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楽しく飲む、おいしく食べる。

数年前から、すっかり日本酒好きになった、というのは、前にもちょっと書かせてもらったかもしれません。
きっかけは、ドラマ化・アニメ化もされているマンガ「ワカコ酒」。
数年前の長期療養中、読みまくったマンガや小説、文芸書の中のひとつなんだけれど、これがとても面白くて……(現在も連載継続中ですよ~)。

長期療養中はアルコール断ちをしていた(まぁ、飲んでもよかったんですが、それどころの状況じゃなかったからなぁ)……いつも気になっているお店がありました。
手書きのメニューがお店の前に掲げられていて、いつも賑やかな声が聞こえてくるお店。
チェーン店ではなく、個人経営の、こぢんまりした居酒屋さんでした。

一応、主治医にお伺いをたててみます。
すると、飲んでも大丈夫ですよというお許しをいただきました。
「でも、酔いやすくなっていると思うよ。だから、無理はしないこと」
という注意も一緒についてきました。内臓の一部を全摘しちゃっているというのが、その理由のひとつ。それでも、主治医からOKをいただいたということで、うれしくて……
アルコール解禁は、このお店で…と、決めていました。

わが故郷、長野県の有名蔵元のひとつ、岡崎酒造の「亀齢」。

お店のドアを開けると、ちりりん……と、ドアベルの音。同時に、
「いらっしゃーい!」
という、元気な声が私を出迎えてくれました。
大将と女将さん、ふたりできりもりしている居酒屋さん。女性ひとりで入るには勇気がいるなぁとおもったけれど、でも、思い切ってドアを開けて、正解でした。店内は小ぢんまりしているけれど、明るくて清潔、そして、お客様の層がいい(これは大将のお人柄もあると、通っているうちに理解できました)。
日本酒、吞んでみたくて……と、お願いすると、女将さんがニコッと笑ってくれました。実は女将さんが、唎酒師なんですよ。

こちらのお店、とにかく、大将のお料理が「おいしい」。
メインは魚介料理、天ぷら、そして、日本酒。
もう、最初から感激しっぱなしでした。
お通しから始まり、出てくる料理が、どれもおいしいのです。
初めての日本酒ということと、この日はとても寒かったので、ぬる燗にしていただきました。
居酒屋さんなんて、ほとんど入ったことがない私。飲むときも、ちょっとおどおどしているのがわかったのでしょう。カウンターに座っていた男性が、
「ゆっくり、飲んでみ。慌てなくていい」
と、声をかけてくれました。
おちょこに入った、ぬるめの日本酒。ふわ~っと、いい香りがしてきます。
「あ、いい香り……ちょっと甘い香り……しますね」
と思わず呟いたら、大将も、ニッと笑ってくれました。
ひとくち、含んだ時の、あの瞬間は、今も忘れません。

え、これが日本酒?

優しくて、甘くて……香りが鼻を通っていく。
それから、スッと喉を通って、胃に落ちていく……

「……!」
おいしい。すっごいおいしい!
「日本酒と、お刺身は最高のコンビですよ」
と、女将さん。

この日以来、こちらのお店に通うようになりました。

あれから数年が経ちました。

大将と女将さん、お店の常連さんたちとも打ち解けて、顔を合わせると一緒に飲んで、食べて……。大将のおいしい料理、女将さんが教えてくれるおいしい日本酒。無理をしないようにして飲んで、食べて、楽しんでおります。

自分が飲める分量っていうのは理解しているので、過度の飲酒はしません。
ヤケ酒なんてもってのほか。
楽しく日本酒を飲んで、おいしく食べる。
それが、酒飲みとしての心構えなのかな……とも思います。