マガジンのカバー画像

山の記憶

9
取材で訪れた山や自分が好きな山の話です。ゆる登山本で紹介しているルートのウラ話もちょっとだけ。
運営しているクリエイター

記事一覧

山の記憶(1):はじめの山、高尾山

高尾山は、ケーブルカーを使って1号路から登るに限る。

日本一の急勾配?のケーブルカーにゆられて山頂駅に着いたら、迷わず進行方向左手の売店で「天狗焼き」を買うのが私の定番。ほっくりとした黒豆のあんのうまみをかみしめながら、ゆっくり歩き始める。

散策路は人であふれかえっている。ういういしく手をつなぎあった若者カップル、歩いているあいだじゅうずっと嫁の話や近所の話、病気の話を声高にし続ける熟年女性グ

もっとみる

山の記憶(2):筑波山の弁慶茶屋

初めて筑波山に登ったのは、10年以上前、旅行ガイドブックの取材で。

つつじヶ丘から女体山に登り、男体山に足を伸ばし、ケーブルカー沿いの登山道で筑波山神社に下るルートだったと思う。カメラマンも兼ねての一人歩きだった。

たしか初夏、5月の半ばごろだったろうか。鮮やかな木々の緑にうっとりしながら歩いていくと、茶店が一軒。店の前でザックを下ろして休んでいたら、通りかかった登山者が、ここの名物はところて

もっとみる

山の記憶(3):愛され山、大小山

遠くから山を見ると、山頂直下の斜面に「大小」という看板。

よく分からないけど、なんかうける。気になる。しかも歩く時間も短そう。カメラマンのWさんを誘って出かけました。

駅から歩き始め、山麓の駐車場に着いたところでガイドブックの地図を見ながらルートの確認をしていると、下山して来たらしい、いかにも地元ハイカーのようなおじさまに声をかけられました。

「ここに来るのは初めて?」

初めてだと答えると

もっとみる

山の記憶(4):父も見ていた 鳴虫山

日光市街にそびえる、市民の裏山・鳴虫山。

のんびり歩けばさほど時間をかけずに山頂に立てて、日光連山の眺めがよくて、東武日光駅から歩いていける。なかなかよい山です。拙著「東京近郊ゆる登山」でも、紹介しています。

2010年の8月。父の新盆で親戚達が自宅に集まったときのこと。

この年の3月に発売になった「東京近郊ゆる登山」を、母が叔母達に見せ(びらかし)ていました。あらぁ〜、すごいじゃない、とし

もっとみる
山の記憶(5)鍋割山の登り方

山の記憶(5)鍋割山の登り方

鍋割山に登って、山頂で鍋焼きうどんを食べないなんて、ない。

鍋割山は表丹沢県民の森のゲートから歩き始める。歩き始めて30分も歩くと、水の入ったペットボトルがいくつも置いてある。水場がない山頂の山小屋が、登山者に水運びのボランティアをお願いしているのだ。このとき、気前よく水を担ぐのが山頂で心地よく過ごすポイント。だから、日帰りとはいえ、ちょいと大きめのザックを背負っていく。無理のない範囲で何本かザ

もっとみる

山の記憶(6):はねちんと岩殿山

東京から中央本線に乗り、大月駅に来ると右手に岩山が見えてきます。

岩殿山という、標高634m(東京スカイツリーと同じ標高)の山です。駅から歩き始めて駅に下山でき、山頂までは駅から1時間程度。山頂からも、山頂手前の展望台からも富士山がきれいに眺められる、大好きな山のひとつです。

私がこの山を好きな理由の一番が「ファンキーな岩場があるから」。

駅から山頂までは1時間ほどですが、そこからぐるりと周

もっとみる

山の記憶(7) 金時山

仕事で、プライベートで、何度も歩いている山。

金時山は、富士山の展望台として、そして金時娘のいる山として、人気の高い山です。私がいつも歩くのは乙女峠バス停から乙女峠を経て山頂に向かい、金時神社に下山するルート。歩き始めに富士山がきれいに眺められ、妖精のいるような針葉樹林を歩いて標高1000mちょっとの乙女峠までたどり着けば、外輪山に囲まれた箱根が見えるようになります。ちょっとした岩場があったり、

もっとみる
山の記憶(8)富士山

山の記憶(8)富士山

初めて登ったのは20世紀も終盤のころ。

高い山に全く慣れていなかった私の富士山デビューは散々だった。9合目で高山病になり、一歩歩くごとに吐き気を覚えながら登頂。一応お鉢巡りをして、下山はザラザラの砂地に何度も足をとられて転び、尻に大きな痣を作った。ひどいものだったけど、天気はよかったし、仲間も気遣ってくれたし、終わってみれば楽しかった。でもしばらくは行かなくていいと思っていた。

それから何度か

もっとみる

山の記憶(9)鎌倉アルプス

日本人の登山者は「アルプス」が好き。3000m級の山々が連なる山脈に「日本アルプス」と名付けていますが、日本にある「アルプス」はここだけではありません。沼津アルプス、須磨アルプス、頸城アルプス、天草アルプス…。中には、すみませんがこれをどう認識すればアルプスとなるんでしょうか…という「アルプス」もあります。山の高い低いにかかわらず、尾根をつなげて歩けるようなルートに「アルプス」と名付けたがるようで

もっとみる