話題のオンライン習い事「ヨンデミー」が提供する、親子win-winな魅力を徹底分析!
高津: 本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは皆様、自己紹介をお願いいたします。私からはじめますね、W fundの高津です。W fundは立ち上げから5年目。1号ファンドと2号ファンドの2つで総額120億円を運用しています。最大の特徴は、コンシューマーサービスに特化した投資をすると決めている点で、120社程度ある投資先の97%ほどがコンシューマーサービスです。今回は、「ヨンデミー」にまつわる取り組みについて皆様に伺っていきたいと思います。
笹沼:株式会社Yondemyは5期目に入る、EdTechのスタートアップです。日本中の子どもたちの読書離れという課題を解決するために、「読書を習うという文化を作る」というテーマを掲げ、子どもが読書にハマる「オンライン習い事・ヨンデミー」というサービスを提供しています。
岡崎:旺文社ベンチャーズは、1931年創業の教育出版社である旺文社が6年前に立ち上げたCVCで、主にEdTech領域を中心にスタートアップ投資をしています。今回、ヨンデミーさんに出資させていただくことになりました。鼎談の機会をいただき、楽しみにしていました!
話題沸騰!子どもが自ら読書にハマる!?
画期的サービスとは
高津:改めて、「ヨンデミー」のサービスについて教えてください。
笹沼:ヨンデミーは、「読書は、一生モノの習い事」をモットーとして掲げ、AIのヨンデミー先生のサポートとゲーム感覚で楽しめるアプリによって、子どもが読書にハマるオンラインの習い事です。動画やゲームなど、ラクで楽しいコンテンツに囲まれる現代の子どもたちは、特に幼児時代の読み聞かせ以降、自分で文字を追って本を読むようになるタイミングで読書から離れていきます。そこでヨンデミーは、読み聞かせ以後の読書のサポートを提供することで、「楽しく、たくさん、幅広く」本を読むことができるような子どもたちの成長を実現しています。入会3ヶ月後の生徒の平均読書頻度は週5日以上、ほぼ毎日、本を読むようになるという教育実績データもあります!
高津:直近で目標としているのはどんなことですか?
笹沼:読書を習うという文化、その選択肢を当たり前にしていくことですね。現状、習い事のランキング上位って、水泳、ピアノ、英会話、そろばん、書道といったものですよね。そこに「読書」が当たり前の選択肢として入っている状態を作っていく。そのためには、そもそも読書は教えてもらえるんだ!という認識を作らなくてはいけないのかなと思っています。
未来につながる、読書と教育の相関関係
高津:読書が教育に対して寄与できるのは、どんなことがあるのでしょうか?
笹沼:僕らが土台にしている読書教育に関する理論は、アメリカのナンシー・アトウェル先生のものです。教育界のノーベル賞と言われている‟グローバルティーチャープライズ“の初代受賞者である先生は、本の読み手と書き手の両方を育てる教育を提供していました。その中でも、僕らはリーディングワークショップを引用して、ヨンデミーのサービスを展開しています。
僕らが読書をあえて、教育として取り組んでいく意義として思っていることは大きく2つ。1つが、まず学ぶ力、学ぶ手段です。僕は大学3年時に学生起業していますが、もともと起業するつもりもインターン経験もなく、右も左もわからないことから高津さんにフォローいただいて立ち上げました。それから5年、わからないことは読書をすることで解決してきました。経営者やマーケティング、デザインに関してはたくさんの本がある。経営における守破離の守る部分に関しては、読書で何とかなるのだと実感しました。この実体験からも、学ばなければいけないこと、学びたいことができた時に、その手段として読書は非常に有用だと再認識しました。だからこそ、子供のころからエンタメとして楽しく読書習慣を身につけられれば、大人になった時に本への抵抗感の有無が一気に変わってくると思うのです。
岡崎:そうですね、読書をすることで、もっと深く知りたいと思う知識欲の探求と習慣化づくりができるという点で、とても効果的だなっていう実感はありますね。
笹沼:はい。もうひとつ読書の意義として大事だと思っているのが、「言葉」です。特にこれは生成AI、LLMといった話が増えてきた中ですごく注目されている部分でもあると思うのですが、日本だと多くの社会人の仕事の9割がドキュメントを読んだり書いたりすることだと思います。また、特にリモートワークの普及で、テキストコミュニケーションなしには仕事ができなくなってきている、というのが実情です。たとえ、仕事の中でAIをうまく活用したとしても、言葉で指示をする能力、言葉の扱い方によって生産性が何倍にも変わってくる。言葉というのは今後も人間にとって変わらないツールとしてある中で、読書を通じて言葉がきちんと使えるようになれば、子ども達がどんな人生を歩むことになっても、下支えになっていくだろうと考えています。
高津:僕たちがサポートしてきたこの5年間で、その実証をしてきましたよね。旺文社様の中でも読書に対するお考えはありますか?
岡崎:僕たちとしては、子どもが読書をして、それをさらに考えてアウトプットするという行為、読書感想文などの作文教育ですね。ここにも注目しています。読書教育の先にアウトプットが習慣化することで、読書とあわせて学習の文脈にも良い影響があるのではないかと。
さらに、旺文社の領域であるテストや受験目線から見ると、どの教科においても文章を読み解く力は根幹の能力だと思っています。例えば算数や数学にしても、問題の意図を読み解けなければどんなに数学センスのある子どもでも問題は解けない。社会や理科でも同じことが言えると思っていて。そうなると、読解力というものが習慣的に備わっている必要があるのだろうと感じています。
笹沼:作文教育への連動、とてもよくわかります。もともと教育とは、「読み書きソロバン」と言われていましたよね。その次に教科の時代が来た。それは国語、算数、理科、社会、最近は英語とかプログラミングもありますが、そういう教科というコンテンツを教える時代に入ってきたと思うのです。ただ、今は動画やAIのようにネットにいくらでもコンテンツがあって、誰でもアクセスすることができる。かつコンテンツが増えすぎていて、教員の負担が重すぎて、教育システムとしては限界が来ている状態です。すると元に戻ってきて、「コンテンツがあるのだったら、学ぶ力と学ぶ意欲、この2つさえあれば子ども達だけで大丈夫だよね」という流れになってきているんじゃないかと。この2つを培うために、読書を通じて得られる知識欲、好奇心の活性化、本から学べる力を身につけることが必要。そうなると、改めて「読み書きソロバン」の時代に戻っていくのではないかなと推測しています。ヨンデミーとしては、今は「読み」をやっているので、これからは「書き」もやっていきたいと、改めて思っています。
岡崎:そうですよね、ヨンデミーさんのサービスの本質は、モチベーションだとか楽しいと思うことを重視している。だからこそ、学ぶ力や学ぶ意欲を培うみたいなところにつながっていく感じがしますよね。
笹沼:ええ、そうですね。そこは強く意識しています。教育領域の多くのサービス、特に受験産業の大きな課題は、親はやらせたいけど子供はやりたくないというハレーションの話です。だから親に向けてはコンプレックス商材みたいな煽り方をしていくし、サービスを提供する教師の役目は子供に強制することという構造ができてしまっている。僕らが読書に注目したのは、読書は子どもが‟楽しいだけで済む“ということ。子どもは読書を楽しむだけで、それが勝手にその先に、未来につながっていく。親から見ても、子どもが本に夢中になってハマっている様子を見ると、ある種安心できる。親子がwin-winの教育だと思うので、子供側の「やりたい」という気持ちはずっと意識していますね。
岡崎:モチベーションは、教育においてずっと重要なテーマです。いかに続けるかということを、何十年も前から多くの人が多くのアプローチをし続けてきたけれど、最適解は定まっていなくて……。強制的にやらせるというのも手段としてはひとつあるのかなとは思うのですが、ベストなのはやっぱり子どもが楽しくて没頭して続くというのが一番素晴らしい方法で、それを目指しているヨンデミーさん、熱いな!と思います。
笹沼:ありがとうございます。僕らがオンラインかつアプリという形を選択したのも、塾だと週に1回やって、その場で本を読んで終わりで、習慣にならないからです。もし塾を辞めたら、その場で読書習慣が終わってしまう。大人になっても必要な時に必要な本を自分で選び取って必要なだけ読むことができる。そういう人を「自立した読み手」と言うのですが、そうなりうる子を育てていきたいですね。生涯読書を武器、特技に。自己紹介で「読書が趣味です」という人はいますが、それが「読書が特技です」と言える子ども達を育てていくということが、僕らの読書教育が目指しているところです。
岡崎:生涯読書、すごいパワーワードですね。いいなぁ。
旺文社が考える、教育の未来
高津:話は変わりますが、私も受験では旺文社さんの受験対策テキストなど、とてもお世話になりました(笑)。多くのビジネスパーソンが受験期に1冊以上、旺文社さんのテキストに助けられたはずですが、旺文社さんとして、これからの教育はどういう方向性を目指すのか、など議論されていたりしますか?
岡崎:旺文社は教育のあり方を語る存在というよりは、教育現場の真っ只中にいる学習者である子どもたちや、先生・学校をサポートしてお世話をさせていただく側なのかなと。そこに対して何ができるかというのを考える存在だと思っています。ひとつは学習者である子どもたちに対して、学習コンテンツや受験の仕方を情報として提供していく。例えば、受験においては、現在は僕らの頃とは比べ物にならないほど色々な形の推薦型入試のパターンがあります。進路の多様性も幅広い。戦後は、学部の種類は数十しかなかったのに、今は500~600もある。その中で、子どもたちがどの選択肢を選び、どうやって勉強していくのかというのも非常に幅広な状態になっている。ひとつ目標を決めたとしても、どんな教材や学習方法が適切なのかを判断するのが難しい。だからこそ、それぞれの子どもたちに合わせて適切な教材・情報をフィットさせることができる存在になりたい、というのは重視していることですね。もうひとつは、笹沼さんも仰ってましたが、今、学校や先生の負担がかなり大きくなっています。そこをなるべく軽減できるサポートをしたい。学校業務DXといったサービスを展開している企業には興味がありますし、旺文社としても旺文社ベンチャーズとしても、学校の先生の負担を軽くして、より教育活動に力を割いてもらいたいというのは、かなり重要なテーマとして考えています。
高津:考え方として、ヨンデミーとオーバーラップしている部分がありますね。もし、学校教育の場にヨンデミーが導入されたら、読書指導や適切な選書に関しては「ヨンデミー」のシステムで行えるので、先生の負担は減っていくのではないでしょうか。
岡崎:そうですね。先生の負担もそうですが、家・自宅学習に視点を向けると、親御さんが先生役になるわけですよね。ヨンデミーのサービスを使えば、親御さんの負担を劇的に減らすことができるのだろうと思います。子どもが自立するという意味でも、すごくいい側面かなと。
高津:日本を代表する教育出版社である旺文社さんから、「ヨンデミー」はとても大きな期待をかけていただいていますね。学校教育のみならず家庭教育の在り方を変えていくのは、今の共働き時代にとても大きな役割を担っているサービスだということですね。
笹沼:本当にそうですね。読書教育にフィーチャーしないといけないと思っている理由として、文化資本の格差という問題があると思うのですね。読書に関しては、親が読んでいると子供も読む、親が読んでないと子供も読まないっていう相関が、圧倒的に顕著に現れている分野です。だからこそ、親が本好きであろうがなかろうが、共働きで読書教育にリソースを避けなかろうが、お子さんが読書に開かれた状態を作ってあげることが格差是正に繋がっていくというところは、僕らの描いている道です。
高津:ヨンデミーが素敵だなと感じるのが、教育格差の是正を意識しているところですね。ともすると高額課金が学歴に直結する世の中で、読書という部分、先生や親の手間はかからず子どもたちが喜んでやって、様々な教育資本を蓄えていく礎をデジタルの力で安く、すべての子供たちに届けていく。これを実現できるのは想像してもすごく素敵だなと思うし、国にも後押ししてもらえるような存在になるといいですよね。
岡崎:僕らがヨンデミーさんを素晴らしいなと思っている理由として、教育事業と出版事業の両輪で関わっている点もあります。高津さんがお話したように、デジタルで色々な課題を解決しつつ、子どもたちが実際に手に取るのは紙の本。図書館に借りに行って、手触りのある形で読んでいくというところにもフォーカスしている。教育的な成長サポートをしつつも、出版界にとっても新しい道を示しているのが、教育出版社という立場の旺文社的には注目している部分です。
Yondemyの見据える未来像
高津:「ヨンデミー」は中長期それぞれ、どんなこと考えていますか?
笹沼:中期的な部分では、読書や読み書きを中心とした新しい教育の価値観・思想を作りたいと思っています。親御さんも安心できる、焦らない子育て、新しい教育のエコシステムの在り方を伝えていく必要があるなと。これは僕らのプロダクトで体現していきますし、社会へのメッセージとしても伝えていきたいです。これは創業時から話しているのですが、「教育のサービスを立ち上げて、それがいいサービスかどうかがわかるのは30年後だよね」と。今、サービスを提供している小学生たちが、30年後にはその子どもが小学生になります。そのタイミングで、「ヨンデミーがあったから今の自分がある。だから自分の子はヨンデミーに入れよう」と思われるかどうかがひとつの評価点だと思っています。VCお二人の前で言うと「何なんだ、そのタイムライン」みたいな話にはなるかもしれませんね(笑)。でも、30年後が勝負だと思っているので、今後30年、短中期で作っていく習い事としての世界観、教育思想としての世界観とかも含めて今のユーザーが子どもを持った時に貢献できる状態を作って受け入れられるようにするのが、企業として永続させていくためには重要なことなのかなと考えています。
高津:今の話を聞いて、やっぱり笹沼さんに投資して良かったなと思いました。創業当時、笹沼さんは20歳だったじゃないですか。
笹沼:そうですね。
高津:30年かけて、事を成し遂げようとすると、笹沼さんは50歳。わりと短期的に成果、結果を求める学生起業家が多い中で、30年後を見越して挑もうというこの覚悟は非常に稀有な存在だなと。改めて投資して良かったし、起業させて良かったと思いました。
笹沼:高津さんと出会ったのは起業する前で、「本当に調達受けるの?受けないの?」みたいなところから、半年以上、相談に乗っていただきましたよね。
高津:「本を読め」と言われたことないお子さんはあんまりいないですよね。言ったことのない親御さんもあんまりいない。それにも関わらず、読書教育はフォーカスされていなかった。つまりヨンデミーはマス層に向けてアピールできる。一方で受験産業の方はトップオブトップがターゲットです。ヨンデミーはニッチなことをやっていると思われるかもしれないけれど、そうじゃない。子ども世代は現在でもざっくり1500万~2000万人います。その7割が使ったら1000万人以上のユーザーになる。広げていく余地はあると思うのですよね。
岡崎:実は、旺文社もハイエンド向けの教育出版社なのです。かつて、受験を頑張ることができるのは、学校の中でも勉強のできる子。だから、そういう子たち向けの学習参考書が書店で売れるという業界の常識みたいなものがありました。勉強にそこまで熱心ではない中間層の方が人数は多くて、その子たちも困っているかもしれないけど、本屋には来ないと思われていた。でもある時、勉強があまり得意ではない子たち向けに、かなり簡単で丁寧な参考書を出したところ、それがベストセラーになった。その後、他の出版社も追随して、ひとつのジャンルが出来上がったんですよね。その時に、中間層はやはり数としてもすごく大きいし教育ニーズもあるというのが可視化されたことを思い出しました。
高津:背中を教えていただいている感じがしましたね。
笹沼:めちゃくちゃいい話ですね。読書家という基盤のインフラを作って、その中で豊かに過ごしていけるような世界観を作っていく。そういう社会の変え方がしたいですよね。それがヨンデミーのやるべきことなんだと思います。
高津:最後になりますが、笹沼さんが描く未来を実現するために、どういう人にジョインしてほしいですか?
笹沼:今のプロダクトは一定グロースしていけるぐらいの精度にはなっていますし、継続率もビジネス的には良い状態にはなっています。でも、僕らが目指したい世界観で言うと、まだまだ需要と供給を伸ばせると思っていて。その中には子どもだけではなく、家庭、教員も今後はターゲットになってくると考えています。そういう文脈の中で、子どもの居場所としての家庭や学校という場ごと設計して変えていく。これを実現することが、プロダクトサイドのチーム、エンジニアやデザイナーの採用において大きなテーマですね。もうひとつは、いいプロダクトを広める人材。読書が大事だと思っている人たち全体で社会を変えていくという点では、読書の良さは読書の良さを体験している人にしか伝えられないし、そういう人しか説得力のある言葉を持っていない。出版社さんや書店さんのような、読者や作家も含めた読書が大事だと考えている企業との協業アライアンスについては、今年から本格化させていきたい部分。ここを進めてくださるメンバー、アライアンスの担当の必要性を感じています。もし、ご興味があれば、ぜひ、XのDMにてご連絡ください!
高津:本日はとても貴重なお話ができました。お二方、ありがとうございました。
◾️3年前に笹沼氏にインタビューした記事はこちら↓