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新生児の疾患:循環器疾患

こんばんは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

みなさん、趣味はありますか。
読書、映画鑑賞、カフェ巡り、ボルダリング、楽器、ブログ…周りの人に影響を受けて色々かじっているのですが、なかなか一つコレといえるものがなくて。何か噛みついて離さないような趣味が欲しいですね。"考えごと" と "模様替え" は変だといわれます笑。

さて、今日は新生児の循環器疾患を勉強します。
新生児遷延性肺高血圧症、未熟性動脈管開存症について。いわゆる先天性心疾患は、改めて機会を設けることにします。

【問題】新生児の循環器疾患について、正しいのはどれか。
a. 新生児遷延性肺高血圧症では左→右シャントが生じる
b. 右→左シャントによってチアノーゼを呈する
c. 左心不全をきたした児では肝うっ血が顕著である
d. 未熟性動脈管開存症に対しプロスタグランジンE1を投与する

《問題の正解は一番下にあります》

新生児遷延性肺高血圧症

肺動脈の低形成、血管壁の肥厚、感受性亢進がある状態で、仮死やMAS、RDS(新生児の呼吸器疾患参照)などによる呼吸障害によって低酸素血症やアシドーシスの状態となると、それが刺激となって肺血管攣縮が持続し、肺血管抵抗が容易に亢進します。
肺血管抵抗の亢進は、肺血流を妨げ動脈管への血流を増やします。卵円孔の閉鎖進行も妨げられ、右心系の圧亢進から右→左シャントが生じます。このように、あたかも胎児循環が生後も残る形になるのが本症です(かつては胎児循環遺残と呼ばれていました)。
新生児仮死を認めた児、FGR児、過期産児にみられやすく、極めて予後不良な病態です。

右→左シャントによるチアノーゼを呈します(動脈管によるものが大きいため下肢に強い:differential cyanosis)。また、肺高血圧のために陥没呼吸などの呼吸困難を認めます。アシドーシスおよび右→左シャントによるため、PaO2低下が著明で、100%酸素を投与してもPaO2はあまり上昇しません。聴診ではⅡ音の亢進が、心電図では著明な右心負荷が認められます。
本症と診断するには、ドプラー法で卵円孔や動脈管を通じたシャントが存在することを確かめるとともに、チアノーゼを示す他の疾患でないこと証明する必要があります。

治療は、低酸素症に対して、高濃度酸素による人工換気を行います。輸液は心機能を補助する目的で、Ht値は60%くらいまで落として心臓への高負荷にならないよう少なめに保つようにします。血圧は50mgHg以上になるよう状況に応じてドパミンを投与します。
肺血管拡張薬としてシルデナフィル(PDE5阻害薬), PGI2などがありますが、全身に作用するため低血圧に注意しなければいけません。右室機能不全を伴う症例では、PGE1を用いて動脈管を開存させることで右室負荷を軽減させることが考慮されます。重症例には吸入一酸化窒素(iNO)投与を行います。

未熟性動脈管開存症

低出生体重児は出生後の環境変化に対し正常な適応が十分に行えません。循環器系では、動脈管の成熟が不十分で閉鎖が進行しないというのが代表的です。この病態は未熟性が原因であり、先天性心疾患の動脈管開存症とは別のものです。また、RDS児でよくみられます。

胎児期〜新生児期の未熟な動脈管は、PGE1に対する感受性が高く、これが動脈管開存を持続させるように働きます(胎児循環においては重要)。通常は、身体の発育とともにその感受性は低下し、出生後はPaO2が上昇することで動脈管壁の筋が収縮し、閉鎖へと向かいます。

未熟性動脈管開存症では、動脈管が開存していますが、通常、大動脈圧が肺動脈圧より高いので左→右シャントを生じます(新生児遷延性肺高血圧症とは異なるので注意)。肺血流量↑ - 左房への流入血液量↑ - 左室拡張期圧↑(左心容量負荷) - 肺動脈圧↑の機序により、左心不全症状(肺うっ血・呼吸困難)を呈します。
出生直後は生理的な肺高血圧によりシャント量は少ないですが、生後数週間のうちに症状が明らかになっていきます。

治療は、インドメタシンなどのPG生合成阻害薬で動脈管閉鎖を促す治療をまず試みます。無効なものには外科的に動脈管結紮術を行います。

解答

【正解】b(右→左シャントによってチアノーゼを呈する)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・肺高血圧症治療ガイドライン(2017 年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf



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