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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑧

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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑧

 舞人達が新型10式ミカヅチの試験中、九州要塞中央作戦司令室では幻獣警戒レベルの上昇が確認され情報収集が行われていた。
 九州要塞中央作戦司令室は、部屋の正面に専用の大型モニターが設置されており、部屋全体は上段と下段の区画に分けられている。上段の区画は作戦指揮官とその幕僚達専用の区画で、部屋の中央に作戦会議専用の大きなミーティングテーブルと、その周りに連絡要員として詰めている士官の席が用意されている。下段の区画は、作戦指揮に必要な情報収集を行う司令室付き士官専用の区画となっている。

「――状況は?」
 司令室にやってきた私は短く近くの士官に問う。
「はい。現在、大矢野演習場付近で急激な幻獣濃度の上昇を確認。天照の解析では演習場後方、西原村付近に幻獣の先遣集団が出現すると予測されています」
「西原村か……また都市部に近いな。出現ポイント付近の住民に避難命令をだせ。近くにいる基地部隊は避難誘導に当たれ! それから要塞各部署に防衛基準態勢1を発令!」
 素早く敬礼する士官に私が指示すると、士官は自席の端末ではすぐさま情報伝達に回る。

「遅れました」
 同時にやや遅れて若本君が司令室に入ってきた。
「来たか。若本君、すぐに出撃できる戦略機部隊は?」
 遅れてきた若本君に振り向き私はそう訊ねた。
「……ありません。部隊再編が裏目に出ました。戦略機部隊の出撃には時間が必要です。先に機甲部隊の準備を急がせています」
「そうか、そちらの指揮は任せる。海上と航空に支援準備を急がせろ!」
 苦虫を噛み潰したような素振りで答える若本君に、私は頷き新たに近くの士官に指示する。

「了解」
「本部長、小野一樹一佐から応援要請が来ています」
 士官の一人が応じると違う士官が報告を上げてきた。
「今準備していると伝えろ。それから神代博士達に撤収命令を出したま――いかん。演習場には比良坂君達以外に演習をしている部隊が居たな?」
 その報告に私はそう返答するが、はっとなり別の士官に確認する。不味いぞ……

「教育大隊が前期野外訓練中です。そちらには比良坂陸将が既に指示を出しています」
「そうか。無事に離脱してくれると良いが……」
 士官の報告に私は心配交じりに呟く。こんな形で実践を経験する羽目になるとはな……
「天照より通知! 幻獣が20分後に出現する可能性大!」
 その心配も束の間、下段ブロックの士官から報告があがり、正面の大型モニターに表示されている戦域図の情報が更新される。戦域図は大矢野演習場を中心とした周辺一帯を映しており、敵味方のマーカー周辺地域の非難状況、気象などあらゆる情報が表示されていた。

「いかんな。有明海に展開中の艦隊はどうなっている?」
 幻獣の出現が予想より早いことに焦りを感じた私は別の士官にそう質問する。
「現在、哨戒中の第3艦隊が大牟田市沖合を南下中」
 振り向き答えた士官は、同時に中央の大型モニターに急行中の艦隊情報を更新する。
「ぎりぎりだな。出撃準備中の航空部隊は準備が完了次第そのまま待機。いざとなれば付近一帯を焼き払う!」
「やむを得ませんな。準備が終わった車両から出動! 合流地点は熊本赤十字病院総合グラウンドだ。臨時指揮所を設け到着次第木山川沿いに車両を展開させろ!」
 私の檄に頷くと若本君は別の士官にそう指示する。

「本部長、桜井朱雀二佐より緊急通信です」
 さらに別の士官が私と若本君に報告をあげてきた。
「中央の大型モニターに回してくれ」
「90式戦略機臨時第1小隊出撃準備完了。これより比良坂陸将の援護に回ります」
 私が応じると、大型モニターに映された桜井朱雀二佐が敬礼して報告する。
 

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次回に続く


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