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ニューヨークへLGBTQ+プライドを知る旅に出た

こんにちは!外国語学部4年次のYuiです。
3年次秋学期にアメリカの北アリゾナ大学に交換留学をしました。
留学先では女性学・ジェンダー学部に所属し、性差別や同性愛差別といった社会問題を分析するための理論を学びました。
LGBTQ+コミュニティに属し、帰国後キャンパスにおけるセクシュアリティの多様性包括に向けた活動を行う学生団体を設立した筆者が、アメリカ留学中に訪れたイベントや象徴的な場所を今回はレポートしたいと思います!


・ドラァグショー @北アリゾナ大学

北アリゾナでは、季節のイベントがある度に大学が大がかりなイベントを開きます。とくに私のお気に入りだったのは、ハロウィンに行われたドラァグショーです。
ショーでは、ドラァグクィーンやドラァグキングと呼ばれる女装や男装をしたパフォーマーが音楽に合わせてダンスを披露します。日本でもマツコ・デラックスさんやナジャ・グランディーバさんなど大物がいますが、北アリゾナではなんと学生がパフォーマンスをします!
ドラァグショーが私も含め、なぜこれまでも若い学生をひきつけるのか―それは、性別を越境して、きらびやかなステージ上で輝くマイノリティに勇気づけられるからだと思います。私は身近にLGBTQ+をカミングアウトするロールモデルが少ない中、自分と同じようなマイノリティが近くにいて、観客に称えられているところを見ると涙が出るほど嬉しくて感動しました。

ドラァグキングとクィーンの登場シーン

学期の間の長期休みは、ニューヨークへ旅に出ました。

ニューヨークでどうしても訪ねてもみたいLGBTQ+に関する2つのスポットがあったからです。
そして私はこの旅を「プライド」ツアーと名づけました。この国で、「プライド」を持って、LGBTQ+の人権のために戦ってきた人々について知り、彼らがみた景色を見てみたいと思ったのです。

・そもそもプライド(pride)って何?

プライドは、LGBTQ+の人々に関するイベントや支援団体、場所の名前に使われることが多く、虹色のアイコンと共に目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
プライド(pride)とは直訳すると、「誇り」という意味です。同性愛差別やトランス嫌悪が渦巻く社会において弱い立場に置かれたLGBTQ+が自分のアイデンティティを誇りに思い、そのような差別に断固として抵抗するような意味が込められています。
 
アリゾナから飛行機でニューヨークへ。
まずは、LGBTQ+の歴史において非常に象徴的な場所に向かいました。

・訪問場所1 ストーンウォールイン(Stonewall Inn)

最初に訪れたのは、ニューヨークにあるストーンウォールインというLGBTQ+の人々が集うバーです。
ここは、1960年代アメリカから世界に広まったゲイ・ライツ・ムーブメントの原点となった場所です。
1960年代、当時のアメリカの多くの州では同性同士の性的接触が禁止されており(ソドミー法)、同性愛者をはじめとする性的マイノリティにとって現代よりも厳しい時代でした。このストーン・ウォールはこのような差別に抵抗する人権運動がアメリカ全土、そして世界各地にはじまったきっかけとなる暴動が起こった場所として称えられています。
私がここを訪れたときはオープン前の人気がない夕方の時間帯でした。それでも、当時のままの建物や店奥から流れる底知れないエネルギーに圧倒され、立ち尽くしてしまいました。権力に立ち向かった先人たちが「ひとりじゃないよ」と言ってくれているようで、今日を生き、平等のために戦うための力を私に与えてくれました。

歴史的なストーンウォールイン、夜はバーとして今でも営業中。

・訪問場所2 Bluestockings Cooperative Bookstore

この本屋は、クイア、トランス、セックスワーカーによって運営されている本屋です。
私がここに何としてでも行きたかったのは、ニューヨークの草の根の女性権利団体やLGBTQ+権利団体が発行する機関誌(zine)が豊富に取り揃えられていると知ったからです。Zineとは個人の活動家が運動の核となる理念を、アートを織り交ぜて発信する雑誌のことです。このような資料を置いているということは地元の活動家と密着した本屋さんであることの証明でもあります。ここに行き、現地でしか手に取ることができない貴重な資料や店内で出会えるかもしれない人から、地元の人々が何と戦い、どのように行動しているのか知りたかったのです。
実際、店内に足を踏み入れた瞬間「これは日本にも必要だ!」と心の底から思いました。Zine以外にもフェミニズムやLGBTQ+に関する学術的な本から、日本では手に入りにくい子供向けの絵本や漫画などが壁一面に取り揃えられています。そしてなんといっても、店内には女性やLGBTQ+、ホームレスなどの社会的に弱い立場にある人のためのサポートが充実していました。
特に驚いたのはトイレです。貧困層や若者の利用者のために生理用品やコンドームが無料で誰でも持って帰れるように設置されていました。また、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)が必要な場合はレジで頼むと無料でもらえたり、心に悩みがある場合には適切な場所を紹介してくれたりするそうです。

書店内のトイレの壁には訪れた人が書いた力強いメッセージがたくさん。
イベントの告知であふれた店内の掲示板。地域のコミュニティとしても機能していました。

ただの本屋さんではなく、マイノリティを優しさで守り、彼らを知識で鼓舞し、運動につなげるための「プライド」で満ち溢れた場所。私の心の中で今でもひと際輝く思い出です。
 
さいごに
LGBTQ+のコミュニティにいる関大生のみなさん、世界にもたくさんのプライドイベントや活動団体があります。半年間のアメリカの滞在で私はこんなにも生き生きとできる場所を見つけることができました。もちろん国によっても事情は異なりますが、ぜひ留学をしたいという気持ちがあるならあきらめないでほしいです。
そして留学をしたいと考えているすべてのみなさん、海外での生活は教室では学べないその国のLGBTQ+の力強い文化を経験できる貴重な機会だと思います。留学を考えていない人も、大阪でも扇町で毎年プライドイベントが開かれているなど、年々日本での活動も広がっています。プライドイベントに楽しんで参加して周囲の人と会話すること、観光地を訪れて思いを馳せることは、好きになる人や性自認の違いだけで人を差別する世の中をなくすための入り口だと思います。