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trip to TAIWAN - 現代アートとサウナと映画を求めて

前のnoteのきっかけになった台湾旅行の記録。このご時世に海外旅行?と思われそうだけど、こんな状況を想像だにしなかった半年前の話です。オススメ情報をくれた友人への報告を怠ってたのでそれも兼ねて。久々に作文したら意外と筆が進むので勢いで書いてみた。

台中で開催されていたアジア・アート・ビエンナーレの鑑賞をメインに、サブテーマとして台湾サウナとミニシアター巡りというのが旅のお品書き。
裏目的というか、東南アジア方面に行く際にはリタイア後の移住先探しという目的がデフォルトで付与されます。その地で暮らす自分を想像してみること。

それでは、3泊4日を時系列で手短に。

1日目 - 2019.11.07 (Thu)

初日は成田空港からお昼のScoot便で桃園空港へ。機内食が無いので台北のホテルに着いた時にはかなりの空腹。とはいえ一品で満腹になってしまう中華料理屋は避けたいところ。ここはいっちょ夜市に繰り出してみるかと。そこそこの規模でアクセスが良い場所ということで饒河街観光夜市をチョイス。

ホテルから2駅ほど離れたMRT中山駅まで街歩きしてみる。台北は初めてだけど日本と比べるとやっぱオートバイが多いな。ホーチミンほどのカオス状態ではないので許容範囲だけど。大気汚染も大陸ほどは酷くはない印象。
中山駅でEasyCardを購入して5駅先の松山駅まで。改札のカード読み取り速度の遅さに日本の自動改札機の優秀さを感じたり。

饒河街観光夜市は松山駅のすぐそば。

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まずは入り口に屋台を構える福州世祖の胡椒餅、ガイド本に必ず載ってるやつですね。行列してるけど回転は早く、1個55元で購入。焼きたて熱々をハフハフしながら夜市散策。

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見たことない食べ物がたくさん売ってるけど、食で冒険するタイプではないので冷やかし専門で。他に食べたのは腸詰の焼き物と、胡椒餅をもうひとつ(美味すぎたので)。この程度で満足できる胃袋です。
それにしても日本人多かったなぁ。修学旅行らしき団体が観光バスで乗りつけてるし。

夜市散策後は中山駅までMRTで戻り、金年華三溫暖に向かう。そう、今回の目的のひとつでもあるサウナです。台北ではサウナのことを三溫暖と呼ぶんですね。駅前の大通りから一つ路地を入ったところ、派手な看板なのですぐに発見できました。ものすごい昭和感にクラクラしながら入店。

言葉が通じない場所で荷物を預け素っ裸になるのは少々不安だったけど、特に問題なくサウナを堪能しました。店員さんも日本人客には慣れてるご様子。

ざっくりまとめると、ドライサウナは日本のサウナ屋さんと作りが違ってて面白いけどセッティングはいたって普通、スチームサウナの蒸気が半端ない、水風呂冷たすぎ、料金は高め、です。詳細はサウナイキタイに投稿したサ活をどうぞ。

ところで、アジア圏のサウナ施設は風俗的なサービスを兼ねてる国が多いようで、「昨日サウナに行ってさー」とか大っぴらには口にしない方がいいようです。ロシアでもサウナは風俗系で、マジメな温浴施設はバーニャと呼ばれますね。

ホテルへ戻る道すがらコンビニでビールと飲料水を仕入れるもレジ袋に入れてくれない。そうか、台北ではレジ袋が有料なんだな。ホテルでガイド本を肴に飲麦酒。
初日はこれにて終了。

2日目 - 2019.11.08 (Fri)

2日目は朝から九份へ。半日だけでも普通の観光客っぽいこともしておくかと。台北から東北部ローカルへのアクセスが面倒なことはわかっていたので、車での送迎付きツアーを昨日のうちに予約していたのでした。昼食付きで1,400元。

行き先は何処でも良かったんだけど、映画ファンならやはり九份ですかね。
敬愛するホウ・シャオシェンの『悲情城市』の舞台であり、『千と千尋の神隠し』のモデルにもなった、山の斜面につくられた階段と坂道だらけの小さな街。かつては鉱山事業で栄え、今は台湾屈指の観光名所。

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多くの観光ビジュアルに使われているとおり、ほんとうは夜の方が幻想的で見応えあるんですけどね。なにしろ身動きとれないほどの混みっぷりなので、比較的空いてる午前中にしておきました。

このムービーはその日の様子ですが、これで空いてるなら夜はどんだけ?と思ってしまう。

ほとんどのお店は開店準備中だけど、湯婆婆の油屋のモデルと言われる阿妹茶樓は営業してたのでそこで一服。開店したばかりで客も少なく良い席に通してもらえました。

台湾茶を楽しみながら、エドワード・ヤンの『牯嶺街少年殺人事件』でも登場人物がやたらとお茶を飲んでたのを思い出す。やっぱ九份にしといて良かった。

しかし時間配分を誤って昇平戯院に入れなかったのは痛恨。そこは日本統治時代に作られた映画館で、今は記念館的な役割を担いつつ映画の上映もされているそう。『悲情城市』に因む展示品もたくさんあるとか。また来る機会があればリベンジを。

お昼は台北に戻ってツアー会社提携先と思しきレストランで牛肉麺。可もなく不可も無く。食後はツアーからひとり離脱し台北市内をブラ歩き。すぐ側にあった行天宮を冷やかしたり台北101を見上げたりしながら、徒歩で中山へ。

昼間に歩く台北の街は東京とほぼ変わらないですね。十分に綺麗だし道行く人々やドライバーのマナーも良くて。アジアの混沌を期待すると面白味がないとも言えるけど。

次の目的地はSPOT光點台北電影館。光點台北(台北之家)という、アメリカ大使館だった建物に併設された映画館です。プロデュースを手掛けるのがホウ・シャオシェンということもあり、上映作品のセレクションも日本のミニシアター系で自分の好みど真ん中。

日本映画もたくさん上映されてて、この日は『柴公園』『新聞記者』がかかってました。でもどうせなら日本で上映されていない作品を、ということで中国映画『地久天長 (So Long, My Son)』をチョイス。ベルリン国際映画祭で最優秀男優賞/最優秀女優賞をダブル受賞した作品。

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ワン・シャオシュアイ監督の作品は日本ではあまり紹介されてないけど、ジャ・ジャンクーらとならぶ中国第六世代の映画作家です。家族や恋人といった小さな社会への眼差しを通して、その背景にある激動期の中国社会を描くスタイルが共通しているように思います。
日本でも『在りし日の歌』という邦題で4月3日から公開されてるけど、時期が悪くほとんど上映できていない状態。台北で観た時は英語字幕を追いきれなかった所が結構あってもう一度ちゃんと観たいんだけどな。

ほんとうは翌日に一回だけ上映される『マルホランド・ドライヴ』を観たかったんだけど、帰国便の時間の都合で断念。もちろん何度も観てるけど異国で観るデヴィッド・リンチの味わいも格別だろうなと。

上映まで時間があったので併設のカフェでお茶など。珈琲時光という店名はもちろんホウ監督の作品名。2階にあるカフェバー・映画サロンの紅氣球もそうですね。

カフェの隣にある光點生活という雑貨店もかなり素敵で、映画関係のグッズが大量に陳列されてる。台湾映画の本やDVDも充実しててつい手が伸びそうに。お店の壁にはホウ監督はもちろん、エドワード・ヤンやツァイ・ミンリャン、ウォン・カーワイといったアジア映画のレジェンドたちの顔写真が並んでます。

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そして映画の後は台湾サウナ再び。台北小巨蛋駅近くの亜太三温暖まで徒歩で。無印良品なんかも入ってる小綺麗なファッションビルの最上階にこんな温浴施設を作ってしまう台湾人、どうかしてませんか... と絶句。公式ページにある通り、何処だよ此処は?なビジュアルに圧倒されます。

昨日の金年華三溫暖以上に水風呂がヤバイです、いろんな意味で。ドライサウナは普通だけどスチームサウナがとにかく強烈。料金は高い。詳細はサウナイキタイに投稿したサ活をどうぞ。

サウナにやられすぎてフワフワしながらホテルまで歩く。やたらと気持ちいい。台北はいい感じの狭さで良いですね。京都や福岡くらいのサイズ感が好ましい。
夕食を食べた記憶がないのは、きっとサウナが強烈すぎて食べ忘れたんだと思います。

帰国してから気付いたのは、ちょうど同じ時に台湾・金馬奨2019が開催中だったこと。タイムテーブルを見ると、この日に近くの映画館で『ジョジョ・ラビット』を観ることができたらしい。チケットを手配できたのかは分からないけど、一足先に観る機会を逃したのは映画ファン的には痛恨の極み。
旅先でのイベント情報を収集しておくのはホントだいじだなー。そして海外の映画祭も意外と身近にあるものなんだなと、参加意欲がふつふつと。

3日目 - 2019.11.09 (Sat) / 4日目 - 2019.11.10 (Sun)

さて、日曜の早朝便での帰国なので実質最終日。アジア・アート・ビエンナーレ2019に向けて台中へ。

この展覧会を観に来ようと思ったのは、あいちトリエンナーレ2019で観たインスタレーション作品「旅館アポリア」が凄まじく良かったからです。

その作家であるシンガポールのホー・ツェーニンが展覧会の共同キュレーターだったんですね。もう一人は台湾のシュウ・ジャウェイ。
恥ずかしながらホー・ツェーニンのことをその時はまだ知りませんでした。TPAM2018にも出品してて作品を観る機会はあったのに。もっと彼の仕事に触れたいというのが今回の旅のきっかけ。

会場は台中にあるアジア最大規模の国立台湾美術館。新幹線での移動は難なくできたけど、出遅れたせいで到着したのはお昼前頃。

それにしても入場無料で作品解説も載ってるガイドブック(装丁もすごく凝ってる)が無料配布されてるってすごいですね。もし日本で開催してたら入場料2,500円とかで簡素な作品一覧のプリントだけって感じかな。芸術振興への力の入り方が日本とはだいぶ違う。

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展覧会のテーマは「來自山與海的異人 / The Strangers from Beyond the Mountain and the Sea (山と海を越えた異人)」。異人とは民俗学者の折口信夫の「稀人(まれびと)」を元にしたもの。つまり、山と海を越えてやってくる他者は何かの贈り物やすばらしい知恵をもたらすのだという考え方。異人との出会いが様々な限界を突破するきっかけになるのだということでしょうか。

海を越えやってきた異人(わたし)の印象に残った作品たち
- Bloody Marys—Song of the South Seas / Ming WONG (シンガポール)
- Sea State Six / Charles LIM (マレーシア)
- Sulu Stories / YEE I-Lann (マレーシア)
- Milky Bay / 田村友一郎 (日本)
- The Bell Project / Hiwa K (イラク)
- The Workshop / Gilad RATMAN (イスラエル)
- Earthquakes / 渡辺麻耶 (日本)

どの作品も海, 山, 鉱物, 雲のいずれかに関連するテーマで、背景にはアジア各地の複雑な歴史が折り込まれています。
たとえば田村友一郎の"Milky Bay"は占領時の横浜, ボディビルディング, 三島由紀夫, 進駐米軍などをモチーフに日本の戦後を再構築し、プールバーを舞台に物語る作品です。退廃的で妖しいムードがたまらない。

すべてを理解できたわけではないけど、どの作品にも分厚い背景があり、作品同士が有機的に繋がりあう素晴らしいキュレーションだったと思います。

そして展示室を後にしたのは4時間後。見終えてはじめて展示のほとんどが映像作品だったことに気付く。時間かかるわけだ...。同時開催中の企画展を観る余裕はなく。

あまりの空腹に耐えられず美術館併設の春水堂へ。タピオカミルクティー発祥のお店(の支店)ですね。本当は少し離れた本店に行くつもりだったけど時間がなくて。適度な量の定食を選び、食後には本場でのタピオカデビュー。

このあと近くの忠信市場と綠光計畫を散策する予定も、大幅に時間オーバーしてたので断念。どちらもリノベされた古い建物にカフェやギャラリーや雑貨店が集まるクリエイティブなスポットらしい。次に来る時の楽しみにとっておくことに。

次に向かうは台中國家歌劇院。伊東豊雄が設計し2016年にオープンした新しめのオペラハウスです。

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レトロモダンな外観にまるで洞窟のような特異な内部構造を持つ建築。建物の中は床とドアを除いてほぼ平面がないという狂いっぷりにクラクラ。建設に10年かかるのも頷ける。

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オペラハウスを後にして向かうは、台中最狂スポットの彩虹眷村。諸々スキップしたのは、暗くなる前にここに来たかったから。都築響一さんのメルマガROADSIDERS' weeklyで知ってずっと行きたかった場所です。

虹爺爺と呼ばれるおじいさんが一人で作り上げた極彩色の空間。再開発に取り残された小さな集落の、その壁という壁が虹爺爺によるペインティングで埋め尽くされたアウトサイダーアートの名所です。

しかしなんという観光客の多さ。写真を撮ってても、村を撮ってるんだか観光客を撮ってるんだか分からないありさま。
この日は虹爺爺はいなかったけど、二代目の虹色戦士(なぜかアイアンマンのマスク着用)はちゃんと居て観光客のカメラに収まってました。

そういえばモトーラ世理奈主演の映画『恋恋豆花』(2019)にも彩虹眷村が大きくフィーチャーされてますね。この映画の公開も時期が時期だけにまだ観れてないのですが...。

そんな感じで、最終日は台中でアート三昧な1日でした。

そうそう、台中での移動ではじめてUberを使ったんだけど、おそろしく便利ですね。早い・安い・安心・会話要らずで言うことなし。
帰国便も台北MRTが動いていない早朝発だったけど、ホテル前でUberを呼んだら一瞬で来てくれておどろいた。

台中からの帰りも新幹線で台北まで。最終日もサウナといきたいところだけど、少しでも寝ておきたかったので夕食も食べず早々に就寝。
旅行に行くといつもそうなんだけど、食事を後回しにする習性のおかげで帰国した時には2kgほど減ってました。

帰国便もScootで成田まで。機内ではiPadにダウンロードしておいたAppleTV+の『ザ・モーニングショー』を一気見してるあいだに到着。近いわー。

まとめ

中国語圏に来たのはこれが初めてで、会話で若干困ることはあれど至極快適な4日間でした。さすが日本人の旅行先人気No.1。
海外旅行先としてはビギナー向けだけど、台湾映画を観ても分かるとおり文化の豊かさではアジア屈指の土地です。ハイアートからローアート、そしてあらゆるポップカルチャーに満ちていて常に新しい刺激を与えてくれる場所。今回の旅ではそのほんの一部にしか触れられなかったけど、必ずまた来ようと思わせる魅力があります。

そしてサウナも都市部の洗練された施設だけじゃなく、ローカルで庶民的なサウナも掘ってみたいですね。そんなとこあるのかな?

移住先としては、物価がそんなに安くないことを除けば全然アリ。リタイア生活を送るなら台中か台南あたりが良いのかな。台北は若者の街って感じだし。

次に来る時には高雄から入って北上ルートで攻めてみようかなと。そしていつの日か古い伝統が残る東方へも。

はやく海外旅行できるくらいに状況が改善しますように...。


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