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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑰

2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑰

「二つの幻獣集団を攻撃できるよう位置に移動する。一六〇ミリ滑空砲で西原村方面への砲撃を継続してくれ」
 俺はそう指示して、丁度対角線上2集団を射程に捉えられるよう機体の移動を開始。同時に、タウロスとオーガ型が混じった新たな敵集団が大矢野演習場を目指し南下。コックピットモニターのライブ映像を拡大確認すると、最後方に青色のオーガ型を確認。今回の指揮官タイプはオーガ型のようだ。
 俺はサーマルガトリングと電磁加速砲を敵正面、先頭集団に向ける。

「一六〇ミリ滑空砲射撃開始します……正面敵集団まもなく有効射程」
 ナビゲーションAIの報告と同時に、戦域図に映る正面敵集団マーカーが有効射程内に侵入。俺はトリガーを引いた。放たれたサーマルガトリング砲と電子加速砲は、凄まじい勢いで正面敵先頭集団を霧に返し霧散させていく。が、それも数十秒の出来事ですぐにサーマルガトリングは弾薬を消費尽くした。やがて電磁加速砲も弾切れとなり、余っているサブアームで予備の弾倉と交換を開始。攻撃の手が止むと、正面の敵集団は新しい幻獣が出現させ増殖。こちらを押しつぶす気だ。

 まずいな――やはり指揮官タイプを潰さないと意味がない。だが、どうやって進路を開く?
「一六〇ミリ滑空砲残弾ゼロ。西原村方面の幻獣市街地へ転身を開始」
 ナビゲーションAIが無情な報告を告げ戦域図の情報を更新する。駄目か。時間稼ぎにもならん――俺は突進してくるオーガ型を電磁加速砲で霧片に変えながら迷っていた。優先すべきことは分かっている。指揮官タイプの撃破だ。しかし、敵が多すぎて近づけん!

「第二戦闘師団所属第3艦隊より入電。そこを動くな。です」
 ナビゲーションAIの報告に俺は首を傾げた。どういう意味だ? しかし、直ぐにその疑問は氷解する。砲弾とミサイルの雨が正面に展開する幻獣集団にめがけて降り注いだのだ。
「艦砲射撃か!」
 海上艦隊からの砲撃の雨が、敵勢力圏に降り注ぎ、凄まじい勢いで戦域図に映る敵勢マーカーを消していく。しかし、それも数秒の事ですぐに新たな集団が出現してくる。

「要塞司令部に連絡。西原村方面の敵集団に火力を集中してくれ!」
 俺がナビゲーションAIに指示していると、戦域図にこちらに向かってくる味方マーカーが表示されていることに気づいた。
「お待たせしました。正面の敵は僕らで押さえます」
 詳細を確認する間もなく、一樹が無線越しに語り掛けてきた。

「了解。要塞司令部に通知します」
 ナビゲーションAIの報告を聞き、俺は機体を一樹機達に向け直接確認する。一樹の機体と、その後方に見慣れた90式戦略機ミヅチが3機こちらに向かってきていた。

「頼む。私は指揮官タイプに突撃する」
「親交を温めたい所ですが、了解です」
「教官、ご武運を」
「教官、水原さんと仲直りしてくださいね」
 俺が短く無線で応じると、無線越しに合流した90式戦略機ミヅチに乗る3人のパイロット達は好き好きに応じる。教官? 聞いた事がある声ばかりだな……

「正面敵集団、砲撃を開始」
 俺は気になり確認をとろうとしたが、そのタイミングでナビゲーションAIが報告してきた。
 まずい、砲火に巻き込まれる!
「なんとかしろぉ!」
「了解。シールド障壁を最大レベルで展開」
 俺の無茶ぶりにナビゲーションAIが応じ、機体を反転させ楯を正面に構え後方の4人を庇うように立つ――同時に盾が結界のようなエネルギーを放出。バリアに似た形で5機の機体を包み込んだ結界は、幻獣の砲撃を完全に遮断する。砲撃が終わると結界は完全に消滅。

「楯エネルギー残量ゼロ。防御結界消失」
 行動を終えたナビゲーションAIが事務的に報告する。
「聞きたい事もあるが、時間がない頼むぞ」
 俺はほっと胸を撫でおろし無線越しに4人に告げ、機体のスラスターを点火させブーストジャンプで敵指揮官タイプへ肉薄する。上空を無理やり通過する俺に反応する幻獣はこちらを狙い撃ちしてくる。

 激しい砲火が集中するが、それを防ぐように4機の支援砲撃が敵幻獣集団に直撃。激しい砲火の応酬と爆発の中、無傷で指揮官タイプに肉薄できた俺は電磁加速砲を構える――が、相手の反応が早く、青いオーガ型は、腕から生体ミサイルを生やし発射するとこちらに突撃を敢行。

 まずい! 咄嗟に楯を構えスラスターを点火させ機体を横にスウェー。青いオーガ型の突撃をいなす。しかし、追ってきたミサイルが楯に着弾。衝撃が機体を襲いコックピット内が揺れる。が、側面に回り込んだ俺は構わず電磁加速砲のトリガーを引く。

 青いオーガ型の反応は素早く、辛うじて直撃を避け片腕が吹き飛ぶ。しかも、構わず青いオーガ型はこちらに突撃を敢行! 瞬く間に距離を詰められ斧を振り下ろす。俺は楯でその一撃を凌ぎ、バックステップで距離を置き電磁加速砲を青いオーガ型に投擲。青いオーガ型は気にもとめず斧で電磁加速砲を薙ぎ払う……それが誘導された動作とも気づかずに。

 僅かな隙が出来た俺は逃さず盾から長刀は抜き放ち、スラスターを点火して最大加速で間合いを詰める。青いオーガ型は異常な間合いの詰まり方に驚き行動が止まる。それを逃さず俺は長刀で胸部に光るコアごと斜めに斬り捨てた。

 斜めに斬り裂かれた青いオーガ型は、切り口から青い霧光を噴出させながら霧散していく。
 指揮官タイプが撃破されたことにより残っていた幻獣群は行動を停止。少しずつ霧となり消滅していく。が、それを見守るほど自衛軍は甘くなく、容赦なく砲火の雨を降らせ続ける。やがて戦域図から敵勢マーカーが完全に消失すると、戦闘終了の合図を告げるように砲撃は止み迎撃作戦は終了。

 俺は投擲してへし折られた電磁加速砲の回収を終え応援に来た一樹達と合流。九州要塞へ帰投した。
 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く



2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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