山の記憶(3):愛され山、大小山

遠くから山を見ると、山頂直下の斜面に「大小」という看板。

よく分からないけど、なんかうける。気になる。しかも歩く時間も短そう。カメラマンのWさんを誘って出かけました。

駅から歩き始め、山麓の駐車場に着いたところでガイドブックの地図を見ながらルートの確認をしていると、下山して来たらしい、いかにも地元ハイカーのようなおじさまに声をかけられました。

「ここに来るのは初めて?」

初めてだと答えると、山頂までの道を詳しく説明してくれます。ここで道がふたつに分かれるけど、右に行くほうが眺めがよくておすすめだ。途中にちょっとした岩場があるけど難しくはない、山頂までは1時間ぐらいかな。…そう説明すると、自作とおぼしき手描きの地図をくれました。私たちの持っていた地図にはそこまで詳しく出ていなかったから助かりました。おじさまの言うとおり、眺めがよく気持ちのよい道、そして岩場はちょっぴりファンキーで楽しい。行き交う人はほとんどなく、静かな山道を楽しみます。

そして山頂に到着すると…、たいして広くない山頂は十数人の人たちで賑わっていました。みんな思い思いにくつろいだり、登山者どうしで話をしたり。

「ここに来るのは初めて?」

また聞かれました。初めてだと答えると、今日はどこから登ってきたかを聞かれます。そうか、そのルートはいいよね。でもね、時間があるならこっちのルートもおすすめだよ。あの辺りの斜面は桜だから、春先はピンク色になって本当に綺麗なんだ。…そう言いながら地図をくれました。さっきもらったのとはまた違う、見どころや登山道のポイントがびっしり書かれた、おそらくこの方の手描きであろう地図。

さらに別のお兄さんが話しかけてくる。スカイツリーは見たかい?見晴し台から見えるんだよ。そうか、通らないルートから登ってきたんだね。じゃあ帰りに立ち寄っていきな。今日はよく晴れてるから見えると思うよ。

カメラマンは別のおじさまに捕まって話を聞いています。あそこにツツジの木があるんだけどさ、あれは俺が植えたんだ。春になったら来たらいいよ、すごく綺麗だからさ。

どうやら、私たち以外はみんな地元のハイカー。毎週のように、いや、人によってはお散歩のように週に何度も足を運んでいるのでしょう。みんなこの山が大好き。俺たちの山はこんなにいいところなんだよ。こんなにみんなから愛されて、幸せだよねえ、この山は。

そういえば、、山はぼちぼちツツジの季節。おじさんが植えたツツジは花を咲かせているのかな。

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