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忍殺トリロジー感想/書籍第二部(7)『聖なるヌンチャク』(上)

◇注意◇
現行AoMシリーズからニンジャを読んだ人が、
旧三部作(トリロジー)に戻って色々読んだ感想記事です。
感想の中でAoMのお話もします。

こんばんは、望月もなかです!
一気に冷え込んできましたね。私は先週からの風邪が長引いていて大変です。このご時世、咳をしていると買い物に行くだけでも気を使うので……早く治りますように。さてさて、AoM最新話を追いかけながらの並行トリロジー、第2部の4巻目です!

前回感想はこちら

◇◇◇

今回読んだのはこちらです。

ニンジャスレイヤー第2部 ♯4/聖なるヌンチャク

ダークニンジャとニンジャスレイヤー。フジオ・カタクラとフジキド・ケンジ。性格も生い立ちもまるで異なる二人の男は、戦う理由だけが、どこか似ていた……。己からすべてを奪った「ニンジャ」を滅ぼす。煮えたぎる怒りを胸に、二人の男は各々のイクサを続ける。

【カース・オブ・エンシェント・カンジ・オア…】

青年フジオ・カタクラがいかにして妖刀ベッピンを手にし、ダークニンジャと名乗り、ソウカイヤの懐刀となるに至ったのか……その謎を解くにはまず、彼の背に生まれつき刻まれた「呪い漢字」について語らねばならない。

 ネオサイタマ繁華街。猥雑なLEDカンバンに映し出されたオイランと漢字が、重金属酸性雨に頬を撫でられる夜。

冒頭から文章が上手すぎる。極上。良い文章は健康にいい(……としっとりした風景描写を堪能していたら突然「オスモウギャング団」というフレーズが入り心がビシッとひび割れる音がしました)(オスモウギャング団とは……)

「奴らは恐らく、古代ニンジャ文明の秘密を守るカルト教団!(略)」

………。

いやあの……何を言ってるんですか?

このエジプト人の中に築かれた世界史観が、真の歴史、すなわち古代ニンジャ文明の痕跡によって破壊されようとしているのだ。

何を言ってるんですか???

それらの座像の頭は全て、ニンジャ頭巾を被っているのだ!
「これは間違いなく、エジプト文明がニンジャ支配下にあった証拠! やはり全てはニンジャだったか!

…………。

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そんなわけがあるか高校 校歌斉唱

そんなわけがあるか
そんなわけがあるか
全てがニンジャなわけがない
言い切ればいいってもんじゃない

そんなわけがあるか
そんなわけがあるか
真の歴史など存在しない
限度ってものがあるんじゃい

エジプトに謝りなさい エジプトに謝りなさい
あゝ そんなわけがあるか高校

真の歴史なわけ……ありませんが……ニンジャ頭巾なんか被ってるわけがありませんが……。フジオのあざとい眼鏡姿とベッピンの謎が気になるから読み進めるが……だからってヌンジャのことも真の歴史も信じたわけじゃないんですからね! 私は騙されたりしないんですから!!

その二年後。クリスマス・イブ。(略)首からアミュレットを下げた小学生のフジオ・カタクラは、両親と共にネオカブキチョ近くの回転スシ・レストランに来ていた。

フジオといいフジキドといい、クリスマス・イブにやけにイベントを重ねてきますよね。何か因縁でもあるんでしょうか、真の歴史ではニンジャが何かアレした日とかだったりする?(真の歴史なんて存在していませんが?)

ところで「ニンジャスレイヤー」という小説作品において、地の文は完全なる公正中立神視点ではなく、ニンジャスレイヤー応援団になったり盛り上げ役になったりしてくれる読者の隣人であることは異論を待たないと思いますが、地の文=サンに自我があると仮定した場合、明らかにフジオに劣情を抱いていると思うんですが先輩ヘッズの皆様におかれましてはその辺りいかがですか?

このあたりとか……

フジオに解るのは、ホソダが欲望にまみれた醜い表情で食って掛かって来た事だけだ。
ホソダは怒り狂ったイノシシのように激昂し、真っ赤な顔でフジオの胸倉を掴んだ。そして逞しい両腕で突然、彼のワイシャツを引き裂く!「社長、何を!?」抵抗するフジオ。だが腕力では敵わない。

逞しい両腕て……。

うつ伏せで床に押し倒されるフジオ!
「もはや言い逃れできんぞ!(略)」ホソダ社長はフジオの腰を冒険ブーツで踏みつけ、動きを封じながら叫ぶ! 「社長! 何を言っているんですか!?」体をひねり抵抗するフジオ!(略)「早く俺を満足させろ!」

明らかにフジオまわりの描写だけねちっこさが……スゴイ……言い知れぬ熱量がある…(ちょっと引いてる)。

ベッピンを造った刀鍛冶(サンダーフォージ/カジヤ・ニンジャ)との睨み合いに競り勝ち、折れた刀を鍛え直してもらうフジオ。

ニンジャに限らず、カラテや将棋のタツジンは、(略)実際に拳や駒を交えることなく、正座して睨み合うだけで決着をつける事があるという。

『龍と苺』みたいなこと言ってる。

戦闘民族苺ちゃん、かなりマスラダくんめいたぶっ飛び方をしている主人公なのでAoM勢におすすめ。面白くて好きです!

閑話休題。

ダークニンジャは大きく息を吐き、口角に鋭い笑みを刻んだ。その頭髪はじっとりと汗に濡れ、足元のタタミに滴っていた。

やっぱりなんか……視線の湿度が高……

なんでもないです。君子危うきに近寄らずです。というわけであの時代を生きた者の口から語られるカツ・ワンソーvsハトリ・ニンジャの神話的イクサとその後の顛末。

この神話、【ザヴとシルバーキーの偉大なる冒険】と決定的なところが違っていて気になります。ザヴキー本文でも指摘されてますがどういうことなんでしょうね。

ハトリとベッピンは親子でなく同一人物、なんて可能性もあったりする?

「元を正せば貴様がおれの呪いの発端なのだ! 色恋だと!? 反省だと!? 解放だと!? ふざけるな! 三度呪われろ!!」

フジオ、キレる。

まぁ龍殺しの英雄はともかく己に宿ったものがフンババだったなんてやってられないよね……かわいそう。末代まで呪われた英雄にツチノコの魂って最悪な胡乱キメラじゃん。

AoMの「ダークニンジャがカツ・ワンソーを滅ぼそうとしている」という記述に、カツ・ワンソーって確かずっと昔に死んだニンジャでしょ?なんで今さら?使命感?……と首を傾げていたのですが、ようやく理由がわかって納得しました。確かにこれは人生呪いたくなってもしかたがない。頑張って打倒カツ・ワンソーしてほしいです。いやでも実際、ニンジャの祖を倒しちゃったらこの世界はどうなるんでしょう? 黄金立方体はカツ・ワンソー以前からあったものなのか、カツ・ワンソーによって創られたものなのか。黄金立方体はオヒガンにただ「浮いてる」だけなのか、黄金立方体がオヒガンそのものなのか……。うーん。キンカク、謎が多い。

◇◇

【システム・オブ・ハバツ・ストラグル】

イグゾーションの死に伴い、ザイバツの組織勢力図は激変した。イグゾーション派閥だったデトネイターは引き抜きの声がかからぬ現実に焦り、出世に繋がる派閥を求めて足掻くのだが……。

「あの女々しい双子めは、真っ先に引き抜かれたというのに!」

双子! たまにTLでお見掛けするあの人たちでしょうか。2部から登場なんですね。

女ニンジャの名はストーカー、彼女らの主な任務は経済操作、情報隠蔽、電脳攻撃への備え……

この人も知ってる! ストーカー女史、ザイバツのニンジャさんだったんですね!

「ならば電算機室に来るか?」「いえ……ハイ・テックには疎いもので」「未経験でも問題ない。ガイオンの秩序を守るため、電算機室はいつでも志願者を歓迎する。望むならば生体LAN端子埋め込み手術の手配も…」

やけに待遇が良いのに不思議と求人情報誌に毎号掲載され続ける謎求人を彷彿とさせる誘い文句だ。ブラックの気配が濃厚に漂っていますよ。こわい。

「いずれはイグゾーション=サンのように絶大な権力を手にし、安全に甘い汁を吸うのだ!」

清々しい。心が洗われる。欲望に正直でいいと思いますw

「気にするな。ひさびさに話せただけでも得難い収穫であった。(略)季節が移ろい、気が変わったならば、声をかけてくれ。とはいえ、お前ほどの男ならば、その頃にはどこかの派閥に属しているだろうが……」

待って!!!

突然バンダースナッチルートが始まったので動揺を隠せない!!

「待て……バンダースナッチ=サン」

A. 初心に返って二人でジャーナリストを殺しに行く
B. バンダースナッチを利用する

選択肢が見えた。これは……Aだよ!!

(デトネイターがBを選んだので赤黒バッドエンドになった)(終)(でもこのバッドエンド、デトネイターさんの神戦闘スチルが回収できるからこれはこれで好きなんですよね)(現実逃避を止めろ!!!)

「イグゾーション=サンの派閥で胡坐をかくうちに、奴はギルドの大いなる利益とカラテを忘れ、保身ばかりに心を砕くようになっておりましたが故」

だから罠に嵌めて殺したの!? お前はもうおれが好きだったお前じゃないから?!(口に手を当ててお嬢様風に起立!!!)

やはりバンダースナッチEDを見るためにはセーブポイントまで戻って一狩り行かねばなりません。今や保身に汲々とするかつての友、デトネイターを今宵限りで見限るために連れ出したバンダースナッチ。だが鍛錬を怠っていたとはいえ、鍛え上げれられたカトン・カラテはかつての輝きそのままで……バンダースナッチのニューロンには微かな迷いが……だが脳裏にスローハンドの声が響いてこの話ここでやめようか!!!

◇◇

【ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション】

マルノウチ・スゴイタカイビルの地下深くへ向かうエレベータ。発信機が外れ、今度は俺の番だと張り切るシルバーキーであったが、ニンジャスレイヤーは己の事情に第三者を巻きこむことを躊躇っていた。一方その頃ビル外では、ニンジャスレイヤー捜索を口実にマルノウチ侵攻したザイバツの軍勢と、アマクダリ・セクトが激突寸前であった!

「大丈夫なのか」ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「大丈夫だ!ナンシー=サンには傷ひとつつけちゃいねえから」「それもあるが、オヌシがだ

ほぁ

「何故オヌシは私に力を貸す?」「いきなり何だよ!」シルバーキーは両手をひろげた。「ビジネス!」「……」ニンジャスレイヤーは無言だ。納得していないのだ。

「信用してくれねぇかな……」「信用はしている」

OH……。

ふ、ふじきどさん。どうしちゃったんですか。あ、あまりの変化に心がついていけなくて手がウロウロしている。フジキドさんが、ニンジャを危険に巻き込みたくない一心で相手の行動に難癖をつけ始めているぞ。どうなってしまったんだ。

実際、シルバーキー氏は俺の命を助けてくれたら俺があンたに力を貸す!っていう取引でニンジャスレイヤーの手を取ったわけですから、そんなに変なことは言ってないんですよね。いくらナラクが危険だとしても、当初の約束を律儀に果たそうとしているだけです。だからこそフジキドさんが心配して納得いかない顔をしているのが、らしくなくてびっくりします。

これ、発信機を摘出した時点でシルバーキー氏がケツまくって逃げたりしていれば、フジキドさんもある意味安心できたんじゃないかなと思うんですよ。ニンジャは所詮どこまでいってもニンジャ、邪悪で信用に値しない。ニンジャ殺すべし。……とこれまで通りの己でいられたんだと思うんです。

でも、シルバーキー氏は逃げなかった。
それどころか「ビジネス」とは関係のない大切な相棒ナンシーさんのことまで何か助けになれないかと手を差し伸べてくれた。シルバーキー氏は、ただ誰かを見捨ててあとからもやもやする自分が嫌で、俺に出来る事ならやってみるぜ、と当り前の感覚で手を差し出したのでしょう。だから、フジキドさんは戸惑ったんじゃないでしょうか。

フジキドさんにとって、危険を顧みず己を助けてくれたニンジャはこれまでゲンドーソー先生、たったひとりです。彼はナラクの怨念を抑えるほど強く、尊敬に値するカラテの使い手でした。

けれどシルバーキー氏は違う。カラテはからきし、戦う動機も特にない、己がニンジャだということすら気づいたばかりの素人です。でも彼こそが、フジキドがかつてゲンドーソー先生にそうしろといわれて実践できなかった「日々を堅実に生きる」生活を、四年間も続けていた男なのですよね……。

ナラク不在の無力感と復讐心に囚われるあまり、気がつけば、師の教えを体現していた無害な男を地獄に引き込もうとしている己の罪深さに……フジキドさん……気がついてしまったのでは!? 

あまりにフジキドさんが珍しい挙動をしているのでグルグル考え込んでしまいました。すごい。

「ナラクよ!」フジキドは叫んだ。「この後どうする! 道を示せ!」

おお~~~! AoMのシトカ編でマスラダくんに強制上映された匂わせメモリーのシーンじゃありませんか! 記憶としてザッピングで見ただけのシーンがちゃんと見られると嬉しいです!!

「は」ワイルドハントは緊張に乾いた唇を舐めた。チャが飲みたいが、あるじが手を付けぬ限りは当然許されない。

ワイルドハントさん可哀想になってきました。有給取って静岡の温泉あたりで憩ってほしい。

槍頭には「ツラナイテタオス」というルーンカタナの刻印。なんとも曰くありげな古武器である。

ほわー?!

AoMで出てきた……アレですよね!? 既出武器だったんですか! 知らなかった! 

アマクダリのフューネラルさんとブラックウィドウさん、すごく印象的なデザイン&個性のニンジャだったのにあっという間にやられてしまったので残念です。もっと見たかったな。

 闇の中に小さな星のように浮かび上がる赤い輝きが見える。ニンジャスレイヤーだ。シルバーキーは片手でアイサツした。「へへッ、それじゃ、ちょいといじって来るぜ」

そういうところだぞシルバーキー氏……ほんとさぁ……

「ちょっとそこまで」で、どんどん戻れないところまで行きそうなところ、ナンシーさんやフジキドさんとはまた違った意味での危うさがあり心配。(逆にAoMのタキさん&コトブキちゃんって、ニンジャスレイヤーのお供としては驚くほど地に足がついてるなぁと思ったりする)

魂のかたちを変えて、ナラクの一部として、これまでずっとずっとフジキドとともにあったフユコとトチノキ。こんなのフジキドさんじゃなくても泣いてしまいますよ。ナラクちゃんの「かわって話をしてやれるとでも思うたか。手前勝手な夢など見るでない」の物言いになんともいえない一かけらの優しみを感じました。そこで甘言を弄して肉体を乗っ取り、後戻りできない状態にしてから嘘だと明かすこともできたでしょうにね。

からの「試してみればわからぬ!儂によこせ」ムーブには笑ってしまいました。元気だね!

ダークドメインさん底知れない強さがこけおどしじゃなく、ものすごい強敵で手強かったです。アンタイ・ウェポン/ムシアナ・ジツって、AoMのS1第3話でメイレインくんが使ってたやつですよね? 使いこなすとこんなに恐ろしいんですか。

今この時、ニンジャスレイヤー、そしてナラク・ニンジャの意志力は、瞬間的にかつて無きほどの高次トモエ相乗カラテ内燃機関と化していた。

こ、高次? 高次トモエ? 内燃? カラテがないねん??(盛り上がる戦闘中にとつぜんサブリミナルのように謎単語をぶつけられて困惑した)

は~~……完全復活ナラクちゃんとヌンチャクの力でついにダークドメインさんを撃破。ダークドメインさん、強かったですね……。そしてメイレインくん、サツガイ・ギフトをぜんぜん使いこなせていなかったんだなということがよくわかりました。合掌。

シルバーキー氏が帰ってこないまま話が進んでしまいました。えっ……どうなっちゃったんでしょうか。じゃあ、また明日な!みたいに軽く手を振って、二度と降りてこられない階段を上っていっちゃったってこと? 


◇◇

今回はいったんここで区切ります。
明日か明後日か、また後半の感想でお会いいたしましょう。

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次の感想はこちら。

【感想目次】


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