酸量が豊富な土壌ほど生育が促進されていたと言うデータがあります。

また、積もった火山性土壌は保水性があるためにミネラル分や、カルシウム、マグネシウムなどの成分を豊富に持ち、それでいてブドウ栽培に適していると言われる、水捌けの良さと言うのも個性として持っています。

北陸の中でも内陸地の”奥越地区”は盆地になっており、冬場は雪が多く、日照時間は非常に短いのですが、ブドウの生育期間である夏場は気温が高く、日照時間も長くなるそう。

標高は500mほどの高地に立地しており、自社栽培の面積は約4ヘクタールほど。
2000年に創業して以来、特に自生種のヤマブドウ系の品種を多く植えている。
何千年前からも自生している品種だからこそ、このヤマブドウを使って、ここでしかできないワインを作りたいのだと語ってくださった。

白山に根付く、ヤマブドウたち

ワイナリーから畑までがとても近く、畑を実際にあちこち見せていただきました。
伺った時期はちょうど収穫の時期の真ん中だった為、収穫を終えたブドウたちもありましたが、これから収穫のブドウたちの完熟した状態というのも見ることができました。
その中でも、たびたび話題に上がるのはやはり「ヤマブドウ」
そもそも、ヤマブドウという品種はどのような特性を持っているのでしょうか?
ヤマブドウは、冷涼な山地に自生する野生種で、一粒の大きさは8mm~1cmと、とても小粒。それでいて果皮が厚いため、果汁はとても少ない。果皮には特に多くのポリフェノールを含んでいます。
こういった特徴から黒紫色な色味で、タンニン分と酸味がとても強いワインに仕上がります。
その他にメインで育てられているのは、小公子、ヤマ·ソーヴィニョン、ヤマ·ブランなど、それぞれがヤマブドウベースで交配された品種たち。
小公子
日本葡萄愛好会(澤登晴雄先生)作出の山葡萄交配品種。
濃い赤紫色で甘みと酸味のバランスはとてもエレガントで「小公子」の名前にぴったりです。
1粒の大きさは1~1.2cm、収穫時期は8月中旬で収穫のトップバッターです。
·ヤマ·ソーヴィニョン
日本の山葡萄とヨーロッパ品種のカベルネ・ソーヴィニョンとの交配品種で、山梨大学で生み出された赤ワイン用のブドウです。
ヤマブドウの野生感とヨーロッパ品種特有の華やかさを合わせ持った日本のブドウ。
・ヤマ・ブラン
山梨大学で生み出された品種で、日本の山葡萄とヨーロッパ品種ピノ・ノワールとの交配品種。
黄色から青色がかった小粒のブドウで酸味のしっかりとした白ワイン用ブドウです。
その他、山梨、山形などの契約農家さんより原料ブドウを買い、ワイン作りも行なっている。


白山でしか作ることのできないワインたち

実際に、何種類か試飲をさせていただき、その他のワインも購入しました。
試飲アイテムは5つ。「デラウェア ドライ」、「スイートキャンディー ロゼ」、「dandan ルージュ」「Andosols ヤマソーヴィニヨン」、「Andosols 小公子」
デラウェア・ドライは、ジューシー感のあるデラウェアの味わい。フレッシュ感のある程よい酸味がありました。
スイートキャンディーロゼは名前通りのキャンディー感のあるやや甘口ワイン。
dandanルージュは、ベースになっているマスカット・ベーリーAのフレッシュないちごの果実感ある香りでいて、ドライな飲み口の赤ワイン。
Andosols小公子は、香りや味わいにしっかりとした凝縮感が感じられ、やはり酸味がしっかりとあったので、2018年のものでしたがまだまだ熟成のポテンシャルがあるように感じました。
特にAndosolsヤマ・ソーヴィニョンはこの中でもクオリティが飛び抜けていました。凝縮感がありながらも味わいにまとまりがあり、野生的な風味や果実感がバランスよく感じられます。上品な余韻も残り、個人的にも好きなワインです。こちらは2019年のヴィンテージでしたが、こちらも熟成のポテンシャルは十分にあるかと思います。こちらは、パリで行われる女性によるワインのブラインド審査「フェミナリーズ世界ワインコンクール」の2021年度で金賞を受賞されたワインとの事。
購入したものの中では、「小公子スパーク」を抜栓し、テイスティングしました。
黒ブドウの小公子から造られた赤スパークリングは個性に溢れています。
ヤマブドウらしい紫がかった色調で、泡も紫色がかる。
ブルーベリーやカシスの果実のギュッとした香りと、ほんのり醤油のような発酵の香り。飲み口には果実のジューシーなコクがありながらも、強烈な酸味が感じられる。個人的には、黒酢酢豚など、中華系の料理に相性が良いのではないかと感じました。
全体的な印象として、植樹してから20年経っているヤマブドウ系品種たちは特に味わい深さが感じられました。
ブドウの実は、植えてから成るまでに最低でも3年はかかると言われていますが、実際樹齢3年目のものと樹齢20年のものを比較すると20年のものの方が、凝縮感のあるワインに仕上がります。
これは、植えてからの年数によって地中に深く根を張るといった意味合いもありますし、古木の方が樹勢は弱まる代わりに1房1房に栄養が詰まっていくといったことが起きます。
今現在、国内のワイナリー数はどんどんと増えている最中ですが、やはり課題になっているのは樹齢と、降雨量の多さによる、味わいの薄っぺらさだと感じていますが、これだけ年月をかけて育てているブドウが福井の地にあるということには喜ばしいと、日本ワインの普及に携わる立場として感じてます。


観光産業としてのブドウ園

今回、醸造時期に重なってしまいお忙しい中で沢山のお話をしてくださいました。
醸造長・取締役の谷口さんとも直接お話しすることもでき、ヤマブドウ種の栽培へのこだわりなど語っていただきました。
山中にあるため、猪や猿などの獣害にも苦しめられていたり、除草剤を撒くことをせず、丁寧に草刈りをされていたり、美味しいワインを作るための苦労と工夫が感じさせられました。
白山ワイナリーではワイン造りだけではなく、観光業として地域の発展にも貢献されている。
山ブドウのソフトクリームの販売や、生食ブドウの収穫体験、ワインフェスタ(収穫祭)、BBQハウスの運営(現在は停止中)。
他にも醸造・栽培体験、畑の管理サポーターなどを募り、ワインに興味を持ってもらうために間口を広げる活動をされていた。
現在、国税庁統計情報(2017年)の都道府県別ワイン消費量データに基づくと、福井は45位と非常に低い。
こういった機会からワインが世に広まっていくことは非常に喜ばしいし、福井でもワインを飲む習慣が広まっていくことを願っています。

(株)白山やまぶどうワイン
〒912-0146 福井県大野市落合2−24
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