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「臭いから嫌いになる」のではなく「嫌いだから臭く感じる」

女性は男性より嗅覚が敏感で「顔が好みでもにおいによって嫌いになる」傾向があります。「おじさんは臭いから嫌い」と、女性から言われてしまうのもその表れです。

しかし、よくよく考えると「おじさんは臭いから嫌い」なのではなく、「おじさんが嫌いだから臭いと感じる」という、身も蓋もない話であることがわかりました。救いのない話ですが、ぜひご一読ください。

においなんて絶対的な指標であって、学習や感情に影響されない、ということはありません。夢の中でもにおいは感じます。それは記憶の引き出しの中にあるにおいを脳が感知して感じるものだからです。不快な感情を抱いた時も、同様の不快を感じた時のにおいが記憶の引き出しから呼び起されます。

テレビを見ていて、一度も会ったことのないタレントや有名人の顔を見て「ああ、この人、こんなにおいがしそうだな」と思うことはないでしょうか?それは大抵、いい匂いというよりも嫌な臭いだと思います。それは、その人物のことを、それまでの発言などであまり好ましく思っていないからです。

女性のいう「臭い」は多分にそういう感情と連結した想像臭であることもあります(もちろん、本当に臭い場合もありますが)。女性の言う「清潔感」も相手によるというのと同じです。

東洋経済の記事の最後に、「無臭人間になれる商品開発を希望する」と書いたところ、さっそくヤフコメに以下のような商品が推薦されました。

50代の男、営業職です。これまで柿渋など様々な石鹸を試し、最終的に数年前からサントリーの消臭石鹸を朝晩毎日使っています。複数の女性から全く臭いがしないと言われるので、一定の効果はあるようです。
ただ、一個二千円近くとバカ高いうえに、安く手に入れるためには定期購入しなければならず、在庫が溜まっています。

一個2000円以上もする石鹸ですか…。なかなか効きそうですw


こういう記事を書くと、ここぞとばかりに「私の周りにはこんな臭い人がいた」と叩き合戦が始まったりするのですが、僕個人としては「においは生きている以上出るものであって仕方ないじゃん」という立場です。

エチケットとして、一緒にいざるを得ない人を不快にさせたり気分を害したりするようなにおいもあるので、まったくの無頓着というわけにはいきませんが、文中にも書いたように、毎日風呂に入ろうが洗髪しようが、人間の身体からは何かしらのにおいが発生するものです。記事では「おじさん」を例にあげましたが、おばさんだってにおいます。

それは自然なことで、無理やり薬剤を使って無臭にしたり、芳香させたりする方が不自然。それだけではなく、体臭は身体の健康上のリスク発見装置にもなりますから、あえて消すべきものでもないでしょう。口臭などは歯周病だけではなく、身体の中の異常を示すバロメーターにもなります。

そもそも、明治時代までは、患者の体臭を嗅いで病気を診断する「嗅診(きゅうしん)」が、普通に行われていました。

現代でも、癌には癌特有のにおいがすると話す医師もいます。「新緑のにおい」「化学調味料のにおい」「硫黄のようなにおい」などと感覚は人それぞれですが、実際、それを本物の診断に役立てようという動きもあります。吐く息や血液、尿のにおいから、癌があるかどうかを嗅ぎ分ける「癌探知犬」を活用しようという試みもある。

そうした病気が元になる臭さというのは、多分自分自身でも臭いと感じるはずです。臭さはそうした自己の健康管理に役立てればいいんじゃないですか?

繰り返しますが、おじさんは「臭いから嫌われる」のではなく、「嫌っているから臭さをその正当化の理屈にしているだけ」です。体臭が臭くても、好きなおじさん、自分にとって必要または得になるおじさんに対しては、「臭いかもと思うのは気のせいかも?」という錯覚が働いていたりします。

男性は案外と臆病で、「好かれるより嫌われたくない」という意識が強い気質があります。自分のにおいに過敏にびくびくするのもその表れです。

自分を嫌ってくる人間に気を使う必要なんてないんです。下手に気を使っても自分が疲れるだけです。嫌われているならどうぞご自由に嫌わせておけばいいじゃないですか。どうせ、そんな相手は体臭をなくしても、決してあなたを好きになることはないのです。

第一印象が嫌いでも、そのすぐ後の第二印象で好きな人に変わるということはあります。が、それは、第一印象の「嫌い」がまだ根付いていないうちに印象が上書きされたからです。第一印象の「嫌い」がそのまま根付いてしまったら、それを覆すのはよほどのことがない限り甚だ困難です。

そうまでして、自分を嫌う人間に媚び売る必要ありません。上司なら上司を変えるために自分が異動するか転職しましょう。赤の他人なら関わり合いを断ちましょう。SNSならブロック・ミュートして存在を消しましょう。

嫌われている人を好きにさせるより、自分を好きになってくれる人を探す労力の方が楽しくて前向きです。


長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。