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短歌|分からなくてもいいこと

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今まで作った短歌の分からなくてもいいことをまとめます。私が忘れないために。
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#短歌

鈴蘭のランプ

ずっと待っていた鈴蘭のランプが届いた。
ずっと眺めていたくて、起きているときはリビング、寝るときには寝室に持っていく。

うたの日の題「姿」で、どんな姿を歌にしようか考えていたとき、鈴蘭のランプが目に入った。
微妙に右に傾いている。
構造上傾けてあるわけではなくて、ランプをぶら下げる金具が少し右にずれて傾いてしまっていた。それがなんだか、良いな、と思った。
「ん?」と聞き返すときの傾いだ首みたい。

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気まぐれで野暮

 暇を持て余して、気まぐれで野暮に、自分の短歌連作の裏側をつらつら書く。
 2021年2月の連作。

運命

1首目
「バス停に着いたらメールして」と来て「着いた」のあとの絵文字を迷う

「バス停に着いたら電話して」とメールが来て、「わかりました」のあとの絵文字を迷ったのは本当。

2首目
アパートの踊場で手を振る君に早く会いたいかかとが軽い

アパートの踊場から片手を上げられて階段を駆け上がった

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いちごジャム

いちごジャムを胸いっぱいに詰められる 君のメールを眺めていると

 何かに対して「好きだなぁ」と思うのが好き。
 それは、人でも物でも自然でも。
 ラブでもライクでも。
 その中でも一番幸せな気持ちになれるのは、人をラブの意味で好きだと思うときだけど、そういう好きは対象が限られるから、不安定。

 恋をしたいと思うときほど恋は始まらないし、そういう意欲がないときほど簡単に人を好きになってしまったり

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なり損ないの大人のままで

なり損ないの大人のままで好きな人に好きと言えずにゆく河川敷

 好きな人に好きって言いたいな。
 と、もう何年もずっと漠然と思っている。

 4年くらい前に、友達との旅行で縁結びの神様がいる川越氷川神社を参拝した。
 その神社には境内の小石をお清めした『縁結び玉』というお守りみたいなものがあって、いい人と巡り合えたら、二人で神社に返しに行く。
 私は、その清らかな小石を4年間、財布の中で眠らせてい

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先生は明言せずに

先生は明言せずに「漱石のこゝろは難しい」とだけ言ふ

 夏目漱石の『こころ』が好きだ。
 そう思うとき頭に浮かぶのは、西日の差した教室だ。
 私は夏目漱石の『こころ』を読みながら、二者面談の順番を待っていた。
 あれはたぶん、高校ニ年生の冬休み前の頃。
 放課後のオレンジっぽく染まる校舎の壁や、傘立てに忘れられたままの傘が廊下に影を伸ばしている様子を、色褪せたフィル厶写真のように思い出す。
 まだ

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里帰り出産の友へ会いに行く

里帰り出産の友へ会いに行く道中に撫ず透明の月

 仲良しの友達が里帰り出産をすると聞いた。
 お互いに地元を離れてからなかなか会えなくなって、友達が里帰りしている間に会いに行きたいと思った。
 友達とも会う約束をした。

 私は学生の頃から、友達は私よりもたくさんのことを知っていると、思っていた。
 友達にそういう話をすると、いつも「そんなことない」って言われた。

 友達が私より先に結婚して子ど

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