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2021年のパソコンと付き合うまで

今日、新しいパソコンをお迎えした。


マイクロソフト社のSurface Laptop Go、色はプラチナ。
ぴかぴかの新しいパソコン。ぴかぴかの最新のパソコン。かわいい。
意味もなく撫でまわしてしまうのはなんでなんだろう。
無性に触りたくなるのはなんでなんだろう。つるつるしている。

5分経てば触りたくなる。何歳になっても新しいものは心を若くする。


そんなぴかぴかのパソコンを起動してみて驚いたのは、「パソコンってこんなに軽量化とスピード化が進んでいたの」ということだった。

私がもともと使っていたのは、正直DELLってことしかわからない父親チョイスのパソコンだ。大学1年生になったときに、引っ越しと同時に父親が私に渡したのが出会いだった。両親が仲介したお見合いみたいなものだ。

自分が欲しいものではくて、父が選んだパソコン。ほんとうにお見合いのようだ。

父親からすれば、姉ちゃんも大学生のときにパソコンを買っていたから、「大学生=パソコンが必要」と結び付いていたんだと思う。

大事な娘に、娘が選んだパソコンを渡すわけにはいかない、自分が選んだものを与えなくては、父親はそんなことを思っていたのかもしれない。娘の結婚における前哨戦だったのかもしれない。


色は黒、テンキーがついていて、画面サイズはノートパソコンの中でもめちゃくちゃでかいやつ、CDも入れられる、COREi3。重量級。
これ1台で筋トレもできる。もし私が機械に疎かったらこれでレポートを作るのではなく、筋肉を育てていたかもしれない。


父親が認めたこのパソコンを使うのは、レポートを家で書くときにぐらいで、正直あんまり使っていなかった。

というのも、大学には情報室、という名のパソコン室がある。多分どこの大学にもあると思うけど、学生なら誰でも使えるパソコン室。
なんなら貸し出しのパソコンまである。コピー機もずらっと並んでいて、印刷も無制限ではないけれど、使うことができる。
卒論のときは、制限いっぱいまで印刷を使った。懐かしい。


大学とは大学生のための環境がこれでもかってほどに用意されている。学食や学部といったものに光が当たって、フォーカスされることはほとんどないけど、情報関連についても大学は学生のために使いやすい状況になっている。
大学内はWi-Fiが当たり前のように通っているし、さっきも書いたけど、パソコンは貸し出されているし、授業のためだといえば映画を見ることもできる。ちなみに私は大学でハリーポッターを全部見ました。


だから、父親が買ってくれたパソコンを使うことはあんまりなかった。
バイトが入っていて、徹夜でレポートを仕上げなきゃならない!とか、明日の発表を忘れていてパワポを作らなきゃいけない!とか、非常事態で使うのが自分のパソコンだった。

むしろ非常事態の時には活躍したから父親には感謝しなきゃいけない。


そんなこんなで私は筋トレ道具と言われても過言ではない重量級のパソコンで大学時代を過ごした。



新型コロナウイルスが猛威をふるいだして、オンラインが当たり前になった2021年。

私は社会人になっていて、noteを更新したいなあ、オンラインのセミナーを自分で受講したいなあと思ったとき、久しぶりに父親チョイスのパソコンを起動した。



電源を入れて数分、ブーーーーーーンという低いモーター音がなる。


それから、画面の中央で小さな粒がぐるぐると円を作り始める。
犬が自分のしっぽを追いかける光景が浮かんだ。


30分経過。

粒たちは飽きもせず円を作り続ける。



40分経過。


ようやくパソコンが私にパスワード入力を求めてくれた。

それから全部のアプリが使える状態になるまでにさらに、数十分がかかった。



私はなんでパソコンを起動させたのかを忘れてしまっていた。
結局何もしないままシャットダウンした。



そういうことが5回ぐらいあった。





とにかく遅かった。
父親が選んだ彼はとにかく遅かった。
だんだんと動きが鈍くなる父親を思い出して、少しだけ切なくなるぐらいには遅かった。



セミナーの受講の時は、どうにか我慢して使っていたけれど、画面の中の講師は、がくがくとしていた。よく止まった。気づいたら、なぜか画面は真っ暗になって講師は闇の中に消えていった。
アーカイブ動画を携帯で見た。講師の姿は携帯画面に合わせて小さくなっていた。

このパソコンで文字を打っても遅れて画面に現れる始末だった。

父親が選んだ彼は、自分の性能を、私に合わせてアップデートすることは難しかった。
なんてったって、それは生まれ持った才能だからだ。彼は作られた時代から、人間のように歳をとることしかできなかった。

現代人だからなのか、私がまだ若いからなのか、流しそうめんのそうめんのように流れていかない機械は、自然と私を短気にさせる。

ぐるぐる回る粒たちを見ても、もう何の感情も湧かなかった。
そこに犬はいなくなっていた。「いいから次の画面にいけ」と思っていた。

ここが彼との潮時なのかもしれない。


こうやって人は、気持ちが移り変わってしまうのだな、ということを彼が教えてくれた。
永遠はない。人の繋がりにも、パソコンにも。





「パソコンを買い替えよう。」
そう思った。私は乗り換えることにした。






そして、今日、ようやく新しいぴかぴかのパソコンを迎えた。
父親が選んだ相手じゃない、私が選んだ相手を家に入れた。



迎え入れるまでに、家電量販店で3時間悩んだ。

店員さんに話を聞いては、「考えます」と店員さんをまいた。
それから新しい店員さんに同じ話を聞いた。「店員さんのおすすめは?」その言葉を5人くらいの店員さんに聞いた。


自分で相手を選ぶとはこうも大変なものなのか、と思い知った。


悩みに悩んで、一番スタイリッシュで、機動力もあって、私を新しい世界に連れて行ってくれそうなマイクロソフト社のSurface Laptop Goを選んだ。色はプラチナ。

かっこいい。自分で選んだっていうのもあるかもしれないけど、かっこいい。



それに2021年のパソコンってこんなにさくさくと進むものなのかと思った。
粒たちは「犬み」ぐらいで消えて明るい画面がやってくる。犬みたい、の、たい、を考える前にいなくなる。


文字も、これは完全に気のせいなんだけど、気分的には私が打つよりも早く出てくるような感じがする。
どんどん言葉が文字になっていく。画面に表れていく。



すごいよ、自分で選んだ君。2021年のパソコン。




一つ君に言いたいことがあるとすれば



私はアイスブルーのほうがよかった。

ただ、アイスブルーにすると在庫がなくて1ヶ月待ちだと言われた。
明日から天狼院ライティングゼミが始まるから、どうしても今日中に欲しかった。



私は妥協した。


なんだか、自分の結婚でも妥協しちゃうような気がした。



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