山の記憶(4):父も見ていた 鳴虫山
日光市街にそびえる、市民の裏山・鳴虫山。
のんびり歩けばさほど時間をかけずに山頂に立てて、日光連山の眺めがよくて、東武日光駅から歩いていける。なかなかよい山です。拙著「東京近郊ゆる登山」でも、紹介しています。
2010年の8月。父の新盆で親戚達が自宅に集まったときのこと。
この年の3月に発売になった「東京近郊ゆる登山」を、母が叔母達に見せ(びらかし)ていました。あらぁ〜、すごいじゃない、としちゃん、本なんて出しちゃうのねえ〜。と言いつつ、登山にまったく縁の無い叔母たちがこの本に興味を持つわけもなく、あいづちもお愛想な感じ。…だったのですが。
「あら、鳴虫山!としちゃん、これも登ったの?」
…ええ、もちろん。
「日光に住んでたときね、家から鳴虫山が見えていたのよ。山が曇っていたら傘を持って学校に行ってたわねえ。懐かしいわぁ」
父や叔母たちが小さいころ、一時期家族で日光に住んでいたのです。…そうか、父にとっても、鳴虫山は思い出の山だったんだろうな。本を見てくれたら、きっと 「お、鳴虫山か。行ったのか」と聞いてくれたんだろうな。「山が雲をかぶってたら昼から雨が降るんだ。知らなかっただろ」とか得意げに教えてくれたんだろうな。
見せたかったな。見てほしかったな。誉めてくれなくていいから、感想が聞きたかったよ、おとうさん。
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