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来る「人手不足倒産」の対処法

「すみません、ちょっと、お話が」
何の問題もないと思っていた部下に会議室に呼ばれ、行ってみると、突然、「退職したい」と言われる。その後、あの手この手で慰留するも本人が予定した退職日にあっさり会社を去っていく。そんな経験をされた管理職の方も少なくないのではないでしょうか。

外国に「最後の藁一本がラクダの背を折る」という諺があります。ラクダの背中に藁を載せ、平気そうなのでどんどん積み、もうちょっと大丈夫だろうと最後に藁一本だけ載せたら突然そのラクダが背中から崩れてしまったという話で、限界を超えた状況では、ほんの些細な出来事が大事故になるという戒めの諺です。

組織においても、社員の内面に生じる仕事の我慢やストレスは少しずつ蓄積されます。しかし、多くの場合、周りがそれに気づくことはなく、ちょっとしたきっかけによって積もり積もったものが一気に瓦解してしまうなんてこともあるでしょう。

 帝国バンクの調査によると、2022年に判明した人手不足倒産(140件)のうち、社員や経営幹部の退職・離職に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産が57件となり、これは人手不足倒産の種類の中でも40.7%と最も高く、昨年同様、高い水準で推移しているとのことです。調査報告書では、今後、物価高の中で賃金に不満を持つ社員・役員が退職し、それが原因で経営が行き詰まり倒産する企業がますます増加するとも予測しています。

また、報告書では離職の理由を賃金としていますが、社員が会社を去る理由はそれだけではないと思います。「仕事のやりがい」「上司との関係性」「自己成長の可能性」等が挙げられ、それも人それぞれ。勿論、離職防止のために報酬制度を見直すことも重要ですが、日頃から現場の管理職が個々に違う部下の価値観を把握し、不満の源泉に関心を向けながらでエンゲージメントを高める努力も必要になってくるでしょう。

もしかしたら、報酬は、最後の藁一本でしかないかもしれません。

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