【コーヒーとTDS/収率】TDSと収率は計測対象となる時間軸が違うという考察
はじめに
記事内では収率のことをEYと書きます。
ついこの間TDS計を購入しました。
コーヒーの濃度を測って、技術の向上に役立てるものです。
2週間ほど前のことですね。
これはファーストインプレッションの記事です。
これまでの自分のレシピが、上手く淹れられる可能性の低いものだったかもしれない、という衝撃の事実がわかりました。
それからというもの、コーヒーを淹れるたびに数値を測り、嗅覚、味覚体験を観察しながら、今目の前にあるこの液体に、抽出の過程で何が起きていたのか、ということに思いを馳せていました。やりがいがあり、とても幸せな時間でした。
あれこれと試行錯誤を重ね、昼夜問わずに考え続けた結果、私の頭の中でコーヒーの真実にぐっと近づける手がかりを得られた気がしたので、それを一度言葉にしたいなと思います。
何をどうやって使っているか
このデバイス、Difluid R2といいます。
いわゆるTDSメーターというやつ。
国内でも~4万円のレンジでいくつか選択肢があります。
性能と価格のバランスが良くて、取り回しの良さそうなサイズということでこれに決めました。
操作はシンプル。精度も高い(らしい)。
絶対的な値段は高いのでもういっこ低いグレードのやつでもいいかもしれませんね。
コーヒーを淹れ終わったら、付属のスプーンを使って測定部分にコーヒーを乗せ、ボタンを押すだけです。
得られる結果
TDS(Total Dissolved Solids=総溶解固形物)が得られます。
次に、得られたTDSからEY(Extraction Yield=抽出収率)を手元で算出します。
TDSはコーヒーに含まれている水以外の成分(=抽出したコーヒー成分の割合)で、EYはコーヒー豆の総重量のうち、液体に抽出された成分の割合です。
この二つの数値と官能による評価を合わせ、良し悪しの考察と次回の改善点の洗い出しをします。
TDSとEYに関する考察
3週間ほどこのデバイスを使ってコーヒーを何十杯も淹れました。その結果わかってきたことがあります。
すごく大事な前提ー個体差はとんでもなく大きい
前回の記事で目安としての適正値について触れました。
かなり昔に発表されたものですが、現在でも一定の支持を得ているやつですね。
結論、この目安は役に立ちます。
初めての豆の最初の一杯を淹れる時の基準値として使っていいものだと思います。
その上で痛感したのが、「ベストなEYとTDSは豆ごと、抽出方法ごとにある」という原則です。
適正値に入ったらゴールではなく、その中で一番おいしい値を見つける必要があるのですね。
辿り着いたことはないのですが、確実にあります。
それも0.1ポイント単位くらいのかなりのピンポイントで。
また、抽出条件をいじった時の変化の現れ方の豆ごとの個体差もマジででっかいです。
・豆ごとに異なる「目標となる値」を予想する
・豆ごとの数値の変化の特性を推測する
・目標となる値に近づくための調整を行う
一回の抽出ごとにこれらを同時進行で考えなければいけません。
コーヒーを巡る旅とは、最高の豆の最高の抽出をキメるまでの長い長い道のりだということです。
果てしない。
TDSは美味不味の第一印象が決まる。EYは味のディテールを決める。
結局これらがコーヒーを飲んだ時の何にヒットするのか、という話ですよね。
言語化が難しい領域ですし、ちゃんと考察している人も珍しいのかもしれません。
現時点での私の理解では、TDSはあくまで味の濃い薄いが変わるもので、第一印象を左右する。
EYはそのディテールが変わる。というものです。
抽象的な例えを使って書きます。
抽出したコーヒーの味を100点満点で評価するのであれば
・TDSは60点台なのか、70点台なのか、90点台なのかといった、大まかな点数のレンジが決まる指標
・EYはそのレンジの中での1点単位の出来を決めるもの
というイメージです。
当たり前ですが、めちゃくちゃ美味しいコーヒーにするためには、両方の値をベストな数値にコントロールする必要があるのです。
ただし、変動幅に差があり、TDSの方がボラティリティが大きい指標になると思います。
TDSを大きく外した時は、不快と感じてしまうこともあるくらいです。
「いい豆を使っているはずなのになんか不味い」という場合には、まずは高すぎる/低すぎるTDSに原因があると考えた方がいいです。
逆に、豆やグラインドに問題がない前提であれば、多少EYにブレがあっても、TDSが適正な幅に収まっている限り第一印象は「美味しい」と感じられるはずです。
鍋にして味付けミスらなければ大体なんでも美味い理論と一緒です。
でもそのうえで、今回私が一番主張したいのは
レシピを調整するときはEYをベストな数値にすることを優先すべき
ということです。
なぜなら、TDSは後から調整可能だからです。
TDSはコーヒーに含まれている水以外の成分、つまり抽出したコーヒー成分の割合で、EYはコーヒー豆の総重量のうち、液体に抽出された成分の割合です。
気付きますか?
TDSは今目の前にある液体の状態を測っていて、それをもとにEYによって抽出に工程で起きた過去の現象を紐解いているわけです。
なので、淹れ終わった時点でEYは二度と変えられないんですよね。
一方TDSは水と成分の比率でもあるので、水を加えれば低く調整することは可能なのです。
つまり言いたいことはこうです。
TDSとEYを同時にベストな数値にするのは至難の業。
だから、抽出の工程では少なくとも後から変えることのできないEYをベストにすることに全神経を注ぐべきだ。
そのあとで、お湯を加えてTDSをちょうどいいくらいに調節すれば、最高のコーヒーのハードルは少し低くなる、そう思った次第です。
仮説の域を出ない言説ではありますが、これから私は初めての豆に出会ったときは、まずベストなEYを探し当てることを目標にコーヒーを淹れて、飲むわけです。楽しくなってきましたね。
ちなみにこれはペーパードリップの話で、エスプレッソについては全然違います。
ご理解ください。
おわりに
テンションが上がってここまで書いてしまったはいいものの、どこか違うと後で気づくこともあるのだろうなと思っています。
この辺の話について詳しい方がいらっしゃったら、ぜひ教えてほしいです。
私は今学習意欲がとても高いです。
もしくは、もしかしたらありきたり言説かもしれないので、似たような話を見たことがある方はぜひ教えてください。
TDS計、コーヒーを淹れる方なら一度は使ってみてほしいです。
一回の計測でもいろんなことを考察できますよ。
次は最新のコーヒーセットでも紹介します。
それでは。