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はじめての歌舞伎。マハーバーラタ戦記に衝撃の連続。(後編)

先日、よき先達となる友人に手取足取りフォローしてもらいながら、歌舞伎をみにいってきました。

私がみにいったのは「マハーバーラタ戦記」というインド神話的な世界を下地にした新作歌舞伎の一つ。

それがもう。

なにこれ、どういうこと!?

という、良い意味でのびっくりの連続だったので、これはもう忘れないうちに書き留めておきたいと思いまして、拙いながら超初心者の感想として、だからこそ書けるんじゃないかと思うことを綴っておきたいと思います。

前編では歌舞伎自体の印象がどういう点で一変したのかという話を綴っています。

後編は特に「マハーバーラタ戦記」をみた感想です。


「マハーバーラタ戦記」って?

歌舞伎を知らなくても、世界史を勉強したことがある人なら、「え、それって・・・?」と少し戸惑いつつも心当たりがあるはず。

そう、それです。インドのあれです。

古代インドの神話的叙事詩「マハーバーラタ」をもとにした、神と人間が織りなす壮大な物語

情報☆キック

です。インド神話が歌舞伎!?というのがまずもう驚きですが、これは2017年に上演され話題になった新作歌舞伎の再演ということでした。

インド神話を日本の伝統芸能たる歌舞伎にあてはめるって果たしてそんなことが可能なのか・・・?と最初は半信半疑でした。

しかも、いきなりそんなトリッキーな歌舞伎をなぜ友人は初めてみる歌舞伎として招待したんだろうって不思議でもありました。後にこれ以上ないくらいはじめての歌舞伎にもぴったりだったとわかるのですが。

超初心者でも超楽しめる大スペクタクルでした。個人的みどころ。

1)和洋折衷ならぬ、和印折衷さが絶妙

当初感じていたその「インド神話で歌舞伎って大丈夫なの?」という疑問が冒頭のきらびやかな神々の世界にまず吹っ飛びます(笑)。

・衣装

いわゆる庶民は日本のような着物のような装いで出てくるし、5人の王子たちもこれはほぼ着物かなという印象…なのですが、まず神々の神々しさが想像を絶するものでした。

きんきらきん。

歌舞伎はさまざまなものを貪欲に取り込む「足し算」の芸能だと、行く前にちらっと読んだ本にも書いてありましたが、文化的な意味でも装飾的な意味でもその通りだと思いました。

他にもさまざまな衣装のなかで、インドと日本が混ざり合って独自の世界観を構築しています。

・舞台

背景画の斬新さと美しさにもシーンチェンジのたびに心を打たれました。インド独特の紋様やインドらしい森の様子が日本らしさを感じる絵のタッチで表現されています。

戦いがメインの最終幕ではインドの戦いを描いた絵巻物のような背景になっていて色味はここまでのものとは打って変わってあくまで控えめ。
見せ場とも言える戦いのシーンが際立つように描かれているのがわかります。
衣装やその時の動きなどと総合的なバランスがとられている点もすばらしいと思いました。

・音楽と舞い

歌舞伎自体が初めてで比較できないのですが、インド感のある、異国情緒あふれる旋律が随所で響き、作品へ誘われているのを感じます。
また音楽に合わせた舞いのシーンもインドの踊りを取り入れたものと伝統的な歌舞伎の舞いとの両方が見られるのがお得感があり、楽しいです。

2)悪役が素晴らしい作品こそ傑作って聞いてたけどやはり

まさか私が初めての歌舞伎に涙ぐむなんて・・・!

自分でもびっくりなのですが、そのくらいに感情移入できたということです。しかも悪役に。

これは芝のぶさん演じる鶴妖朶(づるようだ)のことなのですが。

冗長になるので細かいことは割愛しますが、

なぜ王子たちを苦しめる存在になってしまったのか。
なぜその道しか選べなかったのか。
なぜ争いは止まないのか。

最期のシーンの絶望の叫びに、ダイナミックで繊細な所作の一つ一つに、その全てがぎゅっと詰まっていて、引き込まれて、気付けば涙ぐんでいたのです。

一緒に行った友人にそのことを話すと、同じように感動していて、他の方の感想を調べても同じようなことを書いていて、やっぱりたくさんの人の心を動かすシーンだったんだと思いました。

だいたいにおいて悪役の名演技が光る作品というのは一級品だと思うんです。

3)3時間半にストーリーがぎゅぎゅっと

一緒にいった友人によれば歌舞伎は基本的に長いので、全舞台の一部を上演するというのが普通らしく、それ以外の部分は解説をみて補うのだそうです。(これにはびっくりしました。音楽で第三楽章だけ弾くみたいなのと同じことかな)

一方、この作品は新歌舞伎で現代の尺に合わせているのか、全シナリオを一回で見ることができます

ストーリーの理解に前提知識がそこまで求められないので、これは初心者には優しいんじゃないかと。

また、ストーリーを丁寧に描くシーンも、舞いが主体のミュージカルのようなシーンも、クライマックスの戦闘シーンも…歌舞伎の魅力的な要素もぎゅぎゅっと詰まっているように感じました。
歌舞伎ってここがおもしろい!のポイント総決算で見ることができた満足感がありました。

4)華やかな舞台演出に魅せられる

まず何よりも、サウンド好きな私としては、想像以上の音の演出に感動しました。インドの音をうまく取り入れたシーンもそうなんですが、神が人間に語り掛けるシーンでは敢えてマイク演出をしたり、最後の最後の決戦のシーンだけに使われる特殊音があったり。

伝統技法だけでやるのかと思ったら意外と新しい技術も取り入れられてるんですね。

床を叩く演出(ツケ打ちというそうですね)もこんなに臨場感の増すものなのかと、これは体験してみないとわからない魅力でした。

あと花道の使い方や舞台の転換の仕方が大掛かりでわーお!と思わず声を上げてしまうことが何度もありました。

イヤホンガイドでも話していましたが、いい感じに新しい技術と伝統的な技術が統合されてできているのだそうです。

たとえば、戦いのシーンで2本の花道を使って敵味方が向かい合うのですがこれは割と伝統的な手法らしく、一方でクライマックスの戦いで平面だった背景が突如として割れて四角柱的な形に変化し、ステージを立体的に使って走り回るなどは現代的な演出だそうです。

そのどちらもが、シーンの魅力を引き出すことに、とても効果的に働いていたのは間違いないと思います。

5)ヒーローものの源流を感じる

5人のインドの王子様が色違いの衣装をきて隈取りをしているのですが、その姿は戦隊もののそれのようでした。

性格もケンカっ早いやつ、秩序を重んじるリーダータイプ、癒し魔法が使える役回りなど、キャラメイク的な意味で、いい感じに分かれています。

また、悪役は、仮面ライダーの悪役みたいなギラギラした甲冑姿で、こういうの好きっていう感覚が受け継がれていって今のヒーローものができたのでは?と思うくらいには、同様なワクワク感がありました。

この作品では神のご加護を得た登場人物たちがそれぞれに特殊能力が一つ使えるのですが、それがもう、まさに少年漫画的で、いい感じに使いこなしていくのも、逆に笑えるし、そういうジャンルのコンテンツでのベタな待ってました感もあって良いです。

初めてでも歌舞伎が楽しめたこと伝わりましたでしょうか

本当に歌舞伎は400年受け継がれるだけある、れっきとしたエンターテイメントコンテンツだとしみじみ思いました。この感じ、伝わったかなぁ。

念のため補足すると高尚なものが理解できる自分の教養の高さをアピールしたいとかそんな下心は一切ありません。

むしろ感動が何によって引き起こされてるのか、歌舞伎を見る際の解像度の低さから言語化できなくてもどかしくて仕方ないし、歌舞伎を長らく見てるからこその、歌舞伎俳優さんのこの演技やっぱいいわぁ、かっこいいわぁみたいな感覚は全然湧きませんでした。

目が歩くてコンタクト入れても0.8くらいしか視力がないので顔はほとんど見えないのも無念でした。(オペラグラス必要でした。)

でも、それでも存分に楽しめるのが歌舞伎なのです。

そうしていろいろ見た後に地下でみるお土産屋さんもなかなかに圧巻でしてこれについてもまたどこかでまとめたいと思っています。

はじめての歌舞伎、現場からは以上です!

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