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幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる②

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幻獣戦争 2章 2-2 英雄は灰の中より立ち上がる②

 CICを退室して俺は格納庫へ向う。格納庫は戦略機が即時発進できるよう後方カタパルト区画底部に併設されており、発進の際はエレベーターデッキからリフトアップされる仕組みとなっている。

 俺は格納庫デッキを歩きながら神代博士を探す。恐らく、新兵器の最終チェック中のはずだ。
 格納庫には10式ミカヅチと新型自走砲以外にも、90式や機甲部隊の車両など多数の兵器が運び込まれており、随伴の整備員が慌ただしく整備を行っている。格納庫後方まで来ると、新型自走砲の前で指示している神代博士を発見し近づく。

「間に合いそうですか博士?」
「――間に合わせるわよ。まったく、急に頼んでくれちゃったせいでミカヅチは5機しか作れなかったわよ。おまけにまだ最終チェック中だし。後は新型神霊機関の交換が間に合わないから、ミヅチにサーマルガトリングだけ何とか装備させたわ。電磁加速砲は出力の問題上使えないけど、仕方ないわよね?」
 後ろから声を掛けると、博士は振り向き開口一番にそうぶーたれる。

「……すみませんね。俺はもう仲間を無駄死にさせたくないんですよ。しかし、よくミヅチにサーマルガドリング装備できましたね」
「……大丈夫、貴方の背中はちゃんと支えてあげるわ。ミヅチは元々のコンセプトが最強の戦略機なのよ。だから、改修できるように拡張要素が残ってるの。そこを使ったわけよ」
 俺が軽く謝罪しながら問うと、博士は何故か自慢げに答える。そうか、ミヅチは博士が設計したのか。

「将来を見越していたということですか、流石ですね」
 俺が素直に褒めると博士は満更でもなさそうに笑みを浮かべる。
「そうそう、ところで向こうにはいつ頃着くのかしら?」
「作戦開始の5日前、10月27日です」
 博士の問いに俺は事務的に答える。そう言えば黄泉が居ないな。奥で作業中か?

「了解よ。ああ、黄泉ちゃんは今砲身に刻印中よ」
「そうですか。無理しないように伝えておいてください。しかし、80センチ自走砲……昔の列車砲を彷彿させますね」
 俺はそう言って目の前にある自走砲に目を向ける。車体は99式自走砲を超大型化したもので砲身の大きさが異様さを物語っている。

「でしょうね。戦車10台分のサイズだもの。こいつ作るのに戦車40台解体したのよ?」
 博士は自走砲に横目で見て解説する。
「よく2台用意できましたね」
「まあね。貴方が無茶を通してくれたからよ」
 驚嘆する俺に博士は嬉しそうに答える。

「私は何もしてませんよ。むしろ勇司を褒めてやってください」
「嫌よ。あいつ事あるたびに嫌味言ってくるのよね。本当ムカつく」
 俺は苦労しただろう勇司を思い出しながら述べると、博士は困り顔でそう悪態つく。まあ、嫌味くらいは言いたくなるのだろうな。
「ふふふ。まあ、あいつの性分みたいなもんでしょうね。しかし、無人とはまた大胆な設計にされましたね」
 俺は博士に視線を戻し言う。これに操縦者が不要なのは本当に驚きだ。

「時間的に無理だったから無人にしたのよ。トリガーは朱雀君の機体に持たせるけど。良いのよね?」
「勿論。ところで朱雀が何処にいるか知っていますか?」
 博士の問いに俺は頷き訊き返す。
「マニュアル渡したから自室じゃないかしら?」
「ありがとうございます。では、覗いてみますかね」
 軽く答える博士に俺は礼を言うと踵を返す。

「あの子も大変でしょうけど、支える貴方はもっと大変よね」
「そうでもありませんよ。それに――英雄は一人じゃなければいけないという縛りはありませんから」
 博士の言葉に背を向けたまま答え俺は格納庫を後にした。
 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


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