椿の雫よ、その愛しき存在よ
椿の花が乱れ咲いたころ
椿の花々の間から
零れ落ちるように
まるで椿の露を集めたかのように
現れた生命体
息を呑むほど美しい
漆黒の髪に深紅の唇
瞳は二粒の黒曜石
肌はそう
椿の雫と同じように透明で
私はその生命体を「椿姫」と名付けて愛でることにした
ところが当の椿姫
私が「椿姫」と呼び掛けたとたん
その名は気に食わぬと
私を黒曜石の瞳で睨みつけた
何が気に食わぬと言うのか
こんなに美しいあなたには最もふさわしい名だと
あなたを愛でるために付けた名だというのに
お主わ