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りんごのお酒が掘り起こす、遠い昔のふたつの記憶


のっけから自分語りで恐縮なんだけど、私の好きな3大飲みものが

コーヒー

ウイスキー

そして

シードル

でして、りんごそのものはそれほどでもないのにとにかくシードルが好き過ぎてそれはもう日々がぶ飲みしているのですが、しかし一方りんごのお酒でもカルヴァドスは飲んだことなくて、今回そのラベル制作をご依頼をいただいたのをきっかけに飲んでみるのが初となったです。

初めてカルヴァドスを飲んでみた感想:

思ったより甘くない

いえ、甘い飲み物があまり好きでないのでそれは全然いいのだけど、「りんごのお酒」というイメージから勝手にもっと甘い飲み物を想像していたので、甘くないのに奥深くりんごのさまざまな要素があってとてもおもしろいお酒だなと思いました。すごい素人っぽい感想だけど素人なのでご容赦ください。

果物の、アクというかえぐみというか、そういう必ずしもポジティブでない要素も含め味わいとなっているのがいいな、すごいな、と思い、もともとりんごのお酒の大ファンだったとということもあり、いま個人的にいちばん興味深いお酒ですカルヴァドス。

そのままで、ロックで、ソーダ割で、りんごジュース割で、

つまみなしでじっくりとお酒だけで向き合うもいいし、

バウムクーヘンやフィナンシェなどバターの効いたスイーツとあわせても最高。

フレンチの素朴な家庭料理とも相性最高。食事に合わせて飲むだけでなく料理に使ってもいい。チキンのクリームソースとか、ポークローストとか。ル・クルーゼで作れば、我が家はもうノルマンディ。ノルマンディてどこかよく知らないけど。


ところでみなさまはお飲みになりますか、カルヴァドス。

飲まないでしょう。

知ってますよ。

でも、これ読んでちょっと飲みたくなったでしょう?

私自身、前回のモルトは下野さんにいただいた1本しか持っていないけど、今回は、自腹でプラス2本買うつもりだからね。

前回のボトルが「向き合う」がテーマでしたが、個人的にはこちらのほうがじっくり向き合いたいボトルとなりました。カルヴァドス自体まだ飲み慣れていないぶん、これからどんどん新しい発見がありそうで、すごく楽しみなのです。


ここまで読んで「ああ、これはもうぜひ飲まなくては!」と素直に思ってくださった素晴らしい皆様はいますぐモルトヤマへ行きポチしてください。貴方様の2021年は吉祥間違いなしでございます。


いや、それほどでも…という方は以下の制作秘話へお進みください。ただし18禁です。







* * *







【倫理と美との間】



「酔いつぶれた(グリム童話の)白雪姫を描いてほしい」



前回と違い、このカルヴァドスのラベル制作にあたっては、モルトヤマさんから直々にモチーフの明確なリクエストがあった。


しかしこのご要望を聞いて、最初に思ったのは


「うわぁ…それは、まずいなあ」


ということだった。


理由は、聞いた瞬間、大昔に見たとある映画のとんでもないワンシーンが即座に、鮮明に蘇ってきたからである。


あの困惑をまさか自分が直に体験することになるとは、まったくもって、人生なにが起こるかわからない。


まあ、だから人生おもしろいんだけどもね。



その映画とは『ラリー・フリント』

ポルノ雑誌「ハスラー」創設者の物語である。


ラリーは幼いときから密造酒を売り歩き、およそ20年後に「ハスラー」を創設。

その誌面の企画会議(?みたいなもの)で、彼の妻がこう提案する。


「ドロシーと、ライオンと、ブリキと、かかしが、4人でやってる絵はどうかしら」


それを聞き、いくばくかの良心ある者が呆れてこう言う。


「オズの魔法使いは子供たちの宝だ...それはいくらなんでも...



思い出したのは、こんなやりとりのシーンだった。


そう、児童の知的財産に「酒/薬/賭博/猥褻」を絡めるのはご法度である。まともな大人なら。


だから今回のリクエストも、聞いたときはかなり戸惑った。


問題はそれだけではない。白雪姫というキャラクターも実はハードルが高い。

白雪姫は某有名テーマパークでおなじみの映画のイメージが強いが、あれはあちらの著作物なので似せてはいけない。しかし、あのキャラクターのイメージが強すぎるがゆえ、あまりにもあのキャラクターとかけ離れた絵にすると、人々が白雪姫と認識できないというジレンマを抱えている。


いろいろ難儀なので、断ろうかとも考えた。


しかし


実はこのご依頼を聞いて、もうひとつ、大昔のことなのに鮮明に思い出したことがある。

おなじみ昭和の名作ドラマ「家政婦は見た!」のワンシーンだ。

物語のキーパーソンの男が、とある女(大女優)のことを


「彼女はミネラルウォーターのような女」


と言い、その一方で、もう一人のあまり冴えない女のことを、


「カルヴァドスのような女」


と評する。

それを聞いた家政婦の秋子さんは、心の中でこう呟く。

(市原悦子さんの声で脳内再生してください)


「無味透明なお水と、りんごのブランデー。どちらが男心を酔わせるか、答えはあきらか」


一見冴えない女のほうが実は...というオチのお話だったと思う。



しかし、どちらも思い出せないほど大昔に見たほんのワンシーンなのに、なぜこんなに鮮明に思い出すのか。

おそらく、人はいけないことのほうが好きだから、と思う。

「ハスラー」も「家政婦は見た!」も、どちらも人の覗き趣味をキャッシュに変えた。

そして一世を風靡する大ヒットとなった。


物を作る者として、常々、可能な限り「つまらないものに神経奪われるよりも美しきを紡ぎたい」と思っている。

しかし一方で、人の心に潜む醜悪さから目を背けては、人の心を打つの美しさに到達できない。それは紛うことなく人の一部(しかも結構な大部分を占める)だから。

このご依頼をきっかけに、遠い昔の物語の一部を思い出したのも何かの縁のような気がした。チャレンジングなお題は創作者冥利につきるとも言える。


黒い白雪姫、白いのに黒い。黒いけど、でも白い。

おもしろい。描いてみようじゃないの。


...というわけで誕生したのがこのラベルです。ぜひ写真だけでなく、お手元にとってご確認ください。


ところで映画「ラリー・フリント」の原題は「The People vs. Larry Flynt」、つまり、善良な市民vs下衆な男、というわけです。よかったらみなさまも見てみてください。ラリーの妻アルシア役、コートニー・ラブ(故Nirvanaカート・コバーンの嫁)の素敵なおっぱいが見れますよ。
(※ただし、倫理観正義感の強い方にとっては超絶むなくそ悪い話なのでおすすめしません。ご視聴は自己責任で)

倫理と正義に毒されていないあなたは一緒にカルヴァドスのみましょう。そして願いの井戸にもたれて、上品に泥酔するのだ。こんなふうにね。

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本品のおもとめはこちらから(いますぐGO!)↓
https://singlemalt-whisky.net/7309/

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