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ひらがなエッセイ #20 【と】

    昭和23年の10月に発行された謎の科学辞典を保有しているのは、確か今は亡きじぃちゃんからのプレゼントで、ありがとう、と貰ったは良いものの、よし、プロパガンダについて調べてみよう、などとは日常生活で思い起こらず、ただ部屋のオブジェと化している。何故くれたのだ、これを。私はこの意味を数年間考え続けているのだが、未だ分からずにいる。しばらく眺めていると、お前は馬鹿だからこれでも読んで勉強しとけ、なんて声が聞こえたような聞こえてないような気がしたので、あぁ、せっかくだから「た」を調べて何か書いてみよう、と思い立った。

    た、タナ上げ、と書かれている。約束をした事を平気で破ってしまう事で最近政府の専売になっている、とある。なるほど、中々面白い。次に、単独講和、と書かれている。日本が今後独立国家として外国と肩を並べて交際していくには、各国と別々に講和会議を開き条約を結ばなくてはならない、とある。ふむふむ、そういう物なのかな、私にはよくわからん、タフト・ハートレー法、第三インターナショナル、立ち入り禁止、と続けて書かれているが、ますます意味がわからず読むのをやめた。あっ、まてまて、聞いた事ある人物名が書かれている、ダーウィン、あかん、濁点は認めん。あくまで「た」は「た」で書きたい。た、た、た、田んぼ、たにし、田中角栄、駄目だ、何も思いつかない。と、いう所でふと我に返ったのだが、今日は金曜日、エッセイのお題は「と」であった。昨日飲んだワインが分解されずに身体中を駆け巡っていて、意識朦朧の中書いているのが嘘偽りなく今の私である。とほほ。

    過ぎた時間は戻らない、じぃちゃんが何を伝えようとしてこの本をくれたのかは謎のままであるが、それでもまた読み返して、あぁ、意味がわからん、というのを繰り返すんだろう。生きてる内に聞いときゃ良かったなぁ。

    【時は金なり】親孝行しような。

よい週末を。


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