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【13000字】中小企業のためのブランディング -全体像を理解する-


この記事でわかること
・ブランディングとは?
・ブランディングの全体像
・ブランディングとマーケティングの関係
・ブランディングを行う上で重要なこと


「我が社のブランディングを考えるべきだ!」「まずはブランディングからやりましょう」

最近はそんな会話があちこちから聞こえるようになりました。ただ、改めて「ブランディングとはなんですか?」と問われた時どのような答えが思い浮かぶでしょうか?

ブランディングが大事なのはなんとなく理解はしているけれど、

成果に繋がる気がしない…
行動に移せていない…
実務に活かせる気がしない…

という方も多いのではないでしょうか?

また、ブランディングはスターバックスやAppleのような大企業だけができるようなものなのでは?という声もあるかもしれません。

私の回答はNOです。いかに規模の小さい会社であっても、ブランディングは必要であると考えています。ブランディングは大企業だけのものではありません。私自身、中小企業やスタートアップとしてお仕事をさせていただいた経験の中で感じるのは、むしろ中小企業やスタートアップこそ意識して取り組むべきものであるということです。

現在、日本においてブランディングに真剣に取り組んでいる企業は決して多くはありません。それは皆様もなんとなく感じていらっしゃるかと思います。だからこそ。ブランディングとは何なのか?どのような効果があるのか?どうして必要なのか?をいま理解し、実践に活かすきっかけにしてもらえると嬉しいです。

ブランディングは今後企業活動を続けていくための会社にとっての大きな太い柱となります。柱がしっかりとしていれば、昨今のコロナのような、突発的な外部要因が発生した万が一の時にもしっかりと支えてくれるでしょう。

ブランディングを行う大前提とよくある間違い

まず第一にブランディングをやる理由は以下の一点に集約されます。

「ブランディングの目的は売上を上げることにある」

ブランディングはなんとなくやるものでも、かっこいいからやるものでもありません。「売上を上げるため行う活動」であることが大前提です。

企業としての活動の一環であるため当たり前なのですが、クリエイティブやデザインの分野と混同されやすいことや、WEB広告のようにわかりやすい数値化が難しいため「なんか変えたいからやるもの」のようなザックリした理由で実行されることが多いように思います。

特に中小企業で起こりがちな問題として「WEBサイトが古くなってきたから新しくする=リブランディング」だと考えてしまうようなことが起こります。もちろんデザインが新しくなり、広く受け入れられやすくなることはいいのですが、実際制作するWEB制作会社さんがブランディングを意識した上で制作することは予算や工数などの障壁が多く、前述した「なんか変えたいから作った」という状況が起きてしまう場合があります。

もちろんこれだけではブランディングという観点から売上につながることはないでしょう。むしろ予算を中途半端に割いてしまったことで、すぐに手直しする費用を割くことがはばかられ、大幅なリブランディングを行うことが難しくなります。

また、デザインを変えた=リブランディングという認識のまま進んでいる可能性があるため、「リブランディングしてもあんまり変わらなかった」という認識が根付いてしまい余計にブランディング活動に対して消極的になってしまいます。そして付加価値を意識しない値付けによる薄利多売に向かうという悪循環が出来上がってしまいます。

ブランディングを行わないと薄利多売に走りがちという話ですが、ブランディングを意識していない会社は原価から逆算した利益の出し方(原価100円だから減価率が50%になるように200円で売ろう!)などの考えになりがちです。(データはないですが…)

原価から逆算して売値を決定する方法が必ずしも悪いわけではありませんが、本来得られたはずの十分な利益を得ることができず、将来への投資を行うだけの余裕もなくなり、自社でコントロールできる重要なポイントを逃すことにつながり、市場の変化に右往左往することとなる可能性もあります。

くどいのですが、大切なのでもう一度お伝えします。
「ブランディングの目的は売上を上げることにある」といえます。

この前提を理解いただいた上で本記事をお読みいただければ、ブランディングとはという基礎から、実際に使える・成果に結びつく具体的なブランディング施策まで理解いただけることと信じております。

そもそもブランドとは

ブランディングとは、を語る前にまずはブランドとは何かを掘り下げていきます。ブランディングとは本来ブランドを構築するための活動であるため、「ブランド」が何か理解できていないと「ブランド」を作ることはできないからです。

ここで突然ですが質問です。
「ブランドと聞くとどのようなことを想像されますか?」
少し考えてみてから次の文章にお進みください。


さまざまな回答があると思いますが、ルイヴィトンやグッチなどといった高級ブランドという側面の「ブランド」が思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか?

それでは、安売りで有名なSEIYUやドンキホーテなどはブランドではないのでしょうか?そのように言われるとなんだか違和感があると思います。

これらの違和感を解決する、ブランドの1つの考え方として以下のものがあるます。

ブランドとは「生活者の頭の中にある、特定のモノやサービスに対しての独自のイメージ」である

これをもとに考えると、あなたが知っていて何らかのイメージを持つサービスや商品、会社などは全てブランドということになります。たとえ知り合いの小さな会社であっても、頭の中に浮かんだ上でその会社に関する何かしらのイメージを持ったのであれば、それは浮かんだ人にとっては立派なブランドです。生活者の頭の中に独自のイメージが湧く時点で、ブランドは成立しています。

それでは逆にブランドではないものとはどのようなものでしょうか?

少し厳しい言葉になりますが、生活者の頭の中に浮かばないものはブランドにはなりえません。もしくは浮かんでも特に付随するイメージがわかないブランドはブランディング活動が不十分ということになります。

日本の中小企業の多くはそもそもこの「知られていない状態(=ブランディングが十分ではない状態)」にあることがほとんどだと考えています。だからこそ、まずはプロダクトや会社を知ってもらい、頭の中に浮かべてもらう。

つまり、多くの場合「認知を獲得していく施策」がブランディングとマーケティングにおいて重要であると考えます。(マーケティングとブランディングの関係についても後ほど詳しくお話させていただきます)
※勿論知られても継続的な収益には繋がらないようなモノやサービスでは意味がないので、そこがクリアされている前提でのお話になります。

ブランディングとは

ブランドとは何かがわかったところでブランディングについてご説明します。

ブランディングとはブランドを構築する活動のことを指すため、以下のように言えるかと思います。

ブランディングとは生活者の頭の中に独自の意図されたイメージを作り出す一連の活動

わかったようなわからないような感じだと思いますので、もう少し細かくご説明させていただきます。

おさらいするとブランドとは「生活者の頭の中にある、特定のモノやサービスに対しての独自のイメージ」であるということでした。

つまり、生活者に対して自社のモノやサービス、もしくは自社全体や事業全体に対して、独自のイメージを持ってもらうための活動全てをブランディングと呼ぶことができます。

「あれ?自社のイメージを持ってもらう活動がブランディングというなら、今やっている広告やチラシをつくったり、接客や内装工事とか全部ブランディングなの?」と思われるかもしれません。

しかしながら実際多くの企業は「ブランディングを行えていない」とお話させていただいた通り上記の内容だけでは不十分であると考えております。それでは何が足りていないのでしょうか?

意図されたイメージのための「独自のイメージ」と「一貫した発信」が重要

ここで大切なのは「独自のイメージ」蓄積のため、「一貫した発信」を行うことです。

先の定義で重要なのは「意図」というワードです。顧客の頭の中に意図された独自のイメージを貯めていくためには、こちらから「どのようなブランドであると認知されたいか」という観点からコントロールされた一貫した発信を行う必要があるからです。

例えば「カッコいい」というイメージを持ってもらいたいのに、発信がコントロールできずバラバラになってしまった結果「古臭い」などといったイメージを持たれてしまった場合ブランディング活動を行なっているようで、できていなかったということになります。

意図された独自のイメージが生活者に伝わっていない=コントロールできていないからです。

コントロール不可能になってしまっている時点で意図的にターゲットやキャンペーンなどを設定することができず、売上に繋がりにくい構造になってしまっています。

企業がブランディングを行う理由は売上を上げるためとなるので、コントロールされていないイメージが作られることは目的と反することになります。

そのためブランディングとは生活者の頭の中に自ブランド独自の意図されたイメージを作り出す一連の活動であり、そのためには一貫した発信をする必要があると言えます。

- まとめ -

ブランドとは
「生活者の頭の中にある、特定のモノやサービスに対しての独自のイメージ」

ブランディングとは
生活者の頭の中に独自の意図されたイメージを作り出す一連の活動

ここまでをさらにまとめると以下のようになります。

・中小企業こそブランディングが重要である
・生活者の頭の中に自社ブランドに対する独自の意図されたイメージを作っていく作業のことをブランディングと呼ぶ
・「どのようなブランドであると認知されたいか」という観点からコントロールされた一貫した発信を行う必要がある

ブランディングとマーケティングの関係性

ブランディングとは何かをご理解いただいたので、早速具体的なブランディング施策についてお伝えしたいところですが、ブランディングを行うには、マーケティング的視点からの施策検討も欠かせません。マーケティングとブランディングは切っても切り離せない関係だからです。

(早く施策について知りたい!という方もいらっしゃるかと思いますが、マーケティングとブランディングの関係性は重要なので、もう少々お付き合いください!)

マーケティングとブランディングの関係性について図でイメージいただきましょう。

マーケティングの中に内包される概念がブランディングです。

マーケティングとは

では、マーケティングとは何でしょうか?様々な解釈・表現の仕方がありますが、私の定義するマーケティングとは「売れる仕組みをつくること」です。

まずは売れる仕組みづくりのため、一例としてカスタマージャーニーを用いて私たちができることを洗い出してみましょう。

カスタマージャーニーとは顧客がモノやサービスを購入するまでの行動や心理を時系列に並べた表です。難しそうに聞こえますが、日頃商品を購入するときのことを思い出してもらえるとわかりやすいかと思います。その購入までの流れを可視化したものがカスタマージャーニーです。カスタマージャーニーにも様々な切り口があるかと思いますがここでは一例として以下のように設定致します。

上記のように購入までの流れを考えると、売れるためにはまず顧客に認知されていることが必要であると言えるかと思います。つまり先ほどブランディングの説明であったように認知を獲得していく施策が重要です。

しかしながら、認知されているだけではモノ・サービスは売れません。
知られている中で最終的に選ばれるためには、
・認知の質を上げること(興味)
・モノ・サービスの品質を消費者視点で向上させること(検討、リピート)が必要となってきます。

この認知の質を上げるというのは、知られているブランドの中で「ここはこのようなブランドなんだ」とより強く、より明確なイメージを持ってもらうということになります。

これらは顧客の頭の中に自社ブランドに対する独自の意図されたイメージを作っていく作業になるのでブランディングということができます。

また、売上を上げるためには需要のある市場に対して適したサービス、商品を提供することも必要です。このようにどこで戦うべきかを考え、決定することはマーケティングの仕事に分類されます。

市場に求められていないモノ・サービスにブランディングを行っても売上の最大化を見込む事はできません。市場が合わない場合は市場を変える、もしくは製品や提供の切り口を変える必要があります。いくらいい釣竿があっても魚がいない池では釣ることができないのと同じ状況といえるでしょう。

ブランディングは売り上げに大きく関わる

ここで、少し話を変えて、売上について考えてみたいと思います。売上とは、どんな要素で成り立っているのでしょうか?分解してみると…

売上=購入顧客数×購入回数×客単価とすることができます。

<<売上=購入顧客数×購入回数×客単価>>

つまり、売上を増やすには
・購入顧客数を増やすか
・購入回数を増やすか
の二択
になります。

値上げなど客単価を上げる施策はブランディングにより知覚品質が高まった状態で行うことが定石であるため、最初に検討すべきは、顧客数を増やす(購入する可能性のある顧客を増やす)もしくは顧客が購入する回数を増やすための施策となります。

客単価の向上をブランディングにより知覚品質が高まった状態で行う理由としては、付加価値をつけないと顧客は値上げに対して納得せず、離反が起こる可能性があり慎重になるべきだからです。正確にはメニューの刷新やアドオンを狙うことで客単価の向上も可能ですが、こちらもブランディングや全体戦略の上に成り立つ部分ですので本記事では割愛させていただきます。

ブランディングを意識すると購入顧客数の増加(認知の質の向上)と購入回数の増加(ブランドへの好意度の上昇)どちらも狙うことが可能です。つまり、初めにお話した目的の通り、ブランディングは売上に大きく関わっているということがいえます。

ここからは購入者数の増加(認知の質の向上)とブランド購入回数の増加(ブランドへの好意度の上昇)についてもう少し細かく見ていきたいと思います。

購入者数の増加(認知の質の向上)

購入顧客数を増やすために有効な施策の一つとして認知を高めるという方法があります。単純に予算を大きくかけ、広告出稿回数を増やすことで認知の"量"を稼ぐことは可能です。

しかしブランディングを意識すると、認知の"質"も高めていくことができるようになります。

例えば金麦のCMは季節やキャストなど、定期的に新しいものに変わっていきます。それでも「テレッテー♪テンテレレンテッテテ♪」という「ビタースィート・サンバ」の音楽が流れることで「あ、金麦のCMだ」と思うのではないでしょうか?これはつまり頭の中に金麦というイメージの資産が積み重なっていっているという状態になります。

別の例ではリンゴのロゴを見ると「Appleだ」とすぐに理解できるはずです。これはブランドに対する認知の質が高まっている状態であるということができます。別の言い方をすると、ブランドエクイティ(資産)を貯めているということができます。そしてブランドエクイティを貯めるという側面を意識することで生活者の頭の中にブランドへのイメージが残りやすくなり使い捨てのような広告がなくなり、無駄な出稿費が減少していきます。


ブランド購入回数の増加(ブランドへの好意度の上昇)

出稿数を増やすと単純接触効果などからブランドの好意度も一定の数値までは上昇が見込めます。

単純接触効果とは接触する機会が増えると、その相手に親しみが増す効果のことを言います。聴いていくうちにいい歌に聴こえてくる曲や何回も見るうちに何故か気になるようになるタレントなども単純接触効果の影響と言えるかと思います。

しかしながら、ブランディングを意識せずに認知度だけを高めようとする施策を行うと、ブランド名を連呼するような所謂嫌われる広告になったり、頭の中に溜まるブランドエクイティをつくれないまま垂れ流される広告になったりします。

嫌われるということは「どのようなブランドであると認知されたいか」という観点からコントロールされた一貫した発信になっていないため、ブランディングを行うことができていないといえるかと思います。

また、独自のイメージを貯めるためにはどこに溜まるのかという入れ物を用意してあげる必要があります。わかりやすいものではブランドロゴはイメージを貯める箱であると言えます。リンゴのマークを見るとAppleであるとすぐに思い出されると先ほど説明させていただきましたが、「リンゴ」=「Apple」=「洗練」など消費者がどのように思うかというソート分けをしやすいようになっていきます。

中小企業の場合、市場全体に対して認知度を獲得していくことはリソース上難しいため、小さく購買に近い一定のセグメントの切り口に対して高めていく施策を行う必要があるといえます。そのためには自社のサービス、商品の価値を最大化するセグメントをどのように切るのかという部分がポイントになってきます。

(詳細は中小企業のマーケティングでご説明する予定です。掲載後リンクを貼ります。)

ブランドエクイティ

ブランドエクイティという言葉がでてきたのでこちらで少しだけ説明いたします。ブランドエクイティとは文字通りブランドの持つ資産です。
生活者の頭の中に自社ブランドに対する独自の意図されたイメージを作っていく作業のことをブランディングと呼ぶとお伝えしておりましたが、実はここにもブランドエクイティの考え方が入っています。

意図されたイメージを作っていくこととはすなわち、管理が必要であるということになります。

現実世界の不動産や株など将来的に利益を生み出す可能性のあるものは資産にあたります。それと同じようにブランドも適切に管理することで利益を生み出すということができます。

それではブランドにおける管理とは何を指すのかみていきたいと思います。

ブランドの管理で大切なのは認知の管理とポジションの管理です。
それはブランドは不動産などとは違い、生活者の頭の中にあるためです。

つまりブランドが記憶されるには「どの分野で記憶されるか」と「どのように記憶されるか」という側面が重要になります。生活者の頭の中にある要素であるが故に、生活者の頭の中にある他のブランドと相対的に比較された上で、ソート・記憶されてしまうためです。

適切に管理を行わないと当然ですが、次第に忘れ去られていったり、覚えていても思い出す順番が下がっていったりしてしまいます。
そのため生活者と定期的にコミュニケーションを取ることや、コミュニケーションを取った際にブランドの価値をさらに向上できるよう一貫した発信になっているかの管理が必要になってきます。

先の内容と重複してしまいますが、ブランドエクイティを管理する上で重要な要素としては意図した発信が一貫性を持っているのかという部分、そして忘れ去られないための定期的なコミュニケーション、また自ブランドがどのジャンルで思い出されるのかという市場におけるポジショニングであるということができます。

認知に関しては下記記事に詳細がありますのでご覧いただけますと幸いです。


ブランディング実行プラン

ブランディングを行うサービス、商品の前提が整ったと仮定したうえでブランディングの実施に必要な具体的アクションを検討していきます。

①社員を巻き込む

ブランディングは会社全体で行っていかなければなりません。想像していただけるとわかりやすいと思うのですが、ある日トップダウンでいきなり決まったブランド計画を聞かされても守る気にはならないのではないでしょうか。

それは突然伝えられたブランドがあなたにとって「自分ごと」ではないからではないからそう感じるのです。突然渡されたヒヨコにそこまで愛着は湧きませんが、あなたが卵から暖めてやっと孵ったヒヨコにはきっと愛着が湧くでしょう。

そして人は、メリットのないことをやることが嫌いです。「これって意味あるの?」「何のためにやるの?」と感じながらイヤイヤ仕事をした経験があると思います。

関わるメンバー全員で、目的とその先にあるメリットを共有し、「自分ごと」として、策定プロセスに関わる(卵を暖める)ことで売上アップという結果(ヒヨコ)を得ることができます。

詳しくは後述しますが、大切なことは一貫性を持たせるために「約束を守る」ことだからです。だからこそ関わる人たちには出来る限り参画していただくことがブランディングにおいて重要であると感じます。

②ブランドアイデンティティ、ブランドプロミス、ブランドキャラクターを設定する

まずはそれぞれの用語を解説していきます。

・ブランドアイデンティティ
そのブランドがなんのために存在しているのか?これがブランドアイデンティティです。抽象的で理解しにくいかと思います。

今までお話してきた「ブランド」が生活者の頭の中にあるものだとすると「ブランドアイデンティティ」はブランドのオーナー側が保持する概念です。ただブランド保持者の頭の中にあるだけではブランド構築を行う上では不十分なので後ほど説明しますが、わかりやすく形になっている必要があります。

その形の一つとして「自ブランドはこのようにある!」との表明がブランドアイデンティティになります。

なんのために存在しているのか?と問われるとなんだかカッコいい言葉を使いたくなったり、したくなってしまいがちです。しかしながら大切なことは守れる内容にフォーカスすべきという点です。

実際に実務の中で検討を進めていく上で、盛り上がると「こんなイメージをもってもらいたい!」「こんな事業モデルにしていきたい」など様々な意見があがってきます。参加して意見がでることは大いに歓迎すべきことなのですが、その通りにつくってしまうとブランドは破綻します。

なぜなら全ての理想を詰め込んだブランドアイデンティを実行することは難しく、理想との乖離のある状態でクライアントと接することになってしまうからです。

その状態はすなわち「生活者の頭の中に自社ブランドに対する独自の意図されたイメージを作っていく」という部分からかけ離れてしまっているからです。

だからこそ、実行し守り続けられることをブランドアイデンティティにするべきなのです。

・ブランドプロミス
ブランドアイデンティティを顧客にとって意味のある約束に変えるとブランドプロミスになります。いくらブランドアイデンティティで「自ブランドはこうである!」と表明したとことで顧客に意味のあるもの、価値のあるものに変換しなければ、どのようなこだわりがあったとしても受け入れてもらうことは困難だからです。

広告やランディングページ作成の際にも必須の考え方なのですが、主語を「顧客」にしたものにする必要があります。こちらの一方的なこだわりや強みは顧客からすると「どうでもいい」のです。

顧客目線になることがマーケティングの大前提であることは、ブランドプロミスの設定の場面においても変わりません。

そして大切なことはプロミスという名前の通りブランドと顧客との約束であるということです。当たり前ですが、守れない約束を行うことはタブーです。ブランドプロミスはブランドアイデンティティからつながる概念のため、守ることが大切であるという要素も引き継がれています。

「どのようなブランドであると認知されたいか」という観点からコントロールされた一貫した発信を行う必要があると先ほどお話させていただいたのですが、この約束を破った瞬間に一貫した発信は崩れます。

こだわりの料理店で料理がくるのを待つ時間と吉野家で牛丼が出てくる時間が仮に同じだった場合消費者は何を思うでしょうか?

こだわりの料理店では「こだわって作ってくれているんだろう」と良い想像を働かせて待ちますが、吉野家で同じ時間待たされた結果起こることは「怒り」です。(余談ですが私が吉野家で20分待ったときは内心ちょっと怒りが湧きました笑)

これは吉野家の掲げている「うまい、やすい、はやい」が破られたからです。

・ブランドキャラクター
ブランド施策に一貫性も持たせるためにブランドキャラクターを設定します。ブランドキャラクターを設定しないと施策にブレが生じ、ブランドへのイメージを築きにくくなります。また、ブランドキャラクターを定義することでブランディングをきちんと理解していないメンバーがいたとしても直感的に理解することが可能になります。

例えば、優しいというブランドキャラクターが設定されているカフェがあったとします。そこでの広告がいくら集客のために目を引きたいからといって衝撃価格!!などの広告を出すのは違和感があるはずです。このように違和感を感じるものはお客様も違和感を感じ、結局なんのお店なんだっけ?といったように適切に一定のイメージを蓄積することが困難になります。

特に複数人でブランドを運営していく場合には、直感的にぶれないブランドキャラクターの策定が重要度になります。

またブランドキャラクターを設定することは生活者にとっても意味があります。

人は感覚で物を買って、理性で納得していると言われますが、ブランドキャラクターを設定することで感覚の部分に訴えかけることができるようになります。ブランドにある意味人であるかのようなキャラクターを持たせることができればそのキャラクターに近しい属性を持つ人たちとの関係をより深めることができるでしょう。

特にToCの分野になりますが、ブランドを買う理由の一つとして自己表現というものが挙げられると思います。このブランドは自分が持つにふさわしいブランドであると感じるためそのブランドのファンになり購入に至るわけです。その自己表現こそ感覚の分野であり「あなたと近いブランドですよ」と表現する役割をこのブランドキャラクターが果たすところになります。

③言語化し共有する

ブランディングは現在のためだけのものではありません。未来にも続いていく、続けていくべきものです。文化として根付かせる必要があります。

文化として根付かせるには、誰にでも分かりやすい言葉で言語化し、目に届きやすい場所に配置する、もしくは配布することが望ましいです。

より良い方法としてはブランドブックというものを制作する企業もありますが、ここまで手が回る企業であれば制作するといったところで問題ないかと思います。

他にはブランドカードのように名刺サイズのブランドブックを作成し配布することも接触回数が増える観点からすると有効です。自社の存在価値や顧客との約束など一貫した体験を提供できるようにすることができるのであれば、方法はそれぞれあっても良いかと思います。

④顧客との接点を整える

ここまできてようやく、具体的な施策である、クリエイティブなどの顧客との接点を整える作業になります。

ここまで読んでいただいた方であれば、よくありがちな「リブランディングするからロゴを作ろう!」といったことがいかに危険であるかご理解いただけたかと思います。

どうしても最初にわかりやすく取り組むことができる施策として、「ブランドロゴ」「WEBサイトの改修」「外装・内装の工事」など目に見えるところから始めたくなってしまいます。

しかしながら「どのようなブランドであると認知されたいかという観点からコントロールされた一貫した発信を行う必要がある」というブランディングにおいて重要なことを意識せずつくられたロゴは、ブランドの目指す未来の姿は反映されておらず、その場の感性で決まりがちです。さらにそのロゴのもとに集められていく顧客のイメージはバラバラであり、広告、店頭、接客や商品が同じブランドなのかイメージがつきにくく溜まっていくイメージが存在ない…。このようなことが起こってしまう危険性を孕んでいます。

もちろんこのような順序を経ずに成功されているブランドは多く存在しています。しかしながら再現性や確立にこだわる場合はブレる可能性のある変数を極力排除した、このような順を追った方法を取り入れ検討することが望まれます。

⑤接点を整える順番

話を戻しまして、整えるべき箇所は各企業様々だと思いますので、整えるべき優先順位をここではお伝えします。マーケティングの話と混同しているかのように思われるかもしれませんが、ここでは前提として中小企業のサービスなどを想定しております。

・まずは水漏れ対策が重要
ブランディングを行う目的は売り上げ(利益)の増加であるという当初の目的に照らし合わせると、認知拡大のために広告の出稿を行うなど新規顧客獲得のための施策を行うことが想定されます。

そういった具体的な施策を実施する際、ブランドエクイティを効率的に蓄積するためには「想定する流入経路に合わせた水漏れ対策」が必要です。

水漏れ対策とは穴の空いたバケツに水を注いで穴から水が流れるのを防ぐために穴を塞ぐ、つまり顧客の流出を最低限にするための施策です。どんな流入にも、穴はあります。顧客が離脱してしまうポイントがあるのです。

例えば、広告からWEBサイトへ流入→申し込みフォームという流れを想定しているのであれば顧客が辿ると想定される経路を確認し、離脱可能性の高い部分を修正していきます。

その際、役に立つのが先ほどもでてきた「カスタマージャーニー」という考え方です。顧客がブランドを認知し、購入し、リピートに至るまでの顧客とブランドとの関わりを図式化した「カスタマージャーニー」の流れに沿って、どこが自社ブランドのウィークポイントなのか目星をつけていきます。そしてより費用対効果の高い部分から補強していくことが良いでしょう。

そこに沿って接点を整えていけばブランドエクイティ(=ブランドに対する一定のイメージ)を蓄積していくことができるようになります。

中小企業が主に改善すべき接点はブランドロゴ、WEBサイト、広告、接客、内装、チラシ、名刺、接客対応などになってくるかと思います。制作する際にはブランドのことをキチンと伝え、そこまでの流れを汲み取ってくれる制作会社さんにご依頼されると良いでしょう。

まとめ

企業活動にとってブランディングは非常に重要です。なぜならブランディングとは売上をあげるための活動であるからです。そしてブランディングを成功させるために必要なこととして生活者の頭の中に自社ブランドに対する独自の意図されたイメージを作っていくこと「どのようなブランドであると認知されたいか」という観点からコントロールされた一貫した発信を行うことがあげられます。

そのように適切に管理されたブランドを、カスタマージャーニーに沿って整え意図的に発信していくことで、顧客の頭の中に一定のイメージが蓄積されていきます。そのイメージこそブランドエクイティ、つまり企業の目に見えない資産となっていくのです。

最後に

長々と書いて参りましたが、拙い文章のため読みにくい箇所や説明が足りずわかりにくい箇所などあったかもしれません。
ただその中でももし誰かのお役に少しでも立つことができたり、何かのきっかけになっていただけたのであればこれ以上に嬉しいことはありません。
また色々なご意見あるかもしれませんが、よりお役に立てるようアップデートしていくことが一番だと考えておりますので、ご感想やご意見などございましたらお教えください。

ご質問や不明点なども以下の連絡先までご連絡お待ちしております。

私自身は主に中小企業のマーケティングやブランディング支援をさせていただいております。私でお役に立てることがございましたら、無料相談も実施しておりますのでお申し込みの方は以下サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください!

WHAT  山本

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