【インタビュー】1人で生きてた頃より障害を負い目に感じることが増えたけど、わが子のためにできることを楽しくがんばろう!小澤綾子さんの育児

「10年後、あなたは車椅子。その先は寝たきり。」

20歳の頃、進行性の難病 肢体型筋ジストロフィーと宣告され、現在車椅子生活を送る小澤綾子さん。
元気でいられる時間が限られているなら今を全力で楽しもうと決め、歌と講演の活動をしながら外資系のIT企業で働く小澤さん。念願の赤ちゃんを出産し、夫と共に育休を取得。現在育児に奮闘中です。

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https://note.com/wheelchairfamily/n/nbf762c9c8e01


産院にて我が子を抱き寄せる小澤さん

赤ちゃんも100日を過ぎ、随分眠ってくれるようにはなりました。
赤ちゃんの夜間のミルクは夫が担当しています。

寝てていいよと言われても、気になって起きてしまうんですよ。
大丈夫?なんでこんなに泣いてるの?と心配で。

夫の方が育児の負担が大きいので、疲れてるだろうなと心配です。

障害のない夫婦なら、父母で寝る時間をずらして、赤ちゃんの夜間のお世話を分担しているなんて話を聞くんですが、私が1人ではだっこができないから、私の番でも結局サポートするために夫も起きなければいけなくて。

ゆっくりさせてあげたいし、朝は寝かせてあげたいなと思います。


子どもがギャン泣きの時は抱っこで揺れなければ泣き止んでくれないんです。そうなるとバアバかパパにお願いしなければならなくて、私にはできないんですよ。それがとても悲しくて。

立って抱っこしたら泣き止むことはわかってるのに、できない。

立位のとれる車椅子を注文してみたので育児で使えないかな?と思うのですが
あの縦揺れは再現できないからどうかな?


出産のこと

主治医が色々調べてくれて、筋ジストロフィーの人は筋肉へのダメージが少ないのは経膣分娩だろうということになったのですが
医療体制が整っている方がいいだろうということで無痛分娩を提案されました。


背中に無痛の管を入れて、翌日に子宮口を開く処置をしたらもう陣痛の波形が出始めました。でもどんどん耐えきれなくなり、テニスボールを当ててもらったりしましたがどうしようもない痛みで叫んだり、夫にキレていたようです。
先生に痛みを訴えると、「うちは和痛だからね!」と言われて驚きました。
無痛でイメージしていたから、こんなことになるなんて聞いてないよという気持ちです。

分娩時は陣痛がきたらもう分娩台に上がったんですが、
分娩台への移動は私は背も高いし、お腹も大きい上に色々つけているし
病院の先生たちが事前にリハーサルを何度もしてくださっていました。
数人で引っ張っての移動です。
事前に色々考えてくださいました。

朝から痛みが強まり、お昼前には「いきんで良いよ」と言われて、2〜3回で生まれてきてくれました。
あれだけ痛いんだから赤ちゃん自身も痛かっただろうのに、よく生まれてきてくれたなと感動して幸せでした。

苦しかった産褥期

産後は本当に辛い!
あんなに産後が辛いとは聞いていなかったから、誰かに教えて欲しかったです。

赤ちゃんのお世話はまだよくわからないくて不安だし、体はただ辛いし。
傷が痛すぎて、車椅子には座れなくて、寝たきりのまま過ごしていました。
立てば少しはマシなのかな?と思いながらも立てないから痛みに耐えるしかありません。生まれるまでも大変ですが生まれてからは、より大変でした。

3日目までは多幸感と達成感で興奮して眠れずにいたんですが、急に悲しくなり涙が止まらなくなりました。
出産した病院はアロママッサージがあったんですが、そのお部屋へ行くと窓から海が見えて、
そしたらなんだかよくわからないまま、涙が溢れて止まらなくなりました。

体は痛いし動けないし、赤ちゃんのお世話はできないし、手伝ってくれる看護師さんも毎回違うので、その都度一から移乗方法などを伝える必要があり、大変でした。

排泄障害はないのですが、排泄も産後は上手くいかず、初めて人に委ねることになり戸惑いました。
悪露漏れも排泄の失敗も何度もあり、その片付けをお願いするのも
自尊心が傷つき、酷い羞恥心と無力感に駆られ、夜中に夫に泣きながら電話しました。

赤ちゃんがいて幸せなはずなのに、悲しいし苦しいしとても辛いのだから自分でも不思議でなりません。

抱っこしてあげたいしオムツも替えてあげたいのにできない。助産師さんがいないと何もできない自分が嫌で。

こんなにも何もできない自分を突きつけられ、今後どうしていこうと途方に暮れて、どん底に叩き落された気分でした。夜中に辛くて何度か泣き叫んでしまったこともありました。

メンタルが安定せず、入院が伸び、産後は10日間入院しました。最後の2日間は夫も入院先に泊まり込みで、赤ちゃんのお世話の特訓をしてくれました。

産後のメンタルはなかなか回復せずに本当に苦しかったです。
3か月以上経ち、やっと落ち着いてきた気がします。

障害を負い目に感じることが増えた産後

夫が何でもできてしまうので、母乳だけは私の出番!私にしかできない唯一のことと思ってしまっていました。

処方されたメンタルの薬が母乳に影響する薬だったため、私の唯一できることを取られたくないという思いが強く、断薬することになりました。

そのせいもあってか過呼吸になったり、手伝いに来てくれた親にキレてしまったり、死にたいと泣き出してしまったり。

酷い状態だったと思います。生きるのに必死でしたね。
それを本当に良く乗り越えたなと思います。

わかっていてもどうしようもなくて
昨日も夫に対して、つい感情的になってしまい
「そろそろそういう感情的になるのはやめて欲しい。」
と言われ、わかってはいるんですがやめられないんですね。

一緒に育児をしているとは言いつつも
どうしても夫に赤ちゃんのお世話は頼ってしまう部分が多いので
どこかしら負い目というか、申し訳なさもあるんですが上手くいかない。

夫の手を煩わせないよう自分でやろうとすると、
失敗してしまい逆に手を煩わせてケンカになったりもありますね。

赤ちゃんのだっこも私が抱っこしてるとそのうち赤ちゃんが、そうじゃないって泣いてしまうんですね。

夫にだっこで揺れてもらえばいいのはわかるんですが
夫が疲れてるのもわかるから頼みにくいし、私も赤ちゃんの要望通りに立ちたいけど立てないし。

私が立てれば良かったのに!歩けさえすれば誰も困らせることは無かったのに!と
1人で生きてた頃より障害を負い目に感じたり、障害が無かったらよかったのにとより強く感じてしまうことが増えました。

1人だったら我慢すればそれで解決しますからね。
でも赤ちゃんのためと思って上手くいかないと、自分を責めるしかないんですよね。

日々葛藤です。

でもわが子は可愛いんですよ。この子に悲しい思いをさせたくはないから、少しでもできることをしていきたいです。

楽しく頑張ろうと思っています。


工夫をしながらなんとかやってきたいけれど

抱っこ紐はいろいろ使ってみて模索中です。
1人では上手く付けれませんが、抱っこ紐で抱っこした時の密着感には感動しました。
手の力が弱くて自分の方に抱き寄せれないから、抱っこ紐でくっついて抱っこできたのには感動しました。

育児用品は障害によっては使い勝手のよくない道具もありますが、
うまく工夫して乗り越えている他の障害のあるママたちを見ると、私も工夫しながら色んなことができるようにしていきたいです。

おうちのことは週2回ヘルパーさんにお手伝いしていただいています。色々手伝ってもらいつつ、何とか生きていけるようにしてます。

育児はヘルパーさんに入ってもらえない現状なので、夫と家族に手伝ってもらいながらなんとか回しています。

夫の育休中は育児支援が使えないとのことなので、育休明けから育児支援を使えるとは思うのですが、1人ではできない部分をサポートして欲しいという私の希望と行政の提案が噛み合わない歯がゆさを感じます。

重度訪問介護に切り替わり、私のお手伝いはヘルパーさんに週280時間していただけることになりましたが、赤ちゃんのお世話は居宅介護に入るそうで、1日3時間を週に2~3日と言われました。

それでは24時間待ったなしの赤ちゃんのお世話には到底足りなくて、話し合いを進めています。

例えば赤ちゃんを抱っこしたいけど自分では抱き上げれないから、そこをお手伝いして欲しいんです。赤ちゃんを丸投げでお願いしたいわけではなくて、障害によってできない部分をサポートして欲しいんですが、なかなか理解はしてもらえず難しいですね。柔軟な制度であってほしいです。

うちに来てくれるヘルパーさんや訪問看護師さんも「ほんとは赤ちゃんのお手伝いもしたいです。」と言ってくださるのですが、制度上、手伝ってもらうわけにもいかずお互いにもどかしい思いを抱えたまま同じ空間にいるのか今の現状です。

まとめ

小澤さんご出産おめでとうございます。
旦那様と一緒に育児をし、出産後間もないうちから様々な活動を精力的にこなされている小澤さんですが、産褥期は壮絶な思いをしながら日々を過ごされてきました。

産後は多くのママたちが体・心・生活の大きな変化に戸惑うことになりますが、障害があればそこに障害を持つからこその困難さがプラスされます。

そしてそれは一面ではなく全てにおいて負荷をかけてきます。

慣れない育児をしながら、様々な交渉やお願いするのはとてつもないパワーがいることです。

それは相手が誰であっても同じこと。

相手が家族の場合は、「疲れてるよね」「代わってあげたいな」という愛情があるがゆえにもどかしさを感じることもありますよね。

妊娠出産を経て今まで見えなかった自分に気付かされ、親も少しずつ成長を迫られるのかも知れません。

小澤さんファミリーの健康と、赤ちゃんの健やかな成長をお祈りしています。

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