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人口の約10%がメンタル不調!?    現役精神科医が「オンラインカウンセリング」サービスをリリース!

個人や法人向けに<メンタルヘルスサービス>を提供すべく医学博士・精神科専門医が2016年に設立した株式会社313。2021年2月4日には新たなサービスとして、オンラインカウンセリング『マイシェルパ』をローンチしました。臨床の枠を超え、より多くの人々にアプローチを開始した理由とは? 代表取締役であり精神科医の松本良平氏にお話を伺いました。

精神科医がオンラインカウンセリングサービスをリリース!


——『マイシェルパ』とは、どのようなサービスなのでしょうか?

松本:日本の精神科医療において、メンタルヘルスのサポートを必要としている人は1386万人ほどいると試算しています。対して精神科専門医は1.1万人、臨床心理士ないし公認心理師は3.5万人とリソースは非常に不足しています。クラウドを活用することで、メンタルヘルスのリソースとサポートを必要としている人たちをマッチングさせるのが『マイシェルパ』というオンラインカウンセリングのサービスなのです。

——ユーザーはどのような方々なのでしょうか?

松本:精神科のクリニックの約9割は院長が1人で診療しておられ、1日に少なくとも40人以上の診察を行われているのが標準的だと思います。それでもニーズに応えきれず、新規の診療申し込みを断らざるを得ないクリニックが多いです。当然、一人の患者さんに割ける時間はどうしても限られてしまう。そうすると、患者さんの中には「もっと話を聞いてほしいのに」という思いが生じます。医師側も「治療的には安定しているが、患者さんの心理的な苦しみなどに十分に寄り添えていない」と葛藤を感じています。私自身もクリニックを経営、診療していく中で実際に感じた、このジレンマを解消すべく、まずはすでに精神科に通院している方々に対して、医師が十分に担えない部分に、臨床心理士ないし公認心理師をカウンセラーとしてオンラインカウンセリングを提供することから始めました。予約からカウンセリングまで全てがオンラインで完結し、カウンセリングは1回50分、料金は6600円(税込)です。

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差別と偏見を解消したくて精神科医に

——なぜ、精神科医を志されたのでしょうか?

松本:医学部に入った動機は、エイズの研究がしたいというものでした。当時はまだエイズに対する差別偏見意識が強く、治療も確立されていない時代で、研究を通してそれを解消したいと思ったのです。しかし、大学1年生の時に、私自身に精神疾患や精神障害者への差別偏見意識が強いのだと感じる出来事がありました。そもそも私の父は養護学校の校長や教育委員会での要職を歴任しており、私自身も幼い頃から養護学校に行く機会が度々ありました。そのような経緯もあり、私に身体障害者や知的障害者の方への差別偏見意識はないと思っていました。しかもエイズという疾病に対する差別偏見意識を解消したいと医学部に入っているわけです。にも関わらず、自分の中に「精神疾患は弱い人がなるものだ」という考えがあるのだと直面化される出来事で、我ながら衝撃を受けました。と同時に、「私が精神疾患への差別偏見意識を持っている、ということは、もっと多くの人が差別偏見意識を持っているはずだ」とも考えたのです。この出来事をきっかけに、精神疾患や精神障害者への差別偏見を解消することを生涯の仕事にできたらいいなと思うようになりました。このことを先輩に相談したら、「公衆衛生に『一次予防、二次予防、三次予防」という概念があるが、そういう分野の仕事になるね」とアドバイスを受け、精神科医療の道に進むことを決意するとともに、いつの日かメンタルヘルスの一次予防から三次予防に貢献できたらな、と夢想しました。1996年5月頃のことだと記憶しております。

——一次予防、二次予防、三次予防とはどういうものですか?

松本:一次予防は「発症予防と健康増進」、二次予防は「早期発見と早期治療」、三次予防は「病気後の回復支援や再発防止」などとされています。治療以外の手段で健康を支える医学的な考え方です。言葉は難しいですが、実は身近なものです。みなさんが毎年受けられている健康診断は二次予防ですが、一次予防の側面もあります。また、話題のワクチン接種は一次予防に該当しますしね。

——診療ではどういった患者さんを診ているのですか?

松本:摂食障害や強迫性障害の脳画像研究や認知行動療法の研究の取り組みを経て、今はオールマイティに診療しています。強迫性障害の方は今も多く診療しています。学校や職場での困難な状態に陥った方から、依存症や触法行為に至るような嗜癖障害(しへきしょうがい)の方々へも幅広く対応しています。

日本の寿命・健康損失の10%は精神疾患

——メンタルヘルスにおける日本の状況はどうなのでしょうか?

松本:アメリカ精神医学会やWHOの調査等でデータが出ていますが、人口のおおよそ10.5%の方が精神疾患ないしメンタルヘルスの不調、依存症などに苦しんでいると言われています。先進国の健康や寿命の損失の10~13%が認知症を除く精神疾患によるもので、実は疾患の中で一番大きく、ガンよりも損失が大きいのです。日本でも同様で、日本の寿命・健康の損失の10%は精神疾患に起因しています。ですので、経済的理由からしても、精神科医療が最も重要な医療の領域です、と講演会や講義では説明しています。

——メンタルヘルスの悩みを抱えている人にとって、カウンセリングは効果があるのでしょうか?

松本:カウンセリングの技法にもよりますが、有効性は示されていますし、一次予防にも役立つと考えられます。メンタルヘルス不調が本格化する前に、誰かに相談できたりアドバイスをもらったりすることで、持ち直したり追い詰められずに済んだりすることが期待されます。家族や友達がその機能を果たしてくれればよいのですが、必ずしもサポーティブに接してはくれないものですし、自分自身のネガティブな側面、困っている様子を親しい人に見せたくないという人もまれではありません。ならば、カウンセリングで第三者のプロフェッショナルに委ねた方が機能するケースはかなりあると思います。

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松本氏(写真左)
マイシェルパ カウンセラー 臨床心理士・公認心理師 井上紗智恵氏(右)

カウンセラーと困っている患者を結びつける


——カウンセリングを担うのは、どのような方なのですか?

松本:臨床心理士や公認心理師などの資格を保持しているプロフェッショナル・カウンセラーが対応します。現状でエントリーしてくれているカウンセラーは私自身がみな面談しており、確固たる信頼関係が築けているメンバーです。いざとなればすぐにコミュニケーションが取れるので、カウンセラーが困った場合には私を含む精神科医からのサポートができる体制です。この体制にした背景には、カウンセラーの置かれている状況があります。実は資格取得後に、医療機関できちんと研修ができている臨床心理士や公認心理師は少ないのです。おそらく半数近くが資格取得後に医療機関で勤務した経験がない。そうなると大学や大学院で知識は得ているものの、リアルな現場、医師の指導のもとで症状が出ている人に対応した経験がないのです。このリアルな現場を『マイシェルパ』のプラットフォームで経験していくことで、より広範な人をサポートする力を養ってもらえたらと思っています。

——カウンセラーの教育体制はいかがでしょうか?

松本:Eラーニングコンテンツを準備しています。また、オンラインで私や提携してくださる精神科専門医の診察に陪席してもらうプログラムも準備中です。陪席することで、精神科医が何を考えて患者さんを診察し、どういう風に薬を処方しているのかなど、治療の様子を実際に見ることができます。

診療とスタートアップの二足のわらじ


——先生は今も診療を続けているのですか?

松本:はい、診療はずっとやり続けるでしょうね。やはり現場感覚を忘れてはダメだと思っています。これは私だけではなく、カウンセラーたちも同じことです。来年からは、フルタイムの社員として臨床心理士や公認心理師を迎えていこうと思っています。その方々には自らカウンセリングも行いつつ、カウンセラーのマネージメント・教育にも携わるプレイングマネージャーになってほしいのです。私自身もカウンセラーも、プレイヤーとしての感覚を忘れてはいけないと思っています。

——同時にスタートアップの経営者でもあります

松本:そうですね、医師としてはエビデンスに基づいた診療をしています。一方で、経営者としては、今回のプラットフォームを通じて新たにエビデンスを作っていくことに取り組みたいと思っています。具体的には、カウンセリングで得られたデータを分析し、そこにAIを組み合わせていく。まさに今から、その予備研究を始めています。

——精神科だけではなく、他の診療科との取り組みも期待できそうですね

松本:すでに内科のクリニックからオファーをいただきました。内科で体調不良を訴えてくる患者さんの中には、身体的には問題がなく精神症状だろうという方々が一定数います。そこで内科医が精神科や心療内科を勧めても、どうしても抵抗がある方が多いのですが、カウンセリングだったら受けてもいいと言ってくれるのではないかと。他にも、癌を経験されている患者さんのケアやサポート、緩和ケアなども、カウンセリングが十分な力を発揮できる分野だと思っています。

メンタルヘルスをオープンに語り合える社会に

——松本さんが目指す未来とは?

松本:自分の<メンタルヘルス>についてオープンに語り合えるような社会にしたいですね。日本では1975年から、45年間、毎年2万人以上の自殺者が出ています。さらに1996年からは16年連続で、年間の自殺者は3万人を超えていました。これは社会的に大きな課題で、なんとか克服したい。まして、自殺は氷山の一角にすぎず、その手前で苦しんでいる方はたくさんいます。そういう人たちが「しんどい」「つらい」とちゃんと言えて、治療が必要な人は治療を抵抗なく受けてほしい。そして治療に至る前にカウンセリングで予防できたらベストです。もちろん、治療の中で精神科医が担いきれない部分はカウンセリングで補う。患者さんが社会に戻って、苦しい、折れそうになった時にカウンセリングを使っていけるような世界を目指したいです。メンタルヘルスの一次予防、二次予防、三次予防の実現です。当然のことながらそういった社会の構築にはコストがかかるので、AIを活用することでコスト構造自体も改善していきたいと思っています。

——プラットフォームとしての『マイシェルパ』が果たす役割は大きいですね

松本:このサービスがしっかり完成し日本で定着したら、海外にも提供していきたいですね。メンタルヘルスを取り巻く環境が、日本と類似している国、カウンセリング文化が根付いていない国、精神科医療のリソースが乏しい国へサービスを提供していくことは価値があることだと思っています。

——大きな夢が広がっていますね

松本:コロナの影響で医療界でもDX化が始まりましたし、日本の社会全体で<メンタルヘルス>に向き合わなくてはという機運が高まったと感じています。とにかくメンタルヘルスの問題を解決したい一心でサービスを作り上げている途中ですから、私たちの取り組みに興味を持ってくださった方は気軽にお問い合わせください。もちろん、臨床心理士、公認心理師のWライセンスを持っているカウンセラーも募集中です。お問い合わせはこちらのフォームからお願いします。

——ありがとうございました!『マイシェルパ』のサービスは、メンタルヘルス業界に一石を投じたと思っています。これからも、我々W venturesは、応援していきます。

株式会社313 代表取締役 松本良平
医学博士、精神科専門医。
2001年京都府立医科大学卒業、同大学附属病院精神科にて研鑽を積む。
2007年同大学大学院卒業。精神疾患の脳科学研究、認知行動療法に従事。
精神科病院の院長、医療法人理事長等を歴任。2016年3月13日にメンタルヘルス支援分野での起業を決意し、現在に至る。
お問い合わせはこちらのフォームからお願いします。
W ventures パートナー 新 和博
メンタルヘルスの不調で悩んでいる方が安心して頼れる場として、「マイシェルパ」は大変価値のあるものだと考えています。メンタルヘルスサービスの提供を通じて身の回りの家族や友人を幸せにし、医療費抑制や健康寿命延伸といった社会課題にもアプローチできる株式会社313にご興味を持たれる方、ご連絡をお待ちしています。

構成・制作 株式会社TEA.M

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