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ピザNTR事件でタキはなにを失ったのか?+おまけ(4)

まあ失ったのはマスラダくんのピザ処女なんですけど(ピザ処女ってなに?)、それでは話が終わってしまうので。

改めましてこんばんは、望月もなかです。
ニンジャスレイヤーAoM感想~余談&おまけの休憩回です。(有料部分は、おまけの手書き感想ノート画像です。)ピザNTR談義は全文読めますので、息抜きにどうぞ。

もっとマトモなことを書こうと思っていた時期が私にもありました。ですが読み返せば読み返すほどピザNTRの強力さに抗えなくなってきたので今回は我々はシトカピザNTR事件」のなにをもって「NTR」だと感じてしまうのか!?という疑問の考察記事です。


「シトカ/ピザNTR事件」

問題のエピソードはこちらです。

「ガガピー」柱の横の深海潜水服じみたUNIXロボが起動音を響かせ、震動し、手がハサミになった腕を上下させた。頭部ブラウン管モニタが砂嵐を映した。 14
「ガガピー……ザリザリ……オイ、なんだそりゃ?ピザか?」モニタには薄汚い金髪の男の顔が表示された。タキだ。ネオサイタマからのIRC接続が確立された。「ピザを食うのか?」ロボットは卓に近づいた。マスラダはピザを大きく取り、無言で齧りついた。食べながら、さらに大きく取った。 15

<タキと映像通信がつながった直後>
<マスラダはタキの眼前で見せつけるように手作りピザを貪る>

◆◇

画像1

<< 有 罪 >>

◇◆

さて、このシーン。

冷静になってみると、「NTR」って思ってしまったことがわりと不思議なんですよね。現象としてはマスラダくんが美味しそうな手作りピザを礼儀正しく食べただけなのです。確かにタキさんはかわいそうでしたが、べつにマスラダくんは「ネオサイタマに帰ったらおまえのピザを一番に食べる。だから待っていろ」などと約束していたわけでもない。

ですが……。ふと当時の実況ログを読んでみたところ、「寝取られ」「食ったのか……俺以外のヤツのピザを」「ピザNTR」等々、NTR文脈で語るツイートを複数、観測したのです。なるほど……。つまりこのシーンを読んで、「NTR」の波動を感じたのは私だけではないのです。

(該当実況部分はこのあたりですね)

いやでもタキとマスラダはピザ独占契約(?)を結んでいないので、マスラダがどこでピザを食べようが自由なはず。ぶっちゃけNTR文脈とは違うのでは? という疑問は消えません。だがしかし魂が「NTRだーーッ!」と条件反射で叫んだのも確か。では、なぜあの出来事からヘッズ間にそんな共通認識が生まれてしまったのか? タキが奪われたものとはなんだったのでしょうか。(ゲンドウポーズ)

ピザのもたらす不思議な心理に潜っていこうと思います。


寝取り、寝取られ、食い、食われ


そもそも「NTR」とはなにか。

いわゆる「寝取られ(NETORARE)/寝取り(NETORI)」をローマ字で書いたときの頭文字をとった、隠語やスラングのようなものです。主に成人向け創作の一ジャンルとして知られている概念ですね。
恋人・夫婦・パートナーなどの特別な(暗黙の了解として性行為を伴う)関係性にあるふたりのうち、一方が(しばしば女性が)、外部の第三者によって性行為の主導権を握られてしまうシチュエーションのことです。

必然的に登場人物が多くなるため、展開も性癖も細分化されやすいジャンルです。奪われた男のアクションひとつとっても、
(1)あえて目の前で現実を見せつけられ愕然とするパターン
(2)起こったことを最後まで知らないままのパターン
(3)奪われることに興奮するタイプの男が積極的にパートナーに行為をお願いしていたパターン(寝取らせ)など、枚挙にいとまがありません。

いわゆる「浮気」ともまた違うジャンルなんですよね~。現象としては同じはずなんですが……理由を私なりに考えてみると、「ある男の所有物」を「より強い雄が奪っていく」という、支配/被支配、雄としての弱肉強食や騙し合いといった要素を描いているかどうか、かなと。

さてさて。
こうして狭義のNTRの定義に立ち返ってみると、やっぱりピザ食べたのは特にNTRじゃなくない?ってことになっちゃいます。

でも私は、魂の叫びを信じたいのです。

で、あれば。
上述の定義はあくまで一般論であり、NTRの本質をついていないのかもしれない。


奪われたのは心ではない


そこで、私なりに考えてみました。
どんなときにNTRの波動を感じるのかということを!

以下、NTRの基本手順を解説していきますね。
ポイントは、「関係性」と「行為」の切り離しです。

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1.甲と乙は、お互いに特別な関係<A>だと思っている。
 (Aには「恋人」「相棒」などの関係性名称が入ります)

2.<A>という関係に付随する<B>という行為が存在する。
 (例:「恋人」ならキス、「相棒」なら秘密の手信号などetc)
 (例1:少女エリナは、少年ジョジョと甘酸っぱい関係であった)

3. 乙は、丙(第三者)と行為<B>をしてしまう。
 (例1:エリナは、ジョジョの同居人ディオに唇を奪われてしまう)
 (例2:マスラダは、タキ以外の店でコトブキとピザを食べる)

4.3のあとも、乙が甲を「特別」と思っている気持ちまではなくならない。よって、乙は<A>の関係を直ちに解消したいとは思わない。
 (例1:エリナはディオにキスされたが、それでもジョジョが好きだ)
 (例2:マスラダはこれからもタキに情報を調べてほしい)

5.甲にとっては、<B>は乙との間でしかやらない行為であった。以前のふたりには戻れない。だが、乙への気持ちは残っているため苦しい。
 (例1:ディオ……君がッ泣くまで殴るのをやめないッ!!)
 (例2:呆然とするタキ。が、オレに免じてマスラダを許せとかいう)

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図にしてみました。

画像2


【注】
大事なのは4です!
 最初に奪われたのは行為(B)であり、相手への気持ち(A)ではないのです。
・Bがどんな行為であるのかは重要ではありません。
 甲か乙の両方、またはどちらか片方が「Aという関係だからBする」と思っている事実が重要になってきます。
・行為Bを丙と繰り返すうちに、乙の気持ちが丙に移動してしまい、関係性Aまでもが崩壊するという結末もありです。しかし、結末にバリエーションがあることから、Aの崩壊は「NTR」の必須条件ではないと考えます。

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なんかだんだん(私なんでこんなこと書いているんだ? ニンジャを読んでいたんですよね?)って冷静になりかけているんですけど、もうここまで書いちゃったので勢いで最後まで書きますね!!!

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つまりですね、NTRの前に、まず甲乙間の関係性が確立されていなければいけない。これが前提条件になるんですよ。

何らかの形で、お互いを特別に思っているふたり。
他の人たちと違う関係性を紡いでいるふたり。
そのことに対して両者が無自覚でもいいから共通認識を持っている。

◆◇

今回の「シトカピザNTR事件」についてもそうです。

たとえばこの事件がシーズン1中盤で起きていたらどうでしょう。マスラダが、デジ・プラーグでコトブキとピザを食べて。タキがそれを知ったところで、はたしてこんな空気になったか?という事です。

シーズン1のラストで、通信が途絶したマスラダ達にタキは狼狽しました。ファミリーCMに打ちのめされ、何度も通信を試みて、ありとあらゆる手段を用いて情報を集め、マスラダとコトブキを探そうとします。
タキにとって、マスラダ・コトブキが家族同然の存在になっていたことがタキ自身にも、読者にも示されたのが、第1シーズンのラストだったのです。

また、シーズン2第1話「コールド・ワールド」にて、マスラダのローカルコトダマ空間がピザタキであることが明かされました。畳みかけるように、「ポッシブル・ドミネイション」ではタキのピンチにマスラダが大混乱。必死に助けようとするさまに望月もなかさんは顔を覆って崩れ落ちました。

……とまあ、シーズン1終盤~シーズン2序盤にかけて、タキとマスラダがお互いを特別に思っていることは充分に描かれたわけです。その上で一緒にドンパチを生き延び、ピザタキの絆はまた強くなりました。

そして。
別離と再会を乗り越えて、満を持しての「カウンシル・フジミ」だったからこそ、マスラダがピザを食べた行為が事件性を持ったんですよ!!

タキはマスラダとコトブキを家族同然だと思っている。素直じゃないので認めたがらないかもしれませんが、どうしたってそうです。そして、タキが汗水たらして手に入れた「我が家」=「ピザ屋」なんですよ。だから、自分のうちじゃないところで、コトブキとマスラダが和気あいあいとアットホームにピザを食べはじめたらショックなんです。

タキは、

家族の食卓を奪われたんですよ!

だからってお前にはもうピザなんか出してやらねえ!とは言えない。だって自らピザを焼いて出したことはないからね……。タキだって本心ではわかっているはずなのです、マスラダがタキに求めるのは別に「家族の食卓」じゃないってことくらい……でもタキは求めちゃうんですよね、はぁ擦れ違いはビスマルクピザよりおいしいね。

いっぽう、マスラダもピザタキをホームだと思っています。これはローカルコトダマ空間は正直なのでマスラダがなんと言おうと赤裸々にそうです。ですがおそらく、マスラダにとってはピザを食べるとか食べないとかは重要じゃない。タキが呼んだら答えてくれる、その安心感の方がきっとずっと大事なのです。というかあんなにおいしそうに手作りごはん食べたのだってタキが来てからじゃないですか? タキが来たからおいしそうに食べてたんじゃないんですか? そこんとこどうなんですかマスラダくん?
タキはうるせーバカクソイディオット云々と言いながらもマスラダが頼れば必ず応えてくれようとします。できるできないはあっても、返事をしてくれる。

マスラダとタキは、お互いに相手を特別だと考えていますが(関係性<A>の成立)、それに付随する行為(<B>)がなにか?との認識にはちょっぴり齟齬があるのでしょう。ふたりの関係には名前がないので、それがむしろ当たり前なのです。

でも確かにマスラダがコトブキちゃんと和気あいあいピザを食べた瞬間、タキが奪われたと感じた「なにか」は存在していました。

結論:だからNTRで合ってる。

以上! お付き合いありがとうございました!!!


おまけ《手書き感想ノート:第4弾》

さて。当記事のもう一つの目的です!
「おまけ/手書き感想ノートまとめ(第4回)」。

私の「ニンジャスレイヤー」感想記事は、読みながらノートにとった感想メモを取捨選択してまとめたものです。その手書きノートのバックアップ画像です。

基本的な内容はほとんどnoteの記事と同じです。差分として、読みやすさを優先してnoteには書かなかった細々としたツッコミやお絵描きがあったりします。

◆こんな感じの画像です(2枚ほど抜粋)◆

画像3

こういうのが、合計49枚あります。多い。

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過去の手書きノートまとめはこちらです。

手書き感想ノート・スズメバチの黄色
手書き感想ノートまとめ・1

 「AoM予告編」~「ストーム・イナ・ユノミ」
手書き感想ノートまとめ・2
 「ダメージド・グッズ」~「オラクル・オブ・マッポーカリプス」
手書き感想ノートまとめ・3
 「フラワーズ・フロム・フロスト」~「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」

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画像があまりにも多い&制限なしに生原稿を晒すのは少し恥ずかしいため、ここから先は「おまけ」ゾーンです。

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