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【トークライブ】脳性麻痺の車椅子ママ けーに聞く妊娠出産育児のはなし2024.6.23 14:00~Xにて開催

はじめに

 2024.6.23 14:00よりトークライブ『脳性麻痺の車椅子ママけーに聞く妊娠出産育児』を開催しましたので、ご報告いたします。


けーの紹介

 超未熟児出生により、脳性麻痺による四肢体幹機能障害となり、小学生の頃から車椅子を併用した生活を送っています。現在は精神保険福祉士として障害者の就労支援、就労相談に従事し、2023年に第一子を帝王切開で出産し、1児の母に。

超未熟児で生まれて

 28週1195gで生まれ脳性麻痺となり、障害が残りました。出産予定日は11月半ばでしたが8月末に生まれることになってしまい、その大きさで生まれて、生きていられるのも奇跡的。障害が軽度なのも奇跡的と言われてきました。母になった今はそれがどれほどのことかわかるのですが、子どもの頃は奇跡の実感はありませんでした。

 自分が障害児なんだということを自覚し始めたのは幼稚園の頃でした。
    補装具や歩行器を使うのは自分だけなんだな。みんなはそういうのがないんだなと子ども心に認識していましたし、1歳上の姉とも自分は違うんだなと漠然と感じていました。

 今は主に歩行障害が中心で、歩くことはできますがうまく歩くことが難しいです。室内や短距離は歩行していますが子どもが生まれてからは安全のために車椅子で外出することが多くなりました。

結婚や出産への思い

 多分私は恋愛体質で人に依存する傾向があるのか高校生以降、彼氏が途切れたことがなかったんです。高校も大学も、基本的に彼氏がいたので、障害があるからということで引け目に感じることはありませんでした。

 今のパートナーと出会ってすごく落ち着いて、知り合って1年もせずに付き合うようになりました。この人と結婚するんだろうなと漠然と思っていましたが、なかなかお互いの環境が落ち着かず、うまく結婚までたどり着けなくて。付き合ってから結婚までに6~7年かかりました。

  障害があるから結婚できない!みたいなことは私は考えたことがありませんでした。今のパートナーと一緒に暮らすとなったタイミングで将来を考え挨拶に行きましたが、あちらのご両親には反対され、うちの親は夫に私の介護を頼んだりして。
 私たちは障害がどうこうではなく、お互いに苦手なことを補いあって持ちつ持たれつやっていこうという意識なんですが、やっぱり世代が違うと考え方が全然違うなと感じました。

 私たちの意識では、結婚に関しては障害をハードルだと感じたことはありませんでした。

 子どもはお互い欲しいと思っていけれど仕事が忙しかったこともあり、結婚から3年ほどは妊娠できませんでした。
 これまであまり障害者だから…と思ってきたことはなかったんですが、妊娠してはじめて障害について考えるようになり、障害と妊娠出産育児のロールモデルを検索し、そこでウェルチェアファミリーを知りました。身近には同じ障害で妊娠出産をしている人はいなかったんです。

 脳性麻痺だから子どもが産めないということはないだろうから、妊娠してから考えようかなくらいの気持ちでしたが、いざ妊娠すると本当に産むんだなという実感が急に湧いてきて病院の先生に「私は産めますか?」と聞きました。臨月まで見て検討するから、産む方向で行きましょうと言われ、よし産めるんだなと。
 いくら調べても脳性麻痺の出産に関すること情報はほとんどありませんでした。何があるかわからないけど、できることをしようと思いました。

 ずっと子どもが欲しかったから、妊娠がわかった時は凄く嬉しかったんです。ちょうど2年前の今頃でした。

安定していた妊娠期間だったけれど…

 比較的安定した妊婦期間を過ごし、バリバリ仕事もこなしていました。
 産休に入り35週になった途端、突然股関節に強い痛みを感じて動けなくなってしまい驚きました。痛みのため、歩けないし立てなくて、這ってトイレに行こうとするんですが這おうにも、おなかが邪魔でうまく這えず途方に暮れました。

 夫は仕事に行くので、とりあえず生活できるようにしなくてはと、室内でも車椅子に乗るようになり、物を運ぶためのお盆や高いところのものを取るためのマジックハンドなどの細々したグッズを揃えました。寝室も二階から一階に変えましたね。

 出産は無痛分娩を希望し予約金を支払ったんですが、隣月になって一時逆子になったこともあり、産婦人科医数人で再検討した結果、帝王切開で産むことが決まりました。やっぱり下から産みたい気持ちや帝王切開に対する恐怖もあったんです。だからとても悩みました。
 
 私は股関節の開きが悪いので、開脚ができないとなると出産時に筋力もうまく伝達できなくなるから帝王切開なら何かあってもすぐに赤ちゃんが出せるよと言われ、安全のために帝王切開にしましょうという検討でした。
 分娩台が自動で開脚するタイプだったんですが、足が開き切らずに落ちてしまったんです。それを見て先生や助産師さんから、何時間かこの姿勢で産むことになるから、足が開かないとなると厳しいよと説得を受けました。

「この子が逆子になったってことは、ママの安全を思って、帝王切開にしなさいってことだったんじゃないの?」
との産婦人科の先生のつぶやきに納得し、無事に産めるなら何でもいいやと腑に落ちました。

 命を預かる側としては安全を取りたいのもわかりますし、私の無痛で産みたいという意志も理解し、その上で現状をいろんな先生に診てもらった上で、やっぱり帝王切開にしましょうという結論だったので、十分納得して帝王切開での出産が決まりました。

 驚いたのはそのあとで、手術室の空きの関係で翌日帝王切開することになったんです。あまりに突然のことでびっくりでしたが、翌日38週4日で予定より少し小さめに、でも無事に産まれてきてくれました。

ヘルパーさんどころじゃない!産後の育児

 一言で言うと産後の育児は壮絶でした。「記憶がない。」とよく言うじゃないですか。記憶がないって、本当にその通りだと思いました。

 病院に入院中は母子同室で自分で授乳やおむつ交換などのお世話はできていました。だから基本的には大丈夫だろうなと思っていたんですが、家に帰ったら床メインの生活で、お腹を切ってるのにかがんで赤ちゃんを置いたり持ち上げたり。おむつも授乳も最初は頻回なので、そのたび痛くてつらかったです。
 最初の頃は布団を一階に敷きっぱなしにして、その横にベビー布団を置いてお世話していました。産後2週間くらいは夫の仕事を調整してもらって、家にずっといる生活をしてくれました。床上げまでは、家事は全部やってくれ、協力的でした。
 事前に帝王切開のしんどさを伝えて、協力しないんだったら産まないよと伝えてたんです。お世話で夜も眠れないから、夫婦2人で産後を乗り切るには、協力してもらわないと無理なんですよ。夫が動いてくれたのは、とても助かりました。おかげで一番大変な時期は何とか2人で乗り切れました。

 ヘルパーさんには産後2ヶ月ぐらいしてから入ってもらいました。本当は産後すぐから入って欲しかったんですがバタバタして、それどころじゃないじゃないんです。急な帝王切開でしたし、寝てないし、人を家に入れられる状態でもなかったから、ちょっとずつ慣らしていこうかと思っていましたが、「急に出産することになったんで落ち着いてから…」と言ってたら、利用がどんどん後ろにずれて行ってしまいましたね。

 急なことでヘルパーさんとの調整もできませんでしたし、きっと産後すぐに入ってもらっても眠気と闘いながら必死に育児している中でヘルパーさんと育児や家事のやり方の共有をしている余裕なんてなくて。

 夫も仕事に戻って行きほぼワンオペ育児となったので、家のことを回していく難しさを感じて、産後2か月からヘルパーの利用を決意しました。

 福祉って必要になったその時に動いたのでは、動く余力がないんですよね。産後ケアのサービスも、産後のボロボロの状態で申請する余力がないんです。なのにその時にならないと自分に必要かどうかもわからないし、難しいなと思います。

 私は母乳が詰まりやすいタイプで、訪問型の助産師さんに頻繁に乳房ケアに来てもらっていたんですが、ヘルパーとの時間調整が大変でした。まさかヘルパーさんがいる前で母乳マッサージをしてもらうわけにもいかないので。
 夫がシフト勤務の仕事ということもあり休みがバラバラで、「この日はお願いします。この日はいらないです。」という調整もストレスに感じました。

これから障害を持ちながら子どもを望む人へ

 福祉制度や育児・出産に関する制度は、事前の情報収集がとても重要だと思います。産後に手続きや調整をするのはすごく辛かったです。
 今へルパーさんを使ってるなら、それをどうしていくのかを産前に話し合っておき、家族とも産後について決めておくことは大事だなと思います。

 生まれてみないとわからないし、どうにでもなるかと思っていたら、生まれてからは手いっぱいで、どうにもならなくなります。生まれる前に制度を使う、使わない、どうする、こうしようと決めておくとよいと思います。

 でも意外と車いすユーザーでも、障害があっても、育児はなんとかなるんじゃないかと思っています。借りれる手も0ではないはずだし、自分できることも意外とありました。
 自分でできないことばかりで、一人でつらくなったらウィルチェアファミリーにおいでよと言いたいです。経験者がたくさんいるから、自分に似た状態の人や似たような環境の人の話を聞くだけで安心したり、自分にもこういう風にできるんだ、こんな方法を試してみよう、自分はこれでもいいんだと自信に繋がるんじゃないかと思います。

 私も出産や育児についてをここで調べたり、出産後に同じ車椅子のママさんと繋がれて、「意外とみんなやれてるんじゃん」という安心感に繋がりました。

 出産前、できなかったらどうしようと思うことはすごく多かったけれど、意外とできることもたくさんあります。子どもの成長に伴って、対応の仕方も変わって、できなかったことが徐々にできるようにもなってくるし、手も掛からなくなっていきます。

 今ちょうど娘がちょこちょこと歩くようになり、階段では私もバランスをとるのが難しいため抱っこ移動が大変で、階段の上り下りを娘に教えました。声をかけると自分で階段から降りてくれるようになり、娘自身も「自分でできる」が嬉しくて、私もたくさん褒めています。
 相談できる場がここにあるよということを伝えていきたいですね。

おわりに

 脳性麻痺の車椅子ママ けーちゃんに聞く、妊娠出産育児のお話でした。ウェルチェアファミリーでは無料相談会の開催、noteへの先輩たちのエピソードの投稿、LINEのオープンチャットでの交流等実施しています。
 近くにロールモデルがない人や似たような経験をしている人と繋がりたい、情報がないという方をはじめ、どなたでもお気軽にご参加ください。

 ウィルチェアファミリーは皆さまのサポートで活動しております。サポートをよろしくお願いいたします。


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この記事を書いた人:

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