隣から洗濯機を回す音が聞こえる
隣の家の人は、夜になると洗濯機を回す。壁を挟んでいながらも、地の底から聞こえてくるようなゴウンゴウンという音が微かに聞こえる。
今日もお疲れ様だね。
朝、隣の住人は私よりも先にガチャンと出ていく。夜、隣の住人は私よりも後にガチャンと帰ってくる。引っ越しの挨拶をし損ねてしまったから、どんな人が住んでいるのか実はわかっていない。
そしてこれだけ生活リズムが違えば、きっとわかることもないだろうなとなんとなく思っている。
家の中で黙々と仕事をしていると、ときどき世界は私だけで動いているように錯覚する。私のひとり言、「あ~」とか「う~」だけが唯一の音のように聞こえてしまう。
だから隣から音がすると、妙に安心してしまう。
あ、私ひとりじゃなかったんだ。
アパートやマンションに住んでいると隣の住人の生活音、壁の厚さが部屋選びの基準になったりする。気になる人はやっぱりめちゃめちゃ気になるだろう。
今ちょうど洗濯が終わったピーと音が鈍く聞こえた。
「気にならないの?」という質問に私は、「気にならない」と答えるだろう。
ここに書くほどそれらの音は大きくない。聴覚検査のときの分厚いヘッドフォンを通して聞こえてくるぐらい微かな音ではある。し、隣から聞こえてくる生活音は、このnoteに出てきた音がすべてなのだ。玄関の開閉音と洗濯機の音。その2つだけ。
くしゃみの音とか、ドライヤーの音とか、テレビの音が聞こえてくることはない。掃除機の音も、足音も、話し声も聞いたことがない。ここに住み始めて半年ぐらいが経つけれど、まったく聞こえてきたことがない。
たまーに、本当にたまーに、なぜかドンと音が聞こえる。家具を壁にぴったりとくっつけるような音。アパートに住んでればよくある低めのドン。
ある日、日付が変わるぐらいに地震がきたことがあった。私はベットの中にいて、すぐにTwitterを開いた。
すると、隣からドンと聞こえた。
あのドンは、寝返りで壁を蹴ってしまったことで鳴った音なのだろうか。それともびっくりして起きたときに壁にぶつかって鳴った音なのだろうか。
まあなんでもいいけれど、その地震を味わっているのが私だけじゃないことが少しだけ心地よかった。
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