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フランツ・カフカ短編小説感想集

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2020年4月の記事一覧

フランツ・カフカ「判決」

 物語は異国で商売をしている友人に向けて、主人公が手紙を書くところから始まる。友人の商売はうまくいっていない。それどころか、病に侵されている様子。そんな友人に対して、自分には婚約者が出来た。そのことを報告するために、主人公は思い悩みながら手紙を書いていく。
 ようやくできた手紙の内容を父の部屋に報告しにいく主人公。そこには母を亡くし、職場でも居場所を失った老いた父が暗い部屋でうつむいている。

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フランツ・カフカ「掟の門」

 書き方は至って平易だ。門番が門の前で、門を通ろうとする旅人を拒絶する。旅人は何十年も、死ぬまでその門の前で許可されるまで待ち続ける。その間、旅人は懇願してみたり、次々に贈り物にしたりした。旅人が死ぬ間際、旅人は最期に門番に問いかける。
「誰もが掟を求めているのにどうして私以外の人はこの門に入ろうとしないのか」
 門番は答える。
「そもそも、この門はお前ひとりのための門だった。さぁおれはいく。門を

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