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<起業家 X VC対談> シリーズAからの流通額の成長109倍! ヘルスケアスタートアップ「トリビュー」のシリーズA・B調達の裏側とWfundパートナー 東との歩み

市場の拡大が続いている美容医療市場。一口に美容医療といっても、施術内容は様々なこの市場では、群雄割拠の様相を呈しています。そんな激戦市場において、2017年から美容医療の口コミ・予約アプリ『トリビュー』を提供しているのが株式会社トリビュー。W inc.(以下、W)は、トリビューのシリーズAから支援を開始し、その飛躍を支えています。そこで、今回は株式会社トリビュー 代表取締役 毛 迪(モウ デイ)氏とW inc. 代表パートナー 東(ひがし)との対談を実施。トリビューは「今後どこへ向かい、W inc.に何を期待するのか」、率直に語ってもらいました。

トリビュー 代表取締役社長 毛迪(もうでい)
W inc. 代表パートナー 東 明宏(ひがしあきひろ)

トリビューとW代表パートナー 東の出会い

美容医療業界に興味を持つVCがいた!

東(ひがし):最初に出会ったのは、あるエンジェル投資家からの紹介でしたよね。

毛(モウ):はい、シード時にWの新さんをご紹介していただきました。でも、投資には至らず……。その後、シリーズA調達時に「もう一回お話できませんか?」とご連絡したら、東さんのほうが興味がありそうということで、お会いしたのが最初ですね。

東:そうですね。僕はもともと美容医療業界に興味があって、伸びている業界だという肌感覚もあり、話を聞いてみたいなと思ったのが2019年でした。最初から投資に前向きでしたよね。

毛:よく覚えています。2019年当時は、美容医療に対する印象は今と比べるとネガティブだったのです。しかも、VC業界で美容医療市場にピンと来る人もあんまりいませんでした。その中で最初から東さんは、美容医療市場は伸びるよね!と興味持っていただき、スピーディーに投資を決めてくれました。

東:確かに、今ほど美容医療は盛り上がってなかったですもんね。

毛:当時はプレゼンの最初に「この市場がなぜ伸びているのか」という説明をかなり厚く入れていました。

東:そもそも美容医療の市場自体は結構大きくて、さらに若い人の中で価値観が変わって再成長というフェーズという認識があり、とても魅力的なマーケットだと思っていました。でも、美容医療の特徴として、ネガティブに捉える人も一定数いたのも事実ですよね。

毛:ええ、ネガティブに捉える方も結構いらっしゃいました。そういう人には理解をしてもらうのが難しかったです。

東:でも市場は伸びていたけれど、トリビューとしては流通がなかった。そのタイミングでの増資の狙いはどのようなものでしたか?

毛:ユーザーは一定数いるし、サービスも使われているのに売上がない。マネタイズはこれからというフェーズでの資金調達でした。事業として成り立つのかは、まだまだ未知数。でも私自身は、マネタイズはできるだろうと思っていました。だからこそ、それを実現するための採用やプロダクト作りのために資金調達をしたかったのです。

東:トリビュー的にもマネタイズはなんとかなるという気持ちだったんですね。

毛:美容クリニックは、そもそも売上の20%ぐらいを広告宣伝費に使っています。創業前から、美容医療に興味を持っているユーザーが一定いるメディアで、かつ良い口コミがあれば、クリニックはそこにお金を出して集客したいはず、というのは考えていました。実際にクリニックと商談をしていても、そこに乖離がなかったので、マネタイズができるかという不安はあまりなかったです。

東:私もそこはあまり心配はかなった。ユーザーが集まれば、しっかりマネタイズはできるはず。そこは確信がありました。

トリビューがWを選んだ理由

東:そんな中、Wと一緒にやっていこうと思った理由を聞いてもいいですか? 確か、「僕のリファレンスを取った方がいいですよ」という話をした記憶があって。前職時の投資先だったアソビューの山野さんをご紹介しましたよね。

毛:そうですね。山野さんとは、東さんについてのポジティブなお話をしてもらった記憶があります。それは、私自身がもっていた印象やイメージと相違ありませんでした。だから、安心してご一緒しようと思いました。

東:私は投資検討の過程で、投資家のレファレンスを取ることをおすすめしています。長いお付き合いになるので、嫌な奴だったら嫌じゃないですか。レファレンスを取ってもらうのは緊張するのですが、よい評価だったようで、良かったです(笑)。

東:その後、増資のオファーを受けてもらって一緒に投資する方々を集めるという作業もしましたね。

毛:東さんと一緒にプレゼンに回った記憶がありますね。「こういうことも一緒にやってくれるんだ」と思ってすごくうれしかったのを覚えています。ニッセイキャピタルの松尾さんや三菱UFJの田口さんも東さん経由でご紹介いただきましたよね。

東:松尾さんと田口さんはその後、シリーズB10億円の増資時も一緒に入っていただく形になりました。チーミングはよかったなあと振り返っています。

東:毛さんとして、シリーズA全体を振り返って、起業家にアドバイスするとしたら、どんなことがありますか?

毛:当時は、VCのリアクションに一喜一憂することが多かったなとは感じています。「ポジティブそうなリアクションだったのに急に連絡が遅いぞ」とか、「言っていることが突然、変わったぞ」みたいな(笑)。でも、今となっては「資金調達とはそういうもの」だという心構えがあればよかったなと思います。細かいことにとらわれずとも、投資に至るまでのコミュニケーションの中で、担当やVC側のスタンスは分かります。誠実に向き合ってくれるのか、投資に至らなくても連絡はしてくれるのか、コミュニケーションの過程からも投資後の向き合い方は見えますから。だから、あまり一喜一憂しないほうがいいんじゃないかなと思います(笑)。

シリーズA後の事業進捗

当初は想定通りいかなかったところからの爆発成長

東:そのシリーズAの後は、予定通り事業が伸びました?

毛:どうにか前進させた! みたいな感じに近いかもしれません。当初は、ユーザーもいるしクリニックも広告を出したいと言っているので、クリニックのページに予約ボタンを付けたら予約が入ると思っていたのです。でも全然、予約が入らなくて……。1日1件入るか、入らないかみたいな感じでしたから、もう一度UIUXを見直しました。ユーザーに口コミを見てもらうことを主としたプロダクトから、クリニックを決めてもらうことに提供価値を変えていかないといけないという課題に向き合い、そこから、流通が伸びていきました。

東:どのぐらい経ってから、伸び始めましたか?

毛:3カ月から半年くらい経ってからですね。調達したのに全然伸びなくてやばいやばいって。

東:「口コミサイトから口コミ予約サイトに変わる必要がある」という話をあるエンジェル投資家の方がおっしゃってましたよね。予約をするインセンティブをつけないと、ということになりましたよね。ここが大きな分岐になりました。

毛:トリビュー独自のポイントを導入したことと、トリビューから提案して“モニター募集”という独自メニューをクリニックに作ってもらったことで、この2つが最初の成長ドライバーになりましたね。

東:一気に伸びましたよね。

毛:季節性とか一切関係なく、毎月伸び続けるという状態でした。

シリーズA後のもう一つの課題

二人経営体制の経営からの脱却

東:投資をさせていただく時に「いいな」と思ったことと、「課題だな」と思った部分がありました。課題だなと思った部分が、毛さんと小尾さんという創業メンバーの二人三脚体制がとても強固だった点です。だからこそ、3人目、4人目とチームを拡大していくのは大変そうだなという印象を持っていました。あと毛さんもプレイヤー感がすごくありましたよね。トリビューがより強い経営チームになり、毛さんがよりプレイヤーから社長になっていく必要性を感じていました。毛さんが事業戦略だけではなく、組織戦略に手をつけていったのは、シリーズA後からですよね。

毛:そうですね。シリーズAが終わった後に、「ミッション・ビジョン・バリュー」を作り直しました。社員が20人ぐらいの時です。それまでは自分が全社員を見ている状態でした。「何のためにこの会社があるのか、何を大事にするのか、社員にどういう価値観を持ってもらいたいのか」ということを言語化して、改めて作り直しました。

東:ミッション・ビジョン・バリューを作るMTGもしましたね。毛さんは推進力があって、とにかくスピーディーに進めていける人ですが、それを周りにどう伝えていくかというのが課題になりやすい構造になっていました。とにかく小尾さんは阿吽の呼吸で、自動的に拾ってくれるけれど、小尾さんみたいな人を増やすのもなかなか難しくて、どうやって自分の考えを組織に伝えていけばいいのか色々試行錯誤しながら動いている姿が社長っぽくなってきているなと思っていました。

毛:小尾さんが奇跡的に、勝手に察してくれたので、言葉にしなくてもやれてしまったというのがありましたが、フェーズが変わってきて自分が変わることで会社、組織を変えていかなければというふうに思うようになりました。

シリーズB10億円増資の裏側

東:続いてシリーズBで10億円増資することになるので、その話に移りたいのですが、その過程で課題になったことはありましたか?

毛:タイミングは議論になりました。もう少し実績を伸ばしてからの方がいいのではないかと。でも、各方面から「できるタイミングで、できるだけ多く増資したほうがいい」とアドバイスされたことで、「それはもう、そういうことだ」とできるだけ出資を集めるという方針で動きました。結果的に市況が悪くなる前だったので、この決断は正しかったと思っています。もし先延ばしにしていたら今頃、大変だったかもしれません。

東:毛さんはタイミングを捉える力もありますよね。

毛:みんなのアドバイスを素直に聞くという(笑)。多くの人が言っていることには、きっと理由があると思っているんです。何事も一旦、素直に聞くというのは意識していますね。

とっておきのスペシャリストの紹介でトリビューの成長が加速する

東:我々との関係性で言うと、適宜チャットをしたり、ミーティングするという形ですよね。

毛:他にもさまざまな投資家がいる中で、東さんとはすごく近い間柄ですよね。「めっちゃ売上が伸びました」という嬉しい報告や相談もメッセンジャーで気軽にできるのでありがたいなと。あとは、スペシャリストのをご紹介していただくので感謝しています。証券会社選びもそうでしたが、最近だと「マーケティングで困っています」という話をすると、マーケに強い方を繋いでいただきました。

東:その会社の課題に真に合った人をマッチングさせるのが僕の見せ場だと思っています。このフェーズまでくると投資先の事業課題はめちゃめちゃ深い。僕が何かを言うよりもその課題に精通したスペシャリストを紹介することで課題解決の一助になればと思っています。あとトリビューは、紹介すると、勝手に想像以上に吸収してPDCAを回してくれる。この人を紹介すると、こういう化学反応が起きそうだなみたいなのがイメージしやすいのです。毛さんは何が課題なのか、何に悩んでいるのかが明確で、吸収力が高いので紹介しやすいんですよ。

毛:スペシャリストの皆さんは、プロダクトのアドバイスをいただくにしても、専門的な視点でフィードバックいただくので、解像度が上がっていきますね。そうすると、我々のプロダクトに対する理解が深まっていく。さまざまな方面で事業・会社成長につながりそうな人を紹介してもらえるのが東さん。人数で言うと、圧倒的に他の投資家の方に比べてスペシャリストを紹介していただいています。


今後のトリビューの成長にむけて

まだ、99%の人に価値を提供できていない!

東:採用面談も一緒にやっていますね。

毛:採用についての経験値があまりなかったので、最初は見極め方に自信がなくて、東さんに同席してもらっていたのです。採用前に面談していただいたこともありましたね。

東:ありましたね。今の課題はどの辺りですか?

毛:最近は組織体制を変えたので、私が直接、見ているメンバーはほぼいません。基本、誰かを通して見るという体制なので、一対一ではなく全社会のような全員と話す時にどういう話をするかということを考える時間が増えました。80人のメンバーを前にして、どういうメッセージを伝えるか。自分の価値観をどういう話に乗せて伝えようかということを模索しています。

東:以前はみんなと「1on1」をしていましたよね。

毛:はい(笑)。マネージャーとは、今も1on1はしていますが、今は、なるべく多くの人に会社の価値観を伝えることを意識するようになりました。

東:今後も伸びていきそうなマーケットポテンシャルは感じていますよね。

毛:マーケット自体はすごく伸びているので、トリビューがどういう価値を提供していくか、それをどう広げていくかが課題だなと思っています。流通で言うと、トリビューは市場のやっと1%ぐらい。ということは、99%の人にはまだ価値を提供できていない、知られていないということ。成長余地としてはとても大きいのです。

東:今、トリビューの事業自体がとにかく伸びていますよね。

毛:ありがとうございます! 2019年8月のシリーズAから今までの成長率は109倍です。

東:その中で抱えている課題はありますか?

毛:本気で5年後の成長を考えて、今から仕込んでいくということを実践していく経営・マネジメントレイヤーがまだ弱いことに、危機感を覚えて組織を変えました。5年後も成長し続ける事業モデルはどういうものなんだろう?という課題を考えていることに時間を使っています。そうなると、経営レイヤーもマネジメントのところでも、その大事なポジションを育成採用していくようなフェーズになっているので、今後の採用が大きな課題ですね。

VCと起業家は、離婚できない結婚をしている!?

東:最後にシリーズA、シリーズB通して、どのように投資家を選んだのか、どうだったのか聞かせてください。

毛:やっぱり人として、信頼できるかどうかを大事にしました。経営者と投資家は、“離婚できない結婚”みたいなものじゃないですか(笑)。一回、投資が入ると別れることはできないですよね。かなりの長期間、一緒に仕事をしていきますし、順調な時だけじゃない。そういう時に、どういう関係でいられるかを考えると、もちろん条件面もありますが、人として一緒にやりたいかという点が根本的に大事なのではないかと思っています。

東:“離婚できない結婚”、うまいこといいますね。投資家との付き合い方は気をつけていることはありますか?

毛:これは私の反省でもあるのですが、困っていることをもっと言ったほうがよかったな、頼ったほうがよかったなと思い返しています。最初の頃は、「順調です」と言わなきゃいけないんじゃないかという意識がありました。自分たちでどうにかしなきゃという気持ちが強くて、頼れなかった。困っている時は困っているアピールをしたほうがよかった(笑)。その方が助けてもらいやすかったでしょうね。本当に順調だったら順調と言うし、そうじゃなかったら「順調じゃないです」とオープンに話して、同じ立場で事業作りに向き合える関係を作りたいなと思っています。

東:投資家のチームとしては、バランスがとれているように感じていますがどうでしょうか?

毛:皆さん、それぞれの役割分担みたいなものを意識してくださっているのかな、と。例えば東さんがスペシャリストを紹介するので、自分はこっちの相談に乗るといった感じです。そのあたりは他の投資家がどういうことが強みなのかを見ながら、総合的に支援してくれているのかなという風に感じています。

東:投資家のチームワークって、うまくいっている会社もあればうまくいっていない会社もある。トリビューはその辺りがうまくできているんだとしたら嬉しいし、よりよく発展していけたらいいですね。

毛:東さんに投資家のチームワークについての相談もするんですけど、そういう存在がいるととても気が楽になるという面もありますね。

東:触媒的にはそういう役割もあるかなと。みんな毎日、会っているわけじゃないし、投資家側の思いを僕は理解しやすいので、うまく伝えられたらいいなと思いますね。トリビューは事業としても成長しているし、投資家チームもいいコンディションを保てているので、今後も一緒に頑張っていけたらいいですね。

毛:そう思います。これからもよろしくお願いします!

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