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レバノン、最近注目を浴びる国になりました



上の記事は、値段をつけるような内容ではないので、無料にしました



シリアとイスラエルに囲まれたレバノン、

かなり昔から政情が安定しません


そもそもフランスの委任統治領の中心として、ベイルートは発展し、

中東のパリと呼ばれるほどに美しい街となりました


今もフランス風の街並みは健在です

古代からの遺跡とフランス風の街並みが併存する、エキゾチックな街になっています


しかし、レバノンがシリアから分離して独立した時から、

レバノンの悲劇は始まっていました



1 宗教対立

そもそもフランスがレバノンをシリアから分離させたのは、

このレバノンが中東では珍しくキリスト教徒の多い土地だからです


キリスト教徒:40%

スンニ派:20%

シーア派:30%

その他(ドゥローズ教など):10%


という感じで、レバノンは宗教的に非常に微妙なバランスを保っています

お互いに良い感情は抱いていない、というのが正直なところでしょう


2 内戦(1975-1990)

レバノンは1975年から1990年まで内戦に突入します

宗教対立、地域対立、隣国シリアの出兵と占領、イスラエルの介入と攻撃など、様々な要因が絡みあい、誰が誰と戦っているのか分からないような内戦が15年間も続きます


この内戦により外資はレバノンから引き揚げ

ベイルートは中東における商業の中心地としての地位を失いました


内戦時代は本当に暮らすのが大変だったようで

この内戦時代に青年期を過ごした人は著しく婚姻率が低かったり、子供がいる確率が低かったりします


内戦による国民や政府諸機関の間の分断、破壊されたインフラ設備などは未だに尾を引きずっています


3 統一的政府の不在

レバノンは形式的には共和国です

大統領、首相、その他閣僚がいて議会もあって、一見するとよく成り立っている政府のように見えます


ところが、実際には組織化が不十分な政府です

統一的な政府の未確立という、外部から見えにくい問題が、現在のレバノンの様々な問題の根源です

そして、その起源はやはり宗教対立に遡ります


統一的な政府がない、政府が分断されているというのは、宗派ごとに閣僚ポストや議会の重要ポジションが決められているということです


大統領:キリスト教マロン派

首相:イスラム教スンニ派

国会議長:イスラム教シーア派


のような感じです

全部で30以上の閣僚ポストがありますが、すべてどの宗派の人間が就任するか決まっています


また国会の議席も宗派ごとに配分が決定されます

一院制の国会の全128議席のうち、半分がキリスト教諸派、半分がイスラム教諸派です


このような状態なので、政府機関同士の協力が簡単ではありません

港湾での爆発処理のため保健省が港湾で救援・調査をしようとしても、港湾を管理する省庁が協力してくれない、等の問題が起きます(たとえばの例です)


4 外国の干渉

国家として非常に脆弱なレバノンですので、外国の干渉が頻繁に見られます

干渉する国家としては、以下のような例があります


サウジアラビア

首相職はイスラム教のスンニ派で、サウジの支援を得たハリーリ首相が親子二代続けて首相職に就いています

サウジの影響力は絶大であり、2018年にはサウジの命令を受けてハリーリ首相が突如辞任するという事態が発生しました


イラン

イランはイスラム教シーア派のヒズボッラーを支援しています

ヒズボッラーは政党や軍を所有しているシーア派の政治的勢力です

保健省や国会議長等はシーア派の管轄です


イスラエル

イスラエルはレバノンに攻撃を繰り返してきました

特に国境付近ではヒズボッラーの軍とよく戦闘行為をしており、それに乗じてベイルートの爆撃も行われることがありました


シリア

民族的にはレバノン人と同じ人たちで、話すアラビア語も同じです

しかしキリスト教徒がほとんどおらず、イスラム教スンニ派の国となっています


シリアも内戦の時代よりレバノンへの介入を行ってきました


現在はシリアが内戦中であり、大量の難民がレバノンに入国しています

レバノンには難民の認定を終局的に行える組織がなく、ベイルートではシリア人難民が公共交通機関の運転手をしたりしています(国際法上は難民を不法滞在者として追い出すことは原則的に認められていません)


フランス

旧宗主国としてフランスはレバノンへの影響力を未だに持っています

介入ではないですが、爆発事件を受けてマクロン大統領は早速レバノンを訪問しています


またカルロス・ゴーンのように、レバノンからフランスに留学や就職に行って成功するする人が数多くいます


5 ヒズボッラーの存在

イランの支援するヒズボッラーはレバノンの諸勢力の中でも特異な存在です


政党としてのヒズボッラーは国民の30%を占めるシーア派から支持されており非常に強い影響力を持ちますが、シーア派以外の国民からは非常に嫌われています


ヒズボッラーの軍隊はレバノン国軍よりも強く、アメリカ等にテロ組織として認定されています(イランが支援しているため)

またシーア派住民がレバノン南部に多いこともあってか、ヒズボッラーの軍はイスラエルとしょっちゅうドンパチやっています

2008年にはヒズボッラーとの戦闘に業を煮やしたイスラエルがベールートを突如爆撃するという事態が発生しました


逆説的ですが、ヒズボッラー軍がなければイスラエルの行動がさらに酷くなると予想されるため、シーア派以外のレバノン国民もヒズボッラーの軍の存在を一定程度肯定的に評価しています(アメリカ等はテロ組織認定していますが)

一方でシーア派以外の国民は、政党としてのヒズボッラーを非常に嫌っています(こちらは最近までテロ組織認定されていませんでした)


6 カルロス・ゴーンについて

日本のニュースで見られるような「ゴーンはレバノンで嫌われている」とか、「ゴーンはレバノンに帰国して後悔している」というのは、嘘です


レバノンではゴーンはやはり伝説級の成功者であり、尊敬されています

もちろんほとんどのデモ隊にとっても、憎悪の対象にもなっていません(政府関係者ではないので)



いかがだったでしょうか

レバノンは中東の混沌とした環境をよく体現している国であり、日本からは理解できないような事態が頻発する国だということがお分かり頂けたでしょうか


宗派で分断されているレバノンも、最近は首相が辞任しても内戦にならず、宗教対立を超えたデモが発生するなど

宗教的なアイデンティティーよりもレバノン人としてのアイデンティティーの方が強くなりつつあるようです


次回、またレバノンについて面白いことがあったら記事にします


ではいってらっしゃい!





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