インパクト加重会計の3要素(環境、製品、雇用)について

インパクト加重会計とは、企業の社会的・環境的な影響を貨幣価値に換算して財務諸表に反映させることで、企業の真の価値を測る方法です。インパクト加重会計は、環境、製品、雇用の3つの要素に分けてインパクトを評価します。

インパクト加重会計の紹介はこちら: 

環境

企業が水や排出物などの資源を使用したり排出したりすることで、地球や生態系に与える影響です。例えば、水の使用量や水質汚染、温室効果ガスの排出量や大気汚染などが評価対象になります。これらの影響は、水や排気ガスの各使用量・排気量に国際的な基準や法規制に基づいて定められている係数を掛けて貨幣価値に変換し、それを全て足し合わせることで環境インパクトとして計上されます。このように環境インパクトは比較的計算もシンプルで解釈も用意です。ただし実際の排出量や使用量を誤差なく測定する「データの質」の担保に課題が残ります。

環境インパクトは、一般的にはマイナスの値となりますが、環境保全や再生可能エネルギーの利用などでプラスの値となる場合もあります。

製品

顧客による、製品の使用や処分に伴う社会や環境へのインパクトです。例えば、製品の安全性や品質、健康への効果、廃棄物やリサイクルなどが評価対象になります。社会的インパクトの側面における商品の質はグローバル産業分類標準(GICS)に基づいて貨幣価値に変換されます。製品インパクトは一般的にはプラスの値となりますが、有害物質や廃棄物の発生などでマイナスの値となる場合もあります。

また製品インパクトも環境へのインパクトを考えますが、環境インパクトが「企業による直接的な影響」なのに対して、製品インパクトは「製品を利用や処分する顧客による影響」という違いがあります。

製品インパクトには「質」以外の様々な項目がありますが、その中の一つに「アクセス(価格なども含めた商品の手に入れやすさ)」があります。こちらは高い方がプラスになるのですが、個人的にはあらゆる人にサービスが届くという意味では良いが大量生産大量消費と正の相関があるのではと考えます。ただしその場合は、その分環境インパクトや製造インパクトの処分の部分でマイナスになるので総合的には適切な評価ができていると捉えることもでき、また各項目が貨幣価値に変換されるので何が良くて何が悪いかの内容も判断できるようになります。

雇用

企業が従業員や周辺コミュニティに与える影響です。例えば、賃金や福利厚生、労働条件や安全性、ダイバーシティや地域社会への貢献などが評価対象になります。雇用インパクトは、一般的にはプラスの値となりますが、人権侵害や不平等な待遇などでマイナスの値となる場合もあります。

興味深い項目として従業員の「賃金の質」は職種や地域によって計算される給与水準と比べて適切かどうかがで評価されます。よって賃金が高ければ高いほど雇用インパクトにプラスになるというわけではありません。こちらは賃金が高すぎると適正賃金の時よりも評価がマイナスになるというよりは、「賃金を払いすぎても加算されない」という風に所得の限界効用(満足度アップ)調整がされるイメージだと考えられます。賃金が低すぎたら当然マイナスなので同一労働同一賃金へ向かうインセンティブとして働きます。

またダイバーシティの評価について、従業員の属性の割合も人口の統計に近い方がいいという考えがありますが、これは参考にする母集団を慎重に選ばないとただの不公平になりえます。例えば男女比1:1の地域で、とある人気職業への就職を希望する集団の男女比が男性:女性 = 1:9の場合、就労者の男女比を1:1に調整しようとすると能力の高い女性よりも能力の低い男性が選ばれる可能性が高くなります。これには勿論それに至る背景もある(例: その職業への就職を希望する集団の男女比が男性:女性 = 1:9 になった背景としてそもそも男性が希望したくてもし辛い理由や社会情勢があった、など)ので希望者の割合 = 理想の割合というわけでもないですが、明らかな外れ値以外はあまりマイナスの対象としない方が良いのではと個人的には考えています。

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