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サッカーは過密日程に体力を削られても続いてゆく人生の物語だから

ずいぶん御無沙汰しておりました。

新型コロナウイルス禍による中断の影響で、今季を成立させるために、再開後は前代未聞の過密日程をこなしてきたJリーグ。ピッチで戦う人たちも試合を運営する人たちもそれを取材するわれわれも、真夏の7連戦とか8連戦とか、多いクラブでは十数連戦とかを、必死で乗り越えてきました。わたしはアウェイも含め全試合を現地で取材しているのですが、もう、日々こんな感じ。

でもおかげさまで、無観客開催だったリーグ再開当初から段階的に入場制限や応援スタイル制限が緩和されていくスタジアムの空気感を、自らの肌で感じることが出来ました。しんどかったけど貴重な経験だったと思います。

ようやく連戦のペースが少し落ち着いた頃から、気温低下の影響なのでしょうか、再び感染者増加傾向に。柏レイソルでクラスター発生のためルヴァンカップ決勝が開催延期となり、リーグ戦直近のわれわれとの試合もとりあえず中止となりました。リーグ成立条件は先日達成しているので今季はこのまま試合数が減る可能性もあります。

チームは夏場には5連敗という苦しい時期もありましたが、対症療法を施しながらも初志貫徹な感じで戦術浸透を進めて、徐々に成熟してきました。9月には中2日でのアウェイ連戦というハードな日程を強いられ、でもそのベガルタ仙台戦とFC東京戦で、片野坂知宏監督体制ではJ1初の3得点2連発で連勝するというセンセーショナルな展開もあったり。その後はまた勝てなくなったりもしながら、10月からは戦術のマイナーチェンジを経て試合内容が目に見えてよくなっています。

直近の第26節・横浜FC戦のレポートがこちら。

もう、この試合がハンパなく面白かった。片野坂監督と高校時代からのライバルで現役時代は柏でチームメイトだった時期もあり昨季はともにJ1とJ2の優秀監督賞に輝いた下平隆宏監督との知将対決は、最初から最後まで立ち位置や選手交代の駆け引きを繰り返すというロジカルな展開。そこに選手たちひとりひとりのドラマが絡み、素晴らしいエンターテイメントとなりました。わたしは、ひとつの試合はひとつの物語だと思っています。だからマッチレポートは出来ることなら、小説を書くように書きたい。そのためにはひとつひとつのプレーや采配の真髄に迫る取材をしなくてはなりません。

試合会場のニッパツ三ツ沢球技場、横浜FCさんの試合は机も電源もない記者席で、これもコロナ禍の影響。この日は夕刻のキックオフ直前から急激に冷え込んだためパソコンの電源が見る見る消耗し、タブレットやらスマホやらモバイルバッテリーやら総動員で試合後の記者会見に臨んだのですが、それでも電源落ち事案が散見され、隣席の記者さんと画面を貸し借りしながら仕事をこなすというアクロバティックな技も駆使(笑)。そういえばJ3で戦った2016年も、過酷な取材環境だったなーと懐かしく思い出しました。

そんなふうに日々を乗り越えながら、7月末に、サッカー本4冊目となる拙著『カタノサッカークロニクル 片野坂知宏の挑戦』が、内外出版社より発売されました。本当はもっと早く告知しなくちゃならなかったのだけど過密日程で体力を削られてnote全然書けなかった。多方面にごめんなさいです。

今作は、前作『救世主監督 片野坂知宏』に続くカタさん本の第2弾。前作が主に2018年の軌跡をストーリー的に追ったのとは異なり、こちらはカタさんの監督就任から昨季に至るまでの4シーズンを俯瞰して、戦術や組織マネジメントなどテーマごとに「カタノサッカー」を読み解く構成。まさに2016年から全試合を現地で取材してきた積み重ねの結晶であります。

本当は、前作の『救世主監督』の続きが読みたいというお声をたくさんいただいたので、それこそ『救世主監督2』くらいの続編を書くつもりでいたんですよね。もとより『救世主監督』は「サッカー漫画を読むように読んでもらえるものを」と意図して書いた本だったので、御好評をいただけば2巻を書くのも自然といえば自然な流れ。ですが、いろんな大人の事情で、紆余曲折の末に今回のかたちになりました。エンターテイメント性は前作ほどはないと思いますが、資料的な読みものとしては充実した本になったはず。

それもこれも、勝っても負けても、どんな試合の後でも、そして日々の練習の合間を縫っても、カタさんやコーチや選手たちが丁寧に取材に応じてくださったからこそ。今季のコロナ禍によるイレギュラーな状況でも快く対応していただいており、チームにもクラブにも、あらためて御礼申しあげます。

そして、業界の大先輩である宇都宮徹壱さんが、書評を書いてくださいました。宇都宮さんありがとうございます。

『カタノサッカークロニクル』に収録した地点から、カタノサッカーはさらに進化しています。今季はコロナ禍の影響下での変化もあり、目の前の状況に対応しながらゲームモデルを貫いていく様子には、目を見張るばかり。そのコーチ陣と選手たちの苦悩とかジレンマとか突き抜けた感とか、いろんなドラマを取材した成果は、都度、大分トリニータ公式情報メディア『トリテン』で公開していますのでそちらで。

この特殊なシーズンのことを一冊にまとめる日は、来るかもしれないし来ないかもしれないけれど、残り少ない今季のラストまで、これまでと同じテンションで取材し続けるつもりです。

そして来季は、どうかコロナ禍の影響少なく、リーグが無事に開催されますように。

シーズン終盤はいろんな思いが胸をよぎる時期。さみしさが忍び寄ってくるようなら是非『救世主監督』を。カタさんの哲学により深く踏み込みたいなら『カタノサッカークロニクル』を。是非お手に取ってみてください。

今回は電子書籍版も早めに出ています。コロナ禍によるニューノーマル対応が時代の変化を加速させてる感、なきにしもあらず。

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