見出し画像

組織サーベイの不思議な力

 「あなたが、金儲けだけが目的ではない、時代を超えて存続する偉大な企業をつくりたいなら、ビジョンが必要だ」
 
名著「ビジョナリーカンパニーZERO」に書かれている一文です。企業にとってビジョンが大切であることは言うまでもないことで、多くの企業が、ビジョン、またはミッション、パーパスという言葉で、経営の方向性をホームページなどで高らかに謳っています。(ここでは、経営の方向性を示す様々な言葉をビジョンと表します)

 しかし、残念なことに、受け手の社員がそのビジョンを理解、共感し、一人ひとりが普段の仕事に活かしている企業はそう多くはありません。企業側も、社長から発信する機会を増やしたり、各部署でビジョンを解釈するワークショップを開くなど、様々な取り組みを行っていますが、効果はまちまちのように思われます。

 私はビジョン浸透には”組織サーベイを活用した仕組み構築”が最も効果的だと確信しております。組織サーベイというと、社員の満足度やエンゲージメントの度合を測定し組織課題を明らかにする手段として位置づけられ、コンサルティング会社が汎用版の設問を用意し、そこに数問の企業独自の設問を加えて調査を行うケースが多いのではないでしょうか。

 実は、組織サーベイの質問には見え難い不思議な力があります。それは、その質問を読むことで、社員はその質問の行動を会社は求めていると感じ、回答するだけでその行動に向けたエネルギーが高まるというものです。組織開発では、これを「コレクション効果」と言い、例えば、サーベイでチームワークについて重点的に質問すれば、回答者は、会社の期待値はそこにあると判断し、その後の行動が変わってくるということです。

 もし、そういった力を秘めている設問を、安易に汎用版にしてしまえば、調査実施段階で社員をミスリードしまう可能性があります。そして、逆に言えば、会社のビジョンを反映した設問にすることで、サーベイの実施の段階で「メッセージ」を伝えられる、ということになります。

 ビジョンから落し込んだ企業独自の組織サーベイを設計しHR部門が結果を分析。ビジョン実現に向けた課題を特定した上で施策を打ち、1年後、同じサーベイを実施して効果検証してPDCAサイクルを回し始める。ビジョンベースの組織サーベイを軸にこのサイクルを仕組み化していけば、自ずと企業全体がビジョンに近づくと考えます。