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小説・「塔とパイン」 #11

そろそろ昼の時間帯だ。客商売とはいえ、バックヤード担当だから、昼休みはある程度固定されている。おおよそ11:30〜13:30の間に適当に取ればいい。忙しいときはずらして昼食を取る。


他の従業員も自分の仕事のペースに合わせて各々が休んでいる。もちろん、タイミングによっては一緒になることもある。業態がそうだからか分からないけれど、昼が特段忙しいわけでもない。どちらかというと、コンスタントに切れ目なくお客さんが来るような感じだ。


店舗内にはショーケースといくつかの棚、そしてオーナーがどこかで調達してきたアンティークの一人掛けの丸テーブルが隅の方に置いている。テーブルには寸足らずの四角いテーブルクロスがかかっていて、小さな造花が真ん中に鎮座している。


一応、店内で「喫茶」ができるそうなのだが、この店で休憩している人を見たことがない。。。ショーケースのバックに古ぼけた「Cofee」の看板がかかっている。値段も書かれていないから、いくらで飲めるのか分からない。


多分、誰に聞いてもコーヒーの値段は分からないだろう。


従業員の休憩スペースには、無骨な4人がけのごくごく普通の四角いテーブルと椅子が置いてある。日本でも郊外で見かける、北欧仕込みの家具量販店で購入したものだ。割と新しいし、一般家庭でも良く見かけるもの。


昼時になると、談笑しながら食事をする人、スマホを片手に音楽を聴きながら、サンドイッチを頬張る人、コーヒー啜る人、そんな人たちが代わる代わる着座する。


粉まみれになった手を洗って「今日の昼食、どうしようか?」思案した。


「今日もアレにしよう。ケバブ」

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