見出し画像

幻獣戦争 2章 2-4 英雄の役割⑦

2023.04.06『幻獣戦争』絶賛販売中

アマゾン売れ筋ランキング部門別1位獲得!


縦書き版はこちら

※著作権等は放棄しておりませんので、転載等はやめてください。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
(当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)

幻獣戦争 英雄の役割⑦

「そうか……しかし、予想外だったな」
「黒い幻獣、あのような隠し玉があったとは」
 俺の言葉に察して堰口司令が思い出すように呟く。
「確かに。佐渡島の時は出てこなかったからなあんな幻獣。もしかすれば、あれが本来の意味でのボスなのかもしれんな」
「ああ。しかも、あれを倒したら幻獣が全部消滅したのにも驚きだ」
 勇司の推論に俺は思い返し答える。

「案外、あの黒い幻獣は向こう側の英雄なのかもしれませんな」
 艦隊司令が何気なくそう言葉を漏らす。英雄……か、そう言われるとそうかもしれないな。
「英雄……なるほど、俺達のように向こうにも切り札的な存在が居るというわけか」
「いや、もしかすれば初めにあの黒い幻獣が居て、あれから指揮官タイプが生まれ複数の幻獣に別れていっているのかもしれん」
 勇司の言葉に俺はそう仮説を述べる。あの黒い幻獣は歩く要塞ともいえる力を保有していた。

「なるほど。だが、その場合佐渡島で出てこなかった理由はなんだ?」
「単純に元の姿に戻れなかっただけかもしれん」
 勇司の疑問に俺は当時の計画を思い返し答える。あの時は今回と違い敵戦力を作戦開始前に削っていた。

「なるほど。確かに佐渡島攻略作戦時は、準備段階で相当数の幻獣を間引いていましたからな」
「いずれにせよ四国にはあの化け物がいる事を念頭に入れておく必要があるな」
「そうだな。想定の幅が広がるな」
 二人の言葉に俺は面倒くさげに呟く。戦略を組む側の人間としては頭が痛い情報だ。

「現状、四国の情報は殆ど不明です。情報を集める必要があるでしょうな」
「まあ、しばらくは事後処理に専念せねばなるまい」
 堰口司令の言葉に勇司はそう言ってため息をつく。俺にもそのしわ寄せがくるのだろうな……結局いつも通りか。
「あ、朱雀のやらかし――あれはやっぱり始末書か?」
 俺は思い出し勇司に訊ねる。

「わからん。近海の被害状況をまだ把握していない。船が沈んでなければ良いんだがなぁ」
「幸いなことに我々の艦隊は無事でしたからな。他も恐らく無事でしょう……九州北部沿岸部は海水まみれの可能性があるでしょうが」
 げんなりする勇司にそう言ってははっと堰口司令が乾いた笑い声をあげる。

「まあ、仕方ない。始末書は俺だな。あいつの一撃が戦況に大きく貢献したのは間違いない」
 俺は開き直り笑みを浮かべる。
「責任をとる側は辛いな――比良坂陸将」
「そうですな。何はともあれ――ご苦労様でした比良坂陸将」
 勇司の嫌みを軽く流して、話を締めるように堰口司令は俺を見て手を差し出す。俺はそれに応じて握手する。

 翌日、九州中国方面護衛艦隊群は芦屋基地に帰港。俺達は陸路で九州要塞に帰還した。
 九州の津波による被害は意外と少なかったが、港湾施設は被害を受けているようで帰還後、田代本部長に怒られたのは言うまでもない。
 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く



2023.04.06『幻獣戦争』より絶賛発売中

アマゾン売れ筋ランキング部門別1位獲得!


他記事はこちら


よろしければサポートお願いします。頂いた費用は創作活動などに使わせて頂きます。