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クールジャパン?ボーイズラブは国境を越える - スウェーデンで腐男子とBL作家に出会った件

2023年末までの9日間連投チャレンジ、本日はついに6日目に突入しました。想定以上に一本書くのに時間がかかることに気が付きましたが、あと3日、がんばりたいと思います。

ちなみに、文書作成にAIは一切使っておらず(AIが作った絵は貼りましたが)、アウトラインも作らずにフィーリングで書き出していますので文章も構成も荒いのですが、どうかお許しください。


さて、バルセロナからこんにちは!北欧在住の腐女子です・・・本日はこの肩書きで失礼致します。

「あ、この人のフォロー解除しよう」と思った方、どうか待ってください。(笑)

これまでの記事はインナーディベロップメントに関わる意識高めで真面目な内容を取り上げてきましたし、できれば北欧のスタートアップやイノベーションについても書きたいのですが、本日は趣向を変えて、オタク性を前面に出した内容にしてみたいと思います。

「BL」という言葉が入ったタイトルに嫌悪感を抱いた方もいるかと思いますが、本記事は個人としての趣味に関する内容ではなく、あくまで海外への日本文化の伝来状況を現象として伝える、クールジャパン関連の記事として読んでいただけると幸いです。


私とスウェーデン腐女子との出会い

腐女子(ふじょし)とは、男性同士の同性愛を扱ったやおい、特にボーイズラブ(BL)などの創作物を好む女性(女子)を指す言葉です。

この単語を聞いたことはあるけどよくわからないという方は、ぜひウィキペディアのページをクリックしてみてください。慣れていない方はギョッとする内容かもしれませんので、画像検索などの深堀りは注意が必要です。

奥深い場所ですが、下手な深堀りはしないようご注意ください

私がこのジャンルの存在を知ったのは中学生1年生の頃で、当時少し心を病んでいた同級生が『幽遊白書』の同人誌を学校に持ってきていたことがきっかけでした。

当時、純粋無垢な真面目っ子であった私は、本編では脇役なのに、なぜかその手の薄い本では主役になっている蔵馬と飛影が大胆に絡むシーンに衝撃を受け、「気持ち悪い!」と吐き捨てた記憶があります。

(まあその後、沼にハマった筋金入りの腐女子になるのですが、その話は今回は致しません。また、拡大するBL市場について触れるとなると、別途字数が必要なので、ここではあくまで私が見た現象についての共有を書かせて頂きます。)

さて、そんな幽遊白書の同人誌との衝撃の出会いから数年後、ひょんなことから『鋼の錬金術師』の同人誌に傾倒する中学生にも出会ったのですが、当時は「腐女子」という言葉も普及しておらず、その趣向がいまいち理解できませんでした。

一方、彼女もまた、かなり内向的で思春期の悩みを抱えたタイプだったので、失礼ながら「ボーイズラブが好きなのは、少し心が疲れた中学生女子」という勝手なイメージが、当時の私の中で出来上がりました。

それから間も無くして、大学一年生になった2006年2月、スウェーデンの大学生と交換ホームステイ&文化紹介イベントをするという国際交流サークル活動で初めてスウェーデンに渡航した際、相手先の学生団体にいたスウェーデンの腐女子達と運命の出会いをしたのでした。 

私たちの大学のサークルメンバーの交流相手として、ストックホルム商科大学 - Stockholm School of Economicsという、裕福で優秀な学生が多く通う、現地の超エリート大学のスウェーデン人学生10人がいたのですが、なんとその中の1人、金髪で美しい20歳のスウェーデン人の女の子が、コスプレが大好きなアニメオタクで、周囲に隠しもしない筋金入りの腐女子だったのです。

しかも彼女には2歳年下の美しい妹がいて、姉妹で同じ趣味を共有していました。

前年度に他のメンバーが彼女に会った時は、日本文化紹介イベントに『ガンダムSEED』のヒロイン、ラクス・クラインのコスプレをして現れ、日本人学生達を驚かせたとのこと。

スウェーデン人コスプレイヤー達

上の写真は、数年前にNärconというスウェーデン最大のジャパンコンベンションで撮影した写真で、この姉妹のものではありませんが、スウェーデン人がコスプレをすると、非常に美しくなることがわかるかと思います。

やおいと言う言葉は、BLと同様の意味で男性同性愛(ゲイ)を題材にした女性向けの漫画や小説などの俗称ですが、このスウェーデン人メンバーの中でも1、2を争う金髪美女の口から出た自己紹介は、熱のこもった可愛らしい発音の日本語で「ヤオイガスキデス!」というものでした。

私を含む日本人の学生達の顔は「???」となり、何を言っているのかわからないと言うと、詳しく説明してくれました。

ちなみに、スウェーデンではボーイズラブ(少年愛)という児童ポルノを連想させる名前は使われず、ジャンル名としてはほぼYaoiで統一されています。

無垢な学生であった私達も、その時点で理解はしたのですが、その後も繰り広げられる、BL同人誌から仕入れた日本語の披露、自ら創作した『ガンダムSEED』や『コードギアス』のBLイラスト、そっち系のポルノビデオなどを散々見させられて、「内向的で心が疲れた中学生女子が愛好する超マイナー性癖」という、私がBLに対して持っていたイメージが音を立てて崩れました。

当時19歳だった私は「彼女達のように、裕福で頭脳明晰、育ちも性格も良くて、モデルのように美しい、北欧に住む良家の子女ですら、ボーイズラブというものにハマるのか。きっとこれは、国境を越えた人類の普遍的な性癖の一つなのだな。」という気づきを得たのです。

因みに、私を含めて、この出会いによって直接的に「目覚めた人」はいませんでしたので、こういった情報を知るだけで沼にはまることはないかと思います。

物語があるところに腐女子あり

欧米では、日本のやおい・BL文化とは全く関係なく、「スラッシュ」という男性キャラクターふたりを同性愛関係に読み替えた二次創作の文化が誕生しており、これは1970年代のSFファンダムで知られるようになった、と言われています。

70年代に大ヒットした『スター・トレック』を皮切りに欧米のスラッシュファンダムが黎明し、その後の『スターウォーズ』や、2000年代にスウェーデンの腐女子姉妹がハマっていた『ハリー・ポッター』など、順調に良質な素材供給が続いて醸成されていた欧米のスラッシュ・ファンダムに、日本のBL文化が合流したのでしょう。

一方、中国では逮捕者が出るほど規制されていますし、同性愛に厳しいキリスト教やイスラム教圏、またポルノ規制が厳しい国もあり、日本ほど自由に表現活動ができる国は少ないです。

インターネットによってクローゼット腐女子や潜在層にまで日本のBLコンテンツが行き渡るようになったことで、日本のBLはいまや、全世界で愛好されているのではないでしょうか。

あれからもう17年が経とうとしていますが、いまだにスウェーデンでのBL熱は収まっていないどころか、逆に市民権を得て、学校の図書館に置いてある(!)ような、学級文庫の位置付けにまでなっています。

おそらく、SDGsの目標5にあるジェンダー平等を積極的に進めるようとしているスウェーデンにおいて、同性愛を描いたBLや百合といった漫画は上手く使えば、LGBTへの理解推進のための教材であると考えられているのではないかと思われます。

もちろん、マイナージャンルであることには変わりはなく、日本のアニメや漫画に親しんでいない層の認知度などは皆無ですが、特にネットでのコンテンツ消費に精通したZ世代のスウェーデン人にとって、BLというジャンルは思った以上に浸透しているのではないかと思います。

上の写真は少し前のInstagram投稿ですが、ストックホルム・アニメ・ピクニックというイベントで、中学生ぐらいの女子グループが読んでいた日本の漫画の山です。

よく見ると、『マイ・ヒーロー・アカデミア』『鬼滅の刃』という流行りの漫画に混じって『ギヴン』や『ひだまりが聴こえる』といった、きちんと翻訳された検閲済みBLが並んでいることがわかるかと思います。

(検閲済みBLというのは私の勝手な命名ですが、BL漫画の中でも性的描写が少なく、青少年に見せても問題がないと現地では判断されたであろうソフトな内容のBL、ということです。)

スウェーデン最大級の規模で日本の漫画を取り揃えているストックホルムの旧市街にあるSFショップでは、『君は夏の中』や、韓国のBL漫画『Love is an illusion!』といったソフトなBL漫画が堂々と新作コーナーに並んでいました。

2023年12月、ストックホルムのThe Science Fiction Bookstoreにて撮影

一方、バルセロナの中心にある大型書店では、もう少しハードな内容の商業BL漫画が、荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』などと同列で並んでいていました。

今回は私のスウェーデンでの出会いにフォーカスしていますが、全国各地のテレビ局で『ドラゴンボール・シリーズ』が延々と放映されていた、スウェーデン以上にオタクの数が多いスペインなどは、アニメオタクはもちろん、腐女子の層もかなり厚いのではないでしょうか。

2022年12月、バルセロナの繁華街プラザ・カタルーニャにあるFnacで撮影

話題の「腐男子」は、スウェーデンにもけっこういます

ちなみに、BLの読者は女性や同性愛者の方々だけではありません。ノーマルな男性でも、純粋にジャンルとしてBLを嗜好する男性は増えており、そういった男性は腐女子をもじって「腐男子」と呼ばれています。

最近はBL漫画はもちろん、女性漫画や一般漫画の中でも「腐男子」を前面に押し出した漫画が登場しており、ドラマにまでなっていますので、もしご興味ある方は、本格的なBL作品を描いている、みちのくあたみ先生の『腐男子高校生活』や、ドラマにもなった『腐男子バーテンダーの嗜み』などをみてみると、彼らの生態について少し理解が深まると思います。

一方、ようやく市民権を得てきたように見える「腐女子」に比べて、「腐男子」は、まだまだ新しい概念で理解されておらず、BL愛好家の中でもマイノリティーとされているので、カミングアウトが難しいのではないでしょうか。

また、腐男子の中には、ゲイの方もいればストレートの方もいるのですが、「BLが好き」というだけで、勝手に性的嗜好について邪推されてしまう、という恐怖感もあるかと思います。

そんな肩身が狭いであろうクローゼット腐男子の皆様にお伝えしたいのは、スウェーデンにも腐男子は多分けっこういる、ということです。

私が知る限りで筋金入りの腐男子が3人、「『ギヴン』というアニメがおもしろかったから、BLもアリだと思った。」と発言していたアニメオタクの友人が1人います。

ちなみに、腐男子3人のうち2人はゲイ、1人はバイセクシャル、アニメオタクの友人はストレートです。

特に腐男子A君は、数百冊にも及ぶ読書記録を作家名と感想付きのデータベースとして残しており、同人誌を含めてほぼ全てのBL漫画のタイトルと作者名を知っている強者です。最近では自らBL小説を描いて、熱い思いを昇華させようとしています。

腐男子B君は、BLだけでなく少女漫画が大好きで、日本のフィギュアやぬいぐるみが敷き詰められたかわいいオタ部屋にはたくさんのイラストが貼ってありました。

彼らは全員違うコミュニティで知り合った20代〜30代前半の男性ですが、人口約97万人と、宮城県仙台市(人口108万人)より規模の小さいストックホルムでの4人というのは、比較的重みがあるのではないかと思います。

また、インターネットでいくらでも情報が手に入ることに加え、これだけオープンに漫画コーナーにBLが山積みにされていたら、少なからず一般の男性が手に取り、男性同士の禁断な愛という特殊なハーレクイン的要素に引き込まれて好きになるというのも、おかしくはない話かと思います。

商業BL漫画家は、スウェーデンにもいます

近年、韓国を筆頭に、規制の厳しい中国でも『魔道祖師』などのBL作品が登場し、日本においても海外のBL作品への注目が集まっていますが、実は北欧スウェーデンにも、ボーイズラブを専門として作品をつくるBL漫画家がいます。

私もその事実をつい最近になって知ったのですが、少し前に使い始めたコワーキングスペースで出会った日本語を流暢に話すスウェーデン美女の正体が、「日本の高校生男子の恋愛」をテーマにしたBL作品を描くプロのBL作家であったのです。

非常に知的で見た目も綺麗な普通のスウェーデン人女性なので、誰も彼女が男性同士の性愛が好きな腐女子とは思わないでしょう。

Aina Palmというペンネームで活動している彼女は、ウェブトゥーンという韓国発のウェブ漫画プラットフォームに『Idiots Don’t Catch Cold (バカは風邪ひかない)』という作品を連載していますので、ぜひサポートしてあげてください。

表現規制が厳しいようで、彼女の漫画には日本のBL漫画にみられるような過激な性描写はなく、昔ながらのくっつきそうでくっつかない、もどかしい少女漫画の性別が男になったような内容です。

性描写がいっさいなくても面白いBLはたくさんあるし、トキメキだけで読ませる方が高度な技術なのでそのあたりは問題ではないのですが、表現規制に関連して「欧米向けに漫画を描くのも大変そうだな」と感じたのは、Ainaさん曰く、特にアメリカの読者を中心に、ポリティカル・コレクトネスへの配慮が必要、というところでした。

日本の高校を舞台にした恋愛漫画のはずですが、「黒人が出てこないのは不自然で差別的だ」とクレームが入ったり、キャラクターに吃音(どもり)がある描写を描くと「吃っている人、発話障害者の心を傷つける描写だ!」と文句を言われたことがあるそうです。

この理論がまかり通るなら、吃音キャラが出てくる、ドラマにまでなった大人気BL小説『美しい彼』は即時キャンセルです。むしろ、生き残れる漫画の方が少ないのではないでしょうか。

さてさて少し脱線しましたが、スウェーデンには彼女以外にもBL作品を描いている作家はいるそうですし、冒頭紹介した美人姉妹のスウェーデン腐女子達もイラストを描いていましたので、クリエイターの裾野は広そうです。

ちなみに、AinaさんがBLを書き始めたきっかけは「NARUTOの最終回で、ナルトとサスケがそれまで伏線が薄かった女性達と結婚したのがどうしても納得できなかったので、自分で理想の結末を描こうと思った。」ことだそうです。

確かに、彼女の漫画の1巻目は特に、ナルトとサスケの忍者アカデミー時代の関係を連想させるような、ケンカップルの匂いがプンプンします。

やはり芸術を生み出すのは、いつの時代も行き場のない感情の爆発ですね。


さて、取り止めのないダラダラした記事になってしまいましたが、本日の連投チャレンジ分はこのあたりにしておきたいと思います。

もし、これをどこかの漫画家さんや編集の方が読んで次のBL漫画のネタにしよう、と考えて頂けたら嬉しいです。

明日以降は時間的な制約が強くなるので、少し短めの記事になるかと思います。

それではまた!






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