見出し画像

幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑦

縦書き版はこちら

※著作権等は放棄しておりませんので、転載等はやめてください。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
(当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)

序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑦

「まず、脚部には新型装甲のスラスターを取り付けているわ。これで従来の3.25倍推力が増大、増加装甲のおかげで推進剤もたっぷり詰め込めているから、従来の機体より長距離長時間の稼働を実現しているはずよ。次に背中のスラスター付き大型バックパックだけど、これも新型装甲を採用しているから頑丈よ。ついでに脚部スラスターに推進剤を供給できるようにもなっているわ。で、武装だけど今回は新型弾頭用に改修した一六〇ミリ滑空砲とサーマル式三十ミリガトリング砲を取り付けているわ。最後に今回持ってきたアサルトライフルなんだけど、これはレールガン、電磁加速砲よ」

 博士は嬉々として解説する。正直こんなものぶっ放していたら、反動と衝撃波で機体は勿論付近にいる隊員達にも被害が出るだろうな。
「なるほどな。新型神霊機関の動力と精霊、神々の加護で諸問題をクリアしているわけか」
「ご明察。勿論貴方達に負担が行かないように工夫しているわ」
 俺の回答に博士は満足げ頷く。
「なるほど、術式を刻印しているのですね」
「そういうこと。だから製作は今のところ私達にしかできないわ。じゃあ、射撃ポイントに移動して頂戴」

 察したように補足する一樹に頷き、神代博士は伝えると通信を切った。俺達も通信を切り機体を野戦演習場の射撃地点へ移動をさせる。といっても殆ど目の前で、仮設ベースに配慮した距離を取るというのが正しい解釈だろう。射撃位置につき俺と一樹機共に電磁加速砲を構える。しばらくして、『射撃はじめ!』と神代博士のアナウンスが流れ、両機はその合図を受け射撃を開始。

 すさまじい音響と威力で目標地点の地形が変わっていく……まるで山をドリルで削っているようだ。射撃終了後、急速に砲身が冷却され蒸気を放出する。凄まじい熱が出ている事がコックピットモニター越しでもわかる。電磁加速砲の試験を終え次に実施したのは腰部の一六〇ミリ滑空砲だ。

 これは両機ともに1発のみ射撃を実施した。新型弾頭の威力はすさまじく射撃地点の斜面に穴が空き地すべりで地形が崩壊。最後に肩部のサーマル式のガトリング砲の射撃を実施。これもすさまじい音響と威力で射撃地点の地形を無残な姿へと作り替えた……後で管理部隊から苦情が来そう、いや間違いなくくるレベルだ。

「お疲れ様。良いデータが取れたわ」
「すごい威力だな」
 通信を入れてきた博士に俺は一樹と通信を共有させ驚嘆する。
「そうですね。これなら今まで以上に幻獣を蹴散らせるような気がします」
「でしょう。そうだ。フィードバック送るから天照に繋ぐわよ」
 一樹の感想に神代博士は嬉しそうに言って、両機を天照に繋ぐ操作をする。しばらくして懐かしい声が帰ってきた。

「天照へのコンタクトを確認……味方識別であることを確認、受諾します。おかえりさない。比良坂陸将」
 接続を確認した連動しているナビゲーションAIが俺を迎えてくれた。
「早速で悪いが、周辺の幻獣警戒レベルを確認してくれ」
「了解。確認します……当座標において幻獣濃度の上昇確認。まもなく警戒レベルに達します」
 俺の指示にナビゲーションAIは事務的に回答する。
「ちょっと! この辺で幻獣なんて確認してないわよ!」
「これは、中心地から幻獣が流れてきたと見るべきですかね?」
 博士の奇声を尻目に聞いていた一樹は俺にそう確認してきた。

「だろうな。他に演習している部隊はいるか?」
 俺が一樹に確認をとるとコックピットモニターに戦域図が映し出される。
「ちょっと待ってください」
「照会中……新規訓練部隊が前期野外訓練中です」
 一樹の言葉に被せるようにナビ―ゲーションAIが戦域図にマーカーを加え答える。
「こっちでも確認しました。間違いないです」
「直ちに撤収命令を出してくれ。俺達はこのまま応戦準備だ」
 裏がとれたことを確認して、俺は改めて一樹と博士に指示する。当たってほしくないことは当たるもんだな……

「了解、伝えます。要塞への応援要請は?」
「間に合わないだろうが要請してくれ」
「こっちも準備するわ。戻ってきて頂戴」
 俺達はそれぞれ答え通信を切り機体を仮設ベースへ移動させた。

次回に続く


他記事はこちら


よろしければサポートお願いします。頂いた費用は創作活動などに使わせて頂きます。