タスマニアでワイン作り〜ワインはもっと自由で気楽が良い〜
こんにちは。私は今年のヴィンテージ期間、タスマニアのワイナリーでワイン作りをしました。そこで見聞きしたこと、感じたことを忘れないように記録しています。(先日ワイン作りを終えて帰国しましたので、若干の時差投稿となります。)
今回は、怠惰なワインについてのエピソードです。
先日、セラードアの手伝いをしている時、ワインテイスティングの接客をしているオーナーの言葉を聞いて耳を疑いました。一番の売れ筋のPinot Grisの美味しいワインについて、お客さんにこう説明していたからです。
私は、この言葉に違和感を感じました。確かにワイン作り自体はシンプルかもしれません。しかし収穫する前の10ヶ月、手間暇かけて育ててきたからこそ、高品質なブドウになり、美味しいワインができたのです。それなのになぜあえて怠惰な、というネガティブとも捉えられる言葉を使うのか?「こだわり」をアピールすべきではないのか?と。
日本人としては努力は美徳で、怠けるという言葉をお客さんに使ってはいけない、という固定観念があったのかもしれません。
この件についてオーナー質問したところ、以下の回答がありました。
彼としては、ワイン業界は、お客さんを見下しているようなところがあり、それはとても変であると。これはとても面白い指摘だと思いました。
高級レストランに行って、何ページにも渡るワインリストに圧倒され、ソムリエと接する時に緊張する感覚。何か的外れなことを言ったら恥ずかしい。ソムリエの説明してくれる内容も、専門用語が多くてよく理解できないけれど、質問したらバカだと思われるのではないか。
こんな居心地の悪さを誰もが一度は感じたことがあるのではないでしょうか?
私はありました。しかしワイン=奥深いもの=難しくて当たり前、分からないのは自分が悪い、と思って特にそれがおかしいとは思っていませんでした。
でも実は考えてみるとおかしいのです。なぜ、せっかく食事を楽しみにきているのに、お客さんの方が肩身の狭い思いをする必要があるんでしょう?
私は、ワインの資格勉強を経た今は、ワインリストを見たりソムリエと話したりする時間を楽しめるようになりました。でもそれって相当、ワインオタクだと思います。恐らくレストランに来ているお客さんさんの1割にも満たない割合です。
オーナーの主張としては、以下となります。
これはすごく面白い観点でした。彼のバックグラウンドは、会計士として12年働いた後、本島でパブを経営していました。だからお客さんのことをよく理解しているし、お金の稼ぎ方を知っています。
ワイン業界って、自分もワインがすごく好きで、勉強して知識がある人が働いている場合が多いと思うんです。ワイナリー経営も然り。情熱がないとブドウを育て、美味しいワインは作ることはできません。でもその情熱が故に、お客さんにとっての敷居が意図せず上がってしまっているケースあるのかもしれない、と思いました。
せっかく美味しいワインなんだから、作り方やら背景やら説明しなくては勿体無い!!という発想は自己満足で、もしかするとお客さんは求めていないのかもしれない。
勿論、世の中には、お客さん目線で素晴らしい接客をしているレストランやワインバーも沢山あります。ただ、残念ながら多くの場合、ワインと居心地の良さは、相反するところにあると感じます。特に日本では...。
海外と比べると、ワインは日常的な飲み物ではなく、特別な時に飲むもの、という飲まれ方の違いも関係していそうです。また、日本人の真面目さとか、職人魂が “ワインはこうあるべきだ!” という固定観念に繋がっているのかもしれません。
若者が気軽に楽しく、しかも高品質なワインを飲める場所って意外と少ないかも、と思っています。難しい話は一切抜きで、産地にも拘らず、純粋に目の前の美味しいワインをみんなでシェアできるようなワインサークルを近々作れたらなぁ、と考えています。
読んでいただいてありがとうございました😊
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