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萌え萌え中国骨董刺繍お買い物記@雲南

今回雲南省へは初めて足を踏み入れたのだが、ひとつ期待があった。
少数民族のハンドメイド刺繍を手に入れること。事前リサーチで染物系はかなりヒットしたのだが、刺繍を扱っている店はついぞ見つからなかった。

私自身は裁縫は殆どできないし、服装もTHE民族系という訳ではないのだが、なぜか少数民族の服飾が非常に好きで、特に繊細な刺繍を見ると身悶えしてしまう。彼らの衣装を丸ごと大枚はたいて買っても、家に飾るかコスプレするかくらいしか用途がないのは流石にわかっている。なので、バッグや小物にリメイクされたグッズを狙う。前にラオス旅行の際に、帯をリメイクしたハンドバッグやポーチを買った。5年間ずっと毎週のように酷使しているが、全然飽きずにまだ大好きだ。そういうモノに出会えればいいなと思っていた。

麗江でも大理でも賑わっているストリートを一通り歩いたが、探しているものが全然見つからない。大量生産の刺繍がペラペラのポリエステル生地にされているのが殆どで、刺繍のプリントをしたもの、なんてものまであった。
昆明出身の同僚にも聞いたが、「ああいうのは家で自分たちで作るのであって、外には出回らない」とのツレないお返事。

しかし、欲しい欲しいと思っていれば出会えるものなのかもしれない。
結果的には大変満足のいく買い物をすることができ、素敵な出会いもあった。

1件目は、束河という麗江エリアの古镇にある、アンティークブティックみたいなお店。一目できちっと仕事されているとわかる籠あみバッグ、その二つの側面にビーズ付きのアンティーク刺繍が縫い付けてあり、色使いも私好みで結構シック。裏地もしっかりと仕事されていた。見て5秒で購入を決めた。雲南上海間のフライトくらいの値段だったが、迷いはなかった。同僚たちにはきっと理解されないので、値段は言わないことにする。

2件目は、路上で出会った行商のおじちゃんである。大理の古城エリアを一通り見たあとに希望を捨て、まぁ籠バッグ買ったし良しとするか…と諦めていたところに突然現れたおじちゃん。彼はリメイクグッズではなく、モチーフや小物を直接売っていた。全部ハンドメイド、私好みの淡い多色使いや小さいビーズが入っているモチーフがもの凄い数あり、一瞬興奮しすぎてクラっとしてしまった。

おじちゃんは貴州北部から来ていた。こういったハンドメイド刺繍は担い手がいなく伝統が途絶えてしまっている事に加え、特に外国人で収集している人が多く大量に購入していくので、あまり出回らないという。コロナの影響で外国人が来なくなったので、行商してみることにした、とのこと。30分程お喋りしながら気に入った6点を購入。自分で作るか、デザインだけして仕立て屋さんに作ってもらうか…ワクワクが広がる。貴州に遊びに来たら案内するから連絡してね、というのでWechatを交換して別れた。

3件目も、本当に偶然だった。大理最終日に夕ご飯を食べに行く道すがら、ハンドメイドモチーフを飾っている店が目に留まった。ここ、昼に通ったときは開いてなかった!吸い込まれるように入っていくと、「ハンドメイドだから触らないで!お試し禁止!」と張り紙があった。店内を見ていると、小柄な女性店長が話しかけてくる。「刺繍好きなんでしょ、見ててわかるわ。是非手に取って見てみてね。お客さんで興味もないのに手を取って雑に扱う人が多いから、張り紙をしてるだけなのよ。」そして、お喋りがはじまる。

女性店長は大理付近の農村出身の白族。子供のころから刺繍が好きで、20年ほどまえに全国各地の少数民族の刺繍を収集し、衣服やバッグにリメイクすることを始めたという。30年前、彼女がまだ少女のころ、既に外国人たちが少数民族の刺繍の価値を認めて相当な対価を払って購入するところを見ていたことが、自分の今の創作スタイルにも影響を与えている、と語っていた。10年ほど前までは購入者は外国人中心だったが、現在は上海や北京など大都市中心に中国人にもファンが増えているとのこと。

彼女の創作品は私の好みではなかったが、どれも美しかった。店内を見終わると、「もっと見たいでしょ?」と小さい女の子のように目を輝かせて聞いてくる店長に連れられて、倉庫スペースに向かった。そこには、8畳ほどのスペースに、数千ものハンドメイド刺繍が置かれていた。圧巻すぎて、息が苦しくなってくる。

「私は白族だけど、収集は全国各地からなの。だからいろんな民族の刺繍があるのよ。どれくらいのレベルの人が縫ったか、どの民族なのか、年代なんかも見たら分かるわよ」と仰る。博物館開けますよ、と言うと「場所もないしね」と笑っていたけれど、真剣に開けるレベルだと思う。でも、こうやって収集したものを博物館の中に閉じ込めておくよりも、現代の生活の中で使えるようにリメイクして、それを大切に使ってくれるお客さんに売ることのほうが、彼女にとって価値があることなんだろう、とも思った。

1時間ほどお喋りした後に、貴州のおじちゃんのとこにはなかったタイプの、ドラゴンの刺繍を2点購入した。ドラゴンはお祭りの際に使う旗からとったもので、200年くらい経っているのでは、ということだった。店長が布への縫い付け方を3種類実演付きで教えてくれた後、挨拶をして別れた。別れ際に、蝶のネックレスをプレゼントしてくれた。「また大理に飛んで帰ってきてね。」

あぁ、楽しいお買い物だった。裁縫、ちゃんと練習しようかな。



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