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【インタビュー】初めての出産、準備から見えてきた壁の数々。今を全力で楽しむと決めた小澤綾子さんの思い

「10年後、あなたは車椅子。その先は寝たきり。」
20歳の頃、進行性の難病 肢体型筋ジストロフィーと宣告された小澤綾子さん。
元気でいられる時間が限られているなら今を全力で楽しもうと決め、歌と講演の活動をしながら外資系のIT企業で働く彼女は今、車椅子で生活しながら赤ちゃんを妊娠中です。(インタビュー当時)。 

子どもを育てることに対して不安はなかった?

育児に対する不安はありました。
だから、自分でできる最大限の準備を子どもが産まれるまでにしておこうと思ったんです。
育児支援でヘルパーが使えないかを考えたんですがあまり時間が下りないことがわかり、「少ない時間数で充分な育児ができるんでしょうか?」と相談員さんに質問をしたのですが平行線でした。
最終的に、家族の意向もあり、既に夫が育休をとってくれること、母がしばらく仕事を減らして手伝ってくれるということで話が進み、育児は家族に頼ることになりました。

子育てをしていく上で、どんな準備をした?

自分に障害がありどう赤ちゃんをお世話していくのかイメージがつかなかったんですが、地域の保健師さんがうちに人形を持ってきてくださって、着替えさせる練習をしてみたり、夫が沐浴の練習をしたり事前にすることができました。
夫は育児が楽しみなようで嬉しいです。保育園に行くようになったら、送り迎えは私もできるのかしら? 沐浴はバスタオルをもって受け取るのを担当できるかな?
例えばベビーベッドやベビーカーなど車椅子では使い辛いベビー用品も多いのですが、工夫してやって行くしかないなと思っています。

動き出した子どもと「キッズリード(ハーネス)」について

先輩の車椅子ママに、育児が一番大変な時期は動き出す1歳を過ぎた頃だと聞きました。
世間一般にウケは良くないようですが、子どもにハーネスを付けないと子どもの安全を守れないよと聞きました。
ハーネスなんかつけたら子どもが可愛そうとの声もありますが、子どものためが第一。
世間の目ももう少し寛容になったらいいなと思います。

頼る先の選択肢を広げておきたい私自身の思いと、家族の思い

思わぬ壁も。
夫は「自分が全部やるから頼ればいいよ。」というタイプですが、 私個人は、家族だけに頼ると家族の負担が大きくなることや、いざという時助けとなる柱は1本より複数あるほうが安心だなと考えています。
色んな選択肢を拡げて、子どもを守っていきたいんです。
夫の育休が終わったらどうするかということも視野にいれつつ、ヘルパーさんのことも考えなくてはいけません。

重度訪問介護の区分変更や、支給の交渉で役所の窓口に行くのは、なかなか労力が必要です。
他の障害のあるママさんたちは、旦那さんに頼れない人は「どうにか乗り越えてきました」「支援を勝ち取ってきました」という方も多くいらっしゃった。そういった声からも、エネルギーがとられる大変な作業だなと感じます。

自分だけでなく家族の思いも汲み取りながらとなると、一筋縄では行きません。
18歳未満の子の子育てにヘルパーの支給が下りると厚生労働省からは通達がありますが、現実はなかなかそれが当たり前とはなりませんね。
人手も足りないだろうし、色んな難しい問題があるようで、役所は「とりあえず家族で何とかしてくださいね!」というスタンスのように感じました。
そう言われてしまえば、頼れなくなってしまいます。
行政は弱い者の味方であって欲しいです。
どうにかできない時に頼れる先が欲しいですよね。 私はなんとか頼れる家族がいましたが、そうじゃない人もいます。
頼れる手が無かったとしても、子育てができる選択肢ができるといいですね。
少子化と言いながら、安心して求められる頼り先が整わないのはどうして?と不思議でなりません。                

これからの活動、どんなふうに変わると思いますか?

30代は個人そしてBEYOND GIRLS(ビヨンド・ガールズ)の活動で講演やコンサートやメディア出演での発信活動など様々な事にチャレンジしてきました。
活動を通して世の中がもっとハードもソフトもバリアフリー化していけばいいなと。少しでも社会が変わるよう動いていけたらと思っています。
仕事はずっと続けて行きたいと思っていますが、生まれてくる命を前にした時、家族をまず大切にしていきたいと感じるようになりました。この先はまだわからないけれど、子育て、そして新しいの育成も大切にしていきたいです。

周りの車椅子のママたちはみなさん若くて、みんな若い時に子どもを産んで凄いなと思います。
私は難病・障害に加えて高齢なので体力がありません。頑張らなくちゃ! でもだからこそ無理しすぎず頼れるところは人に頼って、使えるツールは何でも使って、輪を拡げながら子育てできればいいなと思います。
私は障害のある先輩ママさんたちと繋がれてとても心強く感じました。

出産、がんばります!

まとめ

進行性筋ジストロフィーと宣告され、一度は妊娠出産を諦められたそうですが、常にチャレンジを続ける小澤さん。
1月末に無事元気なお子さんを出産されました。おめでとうございます。

障害者の育児支援制度と経緯

令和3年7月12日、厚生労働省は、「障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」の取扱いについて」を発出しました。これにより、障がい者自立支援法上の居宅介護(家事援助)、重度訪問介護で、育児に支援が必要な障害者が受けられる育児支援の対象範囲が拡大されました。

【これまでの対象】

  • 沐浴や授乳

  • 乳児の健康把握の補助

  • 児童の健康な発達、特に言語発達を促進する視点からの支援

  • 保育所・学校等からの連絡帳の手話代読、助言、保育所・学校等への連絡援助

【新たに対象に含まれたサービス】

  • 利用者(親)へのサービスと一体的に行う子ども分の掃除、洗濯、調理

  • 利用者(親)の子どもが通院する場合の付き添い

  • 利用者(親)の子どもが保育所(場合によっては幼稚園)へ通園する場合の送迎

これにより平成21年7月1日付けの旧事務連絡は廃止となりました。

2007年の秋、障害を持つある女性がmixiに書かれた日記が元となり、障害者自立支援法に障害者の子育て支援を組み込むための活動が巻き起こりました。

そうやって実現した障害を持つ人の育児支援に助けられ、「育児をしよう!これでママになれると思えた」「ヘルパーさんが来てくださるから何とかやれている」という声もある一方、制度に組み込まれ10年以上経った今も、「制度があるのに人手がないと言われ使えない」「母親しか使えないと言われた」「制度はあるが前例がない」「パートナーがいるなら使えないと言われた」「窓口で戦わなければ支給してもらえない」などの声も聞こえてきます。

ある日突然、親が事故や病気で障害を負った時、子どもを育てていくことができず路頭に迷う現実が待っているとしたら?少しの手を借りればできるのに、それが叶わないとしたら?

障害を負い、幼い子どもを抱え、行政の窓口で戦わなければいけないとしたら?もしものことがあっても、不安なく子どもと一緒に過ごしたいと思いませんか?

障害ある親への育児支援は、全ての子どものための福祉に通ずる制度です。

私たちは有志で活動しています。よろしければサポートお願いします。活動費として大切に使わせていただきます。