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02. 猛き虎は、芙蓉の花の夢をみる

 全てはこの呟きから始まった。

 なるほどね、この両作を読んでいれば佐竹先生オタクとしてステータスとなるわけね

 というわけで、今回も佐竹梅子先生の作品の読書感想文です。
(前回の口調? 書き調?? がなんか偉そうすぎたので、普段のオタクわたし口調でゆきます。2回目にしてすでにブレっブレです)
 今回の作品はなんと、佐竹先生の「初めて執筆した創作BL」であるらしいのですが、これを読んだわたしは「本当に初めて書いた創作BL!?!?!?」と叫んで散りました。
 タイトルは「はなのゆにわ」。もうタイトルからすでに美しいBLであることがわかりますね。

敵対する芙国と蓉国──
芙国の宦官でありながら軍神と崇められ、軍華を名乗る傾国の美人
蓉国の武官でありながら芙国の捕虜として、猛虎と渾名され祖国と戦う武人
彼らが出会った先に在る、国の行く末とは。

「はなのゆにわ」あらすじ

 傾国の軍神?????は?????好きですけど?????
 絶対ヘキに刺さるやつじゃん。

軍華、ついに国を傾ける。
人が軍神になるなど、とうてい夢に過ぎない。
ゆえに、儚くなるのだ。

──芙蓉国史 第二節 傾国の軍神

「はなのゆにわ」冒頭より

 ほら刺さるやつじゃん!!!!!!!!!!
「ゆえに、儚くなるのだ。」ってもうわたしが好きなやつじゃん!!!!!

 物語は、芙国の王がとある宦官に狂わされた場面から始まります。
(多分わたしこの人が転生したんだと思う)
 この宦官、とにかく美しいのです。
 中性的でしなやか、黒曜石のように艶やかな髪、どこか憂いを帯びた瞳、そして唇…。
 男も女も振り返ってしまうほどの美人。
 この美しさが、老いた参謀の目に止まったことが、悲劇の始まりでした。
 神話の時代にふたつに分かれてしまった芙国と蓉国。
 保たれていた均衡が崩れ、参謀は最後の忠誠を捧げるため、王に策を立てます。
 それは、蓉国へ停戦を申し入れることでした。
 捧げる貢ぎものの中に、その宦官の存在がありました。
 この参謀、とんでもないことを宦官に強います。

『よいか。蓉国の王へ近づく機があれば、常に訴えかけ身を寄せて、その腕の中でこの飾り刀を抜くのだ。そして命を奪ったのち、お前も自害をするがよかろう』

「はなのゆにわ」本文内より

 一介の宦官に拒否権が!!あるわけが!!!なくない!?!?!?
 色を好む隣国の王に絶対酷いことされちゃうじゃん!!!!!
 ですがそんなことにはなりません。冒頭に戻るのです。
 王は宦官に傾倒してしまうのです。
 参謀さぞ悔しかったでしょうね…。
 王の狂いっぷりは凄まじく、今までたった1人の妃を愛し、王子王女を慈しんだとは思えない男へと変貌を遂げてしまいます。
 王を骨抜きにしてしまった宦官は、一介の宦官でなくなっていきます。

 場面は変わり、とある捕虜の男が闇夜に紛れ暗躍しています。
 男は「三十四」という番号で呼ばれていました。

どんなに過酷な状況下で盾として利用しようとも、その身に傷ひとつ付けず、返り血を浴びて帰陣する。そんな獰猛な戦いぶりに畏敬の念を込め、芙国の兵たちはいつしか彼を『猛虎』と渾名していた。

「はなのゆにわ」本文より

 いや、好きですね…。
 しかもこの彼、

その面構えは一見険しそうに見えるが、眉間へ皺を寄せるという癖があるだけで、実質は穏やかな好青年であった。いまや、その穏やかな面影はうかがえないが。

「はなのゆにわ」本文より

 もう、ものすごくタイプの男ですね…。
(モチヅキ、屈強なのに穏やかだったり読書しちゃったりするような男が理想のタイプです…聞かれてないけど)
 猛虎の耳にふと、笛の音が届きます。
 ここの描写がすごい好きなんですけど、

(中略)少し考え込んだところで、耳の表面を澄んだ音が撫で付けた。
冷え切った夜の、流星の一粒のように切ない笛の歌声が。

「はなのゆにわ」本文より

 ね!?!?!?!?!?!?!?!?
 エモすぎてひっくり返りました。

 何食べて生きていたらこんな美しい描写ができるのか…。
 月見バーガー食べて昼寝している場合じゃない…。

「例の軍神か」と猛虎はすぐに思い当たり、見に行ってみることに決めます。
 陣の中を奔走する猛虎、見回りの兵士に見つかり追われることになってしまいましたが、ふと「女」の気配のする陣幕を発見し、そこに忍び込むことに。女であれば気絶させられる、との考えあってのこと。
 そこには巫女のようなものがおりました。
 侵入者たる猛虎に黙っているように指示すると、巫女のようなものは見回りの兵士に嘘を言い、猛虎を庇うことをしてのけます。
 そして猛虎は兵士とこの者の会話の中で、この者こそが軍神──軍華であることを知りました。

 武官と宦官に、こんな理想的な出会いが他にあるかよ…ッ!!
 と仰け反ってしまいました。
 頭の中ではリンゴンと教会の鐘が祝福しています。
 童話ラプンツェルを愛する女なので、こういう出会い・逢瀬が大変好きです…。
 きっとそのうち王様に見つかってさあ…引き裂かれたりするんでしょ…そういうことなんでしょ…と私はドキドキしながら続きを読みます。

 軍華は自分は軍神などではないので、時期に自分の国が傾くであろうと言います。猛虎がその肩を抱きしめようと手を伸ばすと、仕えている巫女の声が。
 そう!王が!!来た!!!!!
 私の緊張をよそに、軍華様はしっかり猛虎を逃がしてやってくれました。
 …本当に、よかった…。これでまた穏やかな逢瀬が続くのかなとにっこり。

 したのも、束の間。

 物語は急展開を迎えます。
 次の戦いをなんとか生き抜いた猛虎は、返り血も拭いきらないままに、軍華の天幕を訪ねました。
 ついに王が乱心し、軍華と身体を重ねたのです…。
 やりやがったな、王よ…!!!!!
 この行為は軍華にある決意をさせてしまいました。
 あの日老いた参謀によってもたらされた、飾り刀をついに使う時が来たのです…。ヤダー!!!!!😭

「……この永い戦を終わらせるきっかけを、ずっと探していた。そこに猛虎、そなたが現れた。捕虜として、猛虎と渾名されたお前に。──……私のように、名を上書かれた、そなたに」

「はなのゆにわ」本文より

 そうなのです。宦官にも名前があったはずなのです。
 二人は共に芙国に名を奪われた存在だったのです…。
 そして軍華は、猛虎の手によって果てることを望みました。
 そして──…。

 物語の最後まで美しい描写が続きますので、ぜひ読んでいただければと思います。メリバではないんですけど、本当に好きな展開なんですお願い読んで(懇願)。

 この読書感想文を書くにあたり、読みながら感想をメモしようなどと思っていたのですが、このしんどい展開にメモが3行で終わっていました。

 語彙力が地獄。

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