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ひとと暮らすこと、ひとりで暮らすこと

カナダに来てからひと月ほど友人カップルと暮らしている。
その友人カップルが旅行に出かけるとのことで、久しぶりの一人暮らしが彼らの猫とともに始まった。

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一人暮らしというのは気楽だし、楽しい。
東京で一人暮らしをしていた時は、好きな家財道具や小物を買い揃えては、好きな空間を作った。様々なお店をまわっては、お気に入りを見つけ、自分の空間をより快適なものにした。
誰の意見を尊重する必要もない、私の空間づくりは、それはもう、とても楽しかった。

それになんと言っても一人暮らしは自由だ。鼻歌を歌っても、猫を相手にふざけてみたりしても(猫以外は)誰も聞いていないし、迷惑にもならない。恥ずかしくもない。

私は一人暮らしをとても気に入っているのだが、ここカナダで一人暮らしをしていないのには訳がある。
家賃が高すぎるのだ。もちろん地価が高いのもあるのだが、カナダにはワンルームというものはおそらく存在しない。いくつか部屋があってリビングがあってそんな家ばかりだ。
一人暮らし向けの物件がなかなかないのだ。

一緒に住んでいるカップルの彼女と話していたら、なんと彼女は一人で家で過ごすということを人生で最長で2、3日しか経験したことがないという。
びっくりして聞き返したが、よく考えたら彼女の実家は車で少し行ったところにあるし、家賃の高いこの都市で若い人が一人暮らしをするのは相当なことに違いない。

こちらのスーパーはなんでも一つの単位が大きい。牛乳やジュース類は二リットルほどからだし、肉は一番小さいものが500グラム程度、だいたい1キロ以上、アボカドやパプリカも数個入ってひとつである。
最初どうやって消費するんだろうと頭をかしげたのだが、三人で暮らしてみるとすぐに分かった。当たり前の話だが、人数が多ければ一度に消費する量も多い。

カナダはおそらく、住をとっても、食をとっても、一人暮らしには向かない国なのだろうなとなんとなく思う。家は広くて高すぎるし、スーパーの食材を腐らせずに一人で消費するのは至難の業だ。

10日ばかりの一人暮らしで私は体調を崩した。適当な食事を済ませながら、もし三人だったなら私はこの料理を作らなかっただろうななんてことをぼんやり思った。

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人と暮らすのは自分の思い通りにことが運ぶことは少なくて、時々大変だけれど、張り合いがある。頑張って料理をした日には美味しいと言って食べてくれたり、ちょっとした気遣いにうれしくなったり、みんなでテレビを見て楽しんだり。一人暮らしはとても楽しいけれど、誰かと暮らすのは日常が賑やかになるな、そんなことに気づいた短い一人暮らしだった。

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