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まったく応援されない、相談の森の中

朝、通勤中に読んでいる本の話のことを書こうと思う。

この前は、森見登美彦さんの「きつねのはなし」。その前は、磯野真穂さんと宮野真生子さんの「急に具合が悪くなる」を読んでいた。

私が乗る電車は、混んでいることもあるけど、身動きがとれないほど満員になることは比較的少ない。だから、積読本を読み進めるのに朝の通勤時間はちょうどいい。

今は、燃え殻さんの「相談の森」という本を読んでいる。

この本を読めば読むほど、「できれば、通勤中のみんなに読んでもらいたいなあ」と、ふつふつ思う。


「相談の森」は、文春オンラインで連載されていた、読者から燃え殻さんへの人生相談をまとめた本。

相談内容は軽いモノからヘビーな内容もあって、ときどき、「わかる!」となるような相談もあるから、まず読んでいて楽しい。

そして、一つ一つの相談と、燃え殻さんの解答が数ページで、さくさくと読み進められるのも推しポイントだ。クスリ、と小さく笑える箇所もあるし、この答えはうまいなあ、と思うものもある。

だけど、いちばん良いのは、朝から応援されないことだなあ、と私は思う。

どういうことかというと、「こうしたほうがいいよ」とか「ああすればいいよ」が少ないし、「それは忘れましょう」とか、「そんなの考えるの時間の無駄!」と書かれているのも少ない。

「それは仕方ない、付き合っていきましょう」とか、「ああ、そういうことあるよね、うんうん」とか、燃え殻さんがそばで声をかけてくれるのが文字から伝わってくる。

というのも、本の冒頭で、燃え殻さんはこう書いている。

僕は日々、いろいろな判断が遅い上に、間違えがちだと注意されるほうだし、人生の大きな後悔も一つや二つじゃない。
そんな人間が、他人の相談に答えるのはいくらなんでもおこがましい気がする。
だからせめて、相談の森に、朝が来るまで一緒にいることにした。

冒頭どおり、燃え殻さんはそばで、こくこくと話を聞いてくれている。

「居酒屋だったらこういうノリで話しちゃうけど、今は相談の森だから、こう伝えます」って、素直に書いちゃってるし、ヘビーな相談もあるのに読みやすい。

応援されない、というのはある意味で、指示されない、ということでもあるんだなあ、とこの本を読んでいて思う。

忘れたくても忘れられないから相談しているのだし、辞めたくても辞められないから相談しているのだ。それを、燃え殻さん自身がいちばんわかっている。

会社に向かうまで、「よっしゃー! 頑張るぞー!」となりたい人にはおすすめしないけど、ちょっとした不満や、しょうがなさを抱えている私には、このぐらいがちょうどいい。

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