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【SPAC上場したToC企業リサーチ】第二弾!ソーシャルレンディングサービス「SoFi」

前回のVirgin Galacticに続いて、SPACで上場したToC企業シリーズ第二弾ということで、今回は今年1月に上場を遂げた「SoFi」について調べてみました。
*Source:https://j-seeds.jp/column/post-488

前回の記事はこちら!!

■企業概要

企業名:SoFi
サービス名:学生ローンサービスを発祥としたソーシャルレンディングサービス
SNS: Twitter / 📸 Instagram / Facebook
創業年:2011年8月1日
創業者:現CEO Anthony Noto
    前CEO Mike Cagney
本拠地:​​San Francisco, California, United States
累計資金調達額:$3B
従業員数:1000~5000名
上場:2021年6月1日 ニューヨーク証券取引所(NASDAQ)


■サービスの特徴

SoFiと言う会社は、主に個人間のお金の貸し借りを仲介するプラットフォームを提供している会社になります。
主には、学生向けに奨学金を「ソーシャルレンディング」と言う手法を用いて、貸し借りの仲介を行っています。

ソーシャルレンディングとは、クラウドファンディングの一種で、お金を「投資したい人(個人投資家など)」と「借りたい人(SoFiの場合は学生)」を結びつけるサービスです。

P2Pレンディングや貸付型クラウドファンディングなどとも呼ばれます。

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SBI証券などでも使われていたりします。

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クラウドファンディングの中でも、貸付型・融資型などに用いられていたりなどもしている割とメジャーな手法です。

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参考:クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違い

学生にとっては、既存の銀行のローンよりも低い金利で奨学金などの教育資金が借りられるのと同時に、資金提供者にとっては、普通預金よりも良い利率で、しかも貸し倒れの件数も少ないという利点があります。

なので双方にとって大きなメリットを持つシステムと言えます。

また、貸し付けの対象者を「HENRYs (high earners, not rich yet)」と言われる、貸付時点では資産は少ないものの将来的には高年収を得る可能性が高い、比較的学歴の高い大学生を借り手のターゲットとすることで、他の消費者金融などと比較すると圧倒的に貸し倒れなどを起こす率は低いです。

加えて、貸し手と借り手の看過形成を同校の先輩・後輩という関係性で創り上げているため比較的に出資しやすく、借り手も返金へのモチベーションが下がることはないでしょう。

そして、現在米国で社会問題になっている学生ローン問題の解決にも大きく寄与しているといえます。

>米国では、学生ローンが社会問題化しており、Student Loan Heroの調査では、2018年に大学を卒業した学生は、平均して2万9800ドルのローンを抱えているとされており、学生ローンが如何に社会問題であるか伺えます。

また、提供するサービスはこの学生向けソーシャルレンディングに留まらず、様々な付随する金融商品を販売しています。

具体的には、学生ローン、住宅ローン、ETFなどの投資商品、パートナー企業と提携した生命保険や自動車保険、さらに、クレジットカード発行など、多岐にわたっている。加えて、節約や運用を容易にするため、家計管理アプリも提供しています。

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今現在は、かなり他種のサービスを展開しているSoFiですが、初期は学生ローンの借り換えというビジネスモデルを主軸に成長を遂げてきました。

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2011年に創業し、スタンフォードの学生らと学生ローンの初期の構想(卒業生が学生に投資し、ローンコストを削減する方法)を練ります。
その後、2012年にスタンフォード大学は構想段階のSoFiプログラムを認めその構想を実行しました。その結果、40人の卒業生から200万ドルをシードし、100人の大学院ビジネス学生に支払うことができました。

この成功事例をもとにSoFiは爆速的に、その勢いをまして行きました。そしてローンチから四年後にはSoFiを通じて発行されたローンの金額が、凡そ20億ドルまで到達するほどの勢いでした。

また、2017年までに、SoFiの評価額は40億ドルを超え、200億ドルを超えるローンを提供しました。
同社はまた、住宅ローン、個人ローン、ウェルスマネジメントサービス、生命保険を含むようにサービスを拡大していきその勢いは最高潮でした。

しかし、2017年9月、創業者であるMike Cagney氏は、職場環境などでのセクハラ行為の申し立てなどの職場での論争の末、SoFiを去りました。

しかし、その後ゴールドマンサックス出身・NFLでCFOを務め、TwitterのCOO兼CFOとして活躍してきたAnthony notoを新CEOとして迎え、更なる成長のため経営体制を磐石なものとします。
また、2020年に「Galileo」というデジタル決済プラットフォーム事業を主に行っている会社を、フィンテック領域での圧倒的な消費者金融サービスのプラットフォーム構築の為買収しました。

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そして、新CEO・大型の買収を経て、2021年1月にChamath Palihapitiya氏が率いるSocial Capitalとの合併を経て、SPAC上場を成し遂げました。

こうして、SoFiは学生ローンという枠を超え、様々なサービスを提供することでSoFiが掲げている「SoFi`s Misson」を達成して、ToC向けの金融プラットフォームとしてはなくてはならない存在へと成長を遂げたことがわかります。

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■ビジネスモデル

SoFiのビジネスモデルは、提携パートナーから得られる手数料によって成り立っている。株式・ETF・暗号資産(仮想通貨)の販売、生命保険・自動車保険・住宅保険の販売が代表的です。

また、発行するクレジットカードで提携するサービスに関する支払いが行われるたびに、SoFiの収益となります。
SoFiはユーザー側から収益を得る部分はほとんどなく、口座管理費やATM利用手数料などを徴収することはなく、ローンを含めた金融商品の利用を促進し、パートナー企業から収益を獲得する仕組みとなっています。

SoFiはユーザー数および、売り上げの増加を続け、大きな成長を遂げてきました。2020年第3四半期の売り上げは2億ドル、さらに、2021年通期の売り上げは前年比60%増の10億ドルと予測されています。

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・メンバーシップ会員

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プラットフォームやレンンディングサービスを提供するだけではなく、無料のメンバーシッププログラムも行っており、ファイナンシャルプランナーからの個人資産の財務計画のサポート・会員限定のローンの割引・会員同士のオンラインコミュニティ・SoFiスタジアムへの会員限定アクセス権・キャリアアドバイザーとのコーチング・失業保護プログラムなど様々なサービスを無料で公開しています。

これらの狙いとしては、主に次のクロスセルでの売り上げを伸ばすこと・このプラットフォームへの便益を感じてもらい、HENRY層のライフステージにおける金融取引の際にSoFiのプラットフォームを中継してもらうといった意図があると考えられます。

・クロスセル戦略
上記のメンバーシッププログラム・プラットフォームの増強によって顧客のロイヤリティは向上し、結果的に3段目の住宅ローンCPAコストは2019年の6000ドルから2020年には-5000ドルの400ドルと90%以上のコスト削減を成功させています。

上記のメンバーシッププログラム・プラットフォームの増強によって顧客のロイヤリティは向上し、結果的に3段目の住宅ローンCPAコストは2019年の6000ドルから2020年には-5600ドル、90%以上のコスト削減を成功させています。

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・SoFiのこれからの戦略

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ここまで述べてわかるように現在、SoFiでは主に三つのサービスを展開しています。

❶:Lending
❷:Platform
❸:Financial Services


初めは、Lendingで事業を伸ばしていましたが、競合などの登場によりその成長は止まり、一時期はローンの利率をあげなければならないほどに追い込まれていました。しかし、その後FSサービス・Galileo買収によるプラットフォーム売り上げの上昇によって、現在のSofiの売り上げ比率は以下の通りになっています。

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圧倒的に、まだまだLendingサービスが主力で、他の二種のサービスはまだ大きな収益の柱となっていません。

しかし、2025年までにはこの比率を変え三つの事業が均等になるようなポートフォリオを目指し、二種の事業の推進を目指していくそうです。

やはり、いくらHENRY層を早くから囲んでいたとは言え、Lending事業における競合の台頭は強くここでこの右側のポートフォリオを描けるかどうかが今後のSoFIの成長の鍵であると考えられます。

■創業者

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Anthony Noto

SoFiに入社する前は、2016年11月からTwitterの最高執行責任者を務め、2014年7月に入社したときは最高財務責任者を務めていました。
そしてTwitterの前は、1999年にゴールドマンサックスに入社しており、2004年にパートナーに指名され、コミュニケーションメディアとインターネットエクイティリサーチの責任者を務めました。
その後は、ナショナルフットボールリーグの最高財務責任者として務めてきました。
その他には、陸軍士官学校を卒業しており、ペンシルベニア大学のウォートンスクールで経営学修士号を取得しています。


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Mike Cagney

南カリフォルニアで育ち、カリフォルニア大学サンタクルーズ校で応用経済学の学位を取得しました。
1990年代、キャグニーはウェルズファーゴのトレーダーとして働いた後、2000年にブロードライドに買収されたウェルスマネジメントソフトウェア会社であるフィナプレックスを設立しました。
その後、2010年にスタンフォード大学のビジネス大学院でスローンフェローシップを取得する前に、ファミリーオフィスからの資金を管理するグローバルマクロヘッジファンドであるCabezon InvestmentGroupを設立しました。

2011年、上記の通りスタンフォードビジネススクールの4人の大学院生と共に、卒業生が学生に投資する方法を提供しながら、ローンコストを削減する方法としてSoFiを創設しました。
また2016年には、世界に価値をもたらすビジネスビジョナリートップ100のBusinessInsiderのクリエイターリストに選ばれました。
その後の2017年、性的違法行為の申し立てなどを受け、職場でのいくつかの論争の末、SoFiを去りました。
しかし、諦めきれない彼は彼の妻であるJune Ouと、2018年にフィンテックスタートアップのFigureTechnologiesを共同設立しました。


■ファイナンス

シリーズA
$4M:5社
Baseline Ventures・Innovation Endeavors・Ulu Ventures・RPM Ventures・Ron Suber
シリーズB
$77.2M:4社
DCM Ventures・Baseline Ventures・RPM Ventures・Renren
シリーズC
$80M:12社
Founders Fund・DCM Ventures・Baseline Ventures・QED Investors・Thomvest Ventures・RPM Ventures・Group 11・Renren・Wicklow Capital・Discovery Capital・General Global Capital・Paul Sims
シリーズD
$213M:7社
IVP (Institutional Venture Partners)・Wellington Management・Lakestar・RPM Ventures・SharesPost Investment Management・Third Point Ventures・Marco Rossi
シリーズE
$1B:10社
DCM Ventures・IVP (Institutional Venture Partners)・SoftBank・Baseline Ventures・Wellington Management・RPM Ventures・Third Point Ventures・Wayne Chang・Renren・Jeff Seibert
シリーズF
$500M:8社
DCM Ventures・SoftBank・Silver Lake・RPM Ventures・Third Point Ventures・Manhattan Venture Partners・Sun Hung Kai & Co・RSC Capital


・上場の経緯

前回のVirgin Galactic社と同様に、Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が運営する特別買収目的会社(SPAC)であるSocial Capital Hedosophia Holdings Corp Vとの合併を通じて上場しました。
この合併を通じて、SoFi社のバリュエーションは86億5000万ドル(約8981億円)に到達する見込みです。


・株価の推移

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上場後、安定的な株価を保っており、その経営の健全さが伺えます。


■感想

アメリカの学生ローンの問題はかなり根強い問題であったが、このSoFiというソーシャルレンディングを提供することで、今まで金銭的な制限でキャリアが制限されていた能力のある若者を救うことができるようになったのは、かなり画期的であると感じた。
また、ビジネスモデル的にTocから仲介料を取るのではなく、その他の金融関係のクロスセル商材を提供する会社から仲介料を取るシステムは、本気で学生のキャリアを救おうという姿勢が見られると思う。
その結果、このサービスを使用した学生はSoFiに対して恩や利便性を感じることから、継続的に自分のこれからのライフプランをSoFiの関連サービス(住宅ローン・保険商品・キャリア相談)に委ね、継続的にサービスを使用するロイヤリティの高い顧客を囲うことが可能となっている点を見ると、この状況は、意図してできたものか定かではないが、Salesforceなどが謳う「ステークホルダー資本主義」を体現している企業の一例なのではないだろうか。

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執筆:W ventures associate Nobuaki Komiya
簡単に以下自己紹介です。

名前:小宮暢朗
各種SNS:Twitter Facebook
立教大学4年生( 99年生まれ)
<やっていること>
W ventures associate:コンシューマー向けVC(ベンチャーキャピタル)
Co-Studio株式会社 執行役員:大企業向けの新規事業の伴走支援を行う会社(スタートアップスタジオ)


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